第6話「中等部」
第6話になります。
お次は中等部の生徒が登場します。
「…中等部の教室は、こっちです……」
零に促され、夕貴は立ち上がった。
「!先生、もう行っちゃうのー?」
「!うん、ごめんね。学院を案内してもらうんだ。また後でお話しよう。」
名残惜しそうに言う葵に、夕貴は優しく告げた。
「!うん!約束だよ!!」
「?案内ってことは…他のお兄さんやお姉さんにも会うの?」
ふと、そばに居た美紅が問いかける。
「!うん、そうだよ。挨拶しに行かないとね。」
「へぇー…気をつけてね、先生。ドラキュラとか、ゆきおんながいるから。」
「え……」
突然美紅が言った不穏な言葉に、夕貴は一瞬固まってしまう。
「…あー…先生、大丈夫です。ちゃんと説明しますから……」
そんな様子を見て、亜希が夕貴にそっと言った。
「!う、うん…」
「じゃあ、行きましょうか……」
「バイバイ、先生ー!」
そして葵たちと別れ、一同は中等部の教室へと向かった。
「…ここです、中等部の教室は……」
少し行ったところで零が足を止め、そう言った。
「!ここかぁ……」
「多分他のふたりも…うん、います。先生、どうぞ…」
零が教室のドアを開け、夕貴はそっと中に入る。
「お邪魔しまーす…」
「……?あれ、もしかして、新しい先生かな?」
すると、早速誰かが話しかけてきた。
「!初めまして、今日からここの教師になった、白井 夕貴です。」
「!おおー、そうだったんだぁ。初めまして、あたしは園田 千紘って言います。」
千紘というその少女は、焦げ茶の髪をポニーテールにし、大きな丸メガネをかけていた。
そして、手には何か部品のようなものを持っている。
「…!ああ、これ?これは今やってる発明の部品なんです!掃除の時に、ルンバみたいなのがあったらいいなーって思って!」
「!え、あ、ああ、そうなんだ…」
夕貴の視線に気づいたのか、千紘は笑顔でそう言った。
発明?部品?言ってる意味がよく分からなかったが、夕貴はとりあえず返事をした。
どうやら中等部・高等部は癖が強いというのは本当らしい。
「成功したら、先生にも見せてあげる!」
「!あ、ありがとう、楽しみだな。」
夕貴がそう言って笑った直後のことだった。
「あ、亜希せんぱぁぁぁい!!!」
真後ろからそんな声が聞こえてきた。
「え」
「あ、亜希先輩!私に会いに来てくださったんですか!?と、ということは今日こそ血を!!?」
何が起きてるのかさっぱり分からず、夕貴は恐る恐る振り向く。
見ると、桃色の瞳に漆黒の髪色の美少年が、亜希に抱きついて早口で何かをまくし立てている所だった。
「ち、違うから、そうじゃないから!今日は新しい先生が来たの、だから挨拶して!」
「!新しい先生…?」
亜希はやや食い気味に説明すると、夕貴の方を指さした。
「!!貴方が、新しい先生ですか…?」
「!う、うん!白井 夕貴っていいます。よろしく…」
突然のことに呆気にとられながら、夕貴は挨拶した。
「!夕貴先生ですか…初めまして。私は中等部の古賀 蓮悠と申します。以後、お見知り置きを。」
蓮悠という少年は丁寧な口調で自己紹介をし、ペコリと会釈した。
「!蓮悠くん、それに千紘ちゃん、これからよろしくね。」
夕貴は戸惑いつつも2人と握手をする。
「…ほら、変わってるでしょう?」
零は小さくため息をつきながら夕貴に話しかけた。
「え、あ…まあ、色んな子がいて、面白いなって思うよ。」
夕貴は小さく笑いながら、零にそう言った。
「…まあでも…高等部の先輩たちよりは、まだちょっと普通かな…?」
「え」
はっきり言って大分変わっている中等部よりも、高等部は更にカオスだと言うのだろうか。
「…あはは…じゃあ、その高等部を案内します。」
夕貴は何だか嫌な予感を感じながらも、そう言う亜希のあとを着いて行った。




