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第1話 黒ノ森学院

本編の第1話です。

黒ノ森学院について、ほんの少し掘り下げた内容となります。

女性の出迎えの挨拶を聞き、夕貴はハッとして言った。


「き、今日からこちらに配属されました、白井 夕貴と申します。よ、よろしくお願いいたします!」


ぺこりと頭を下げた夕貴に、女性はそっと返した。


「…黒ノ森学院理事長・黒瀬(くろせ) 百合子(ゆりこ)です。以後、お見知り置きを。」


百合子と名乗った女性は、くるりと踵を返して、夕貴に言葉を投げかけた。


「…到着して早々ですが、配属手続きを行いますので、私についてきて下さいませ。」

「!は、はい…!」


夕貴は早い展開に戸惑いながらも、百合子の後に続いて、学院の敷地へと足を踏み入れた。


「…わあ……すごい……」


学院の庭には、色とりどりの花が咲き誇っていた。

黒ノ森の中で、ここが唯一色彩のある場所と言っても過言では無いだろう。


「…ああ、この庭ですか。ここの花は、教師と生徒たちが共に世話をしているのです。」

「!へえ…すごく綺麗ですね……」


夕貴は物珍しそうにキョロキョロと辺りを見渡す。


「…こちらが正面入口ですよ。」


少し歩くと、正面に大きな扉が現れた。


百合子がそう言い、その扉を開く。

ギイィ、という軋んだ音と共に扉が開き、中の様子が夕貴の目に飛び込んできた。


「!おお……」


そこには、まるで西洋の館ような洒落た空間が広がっていた。


天井にはシャンデリアが吊るされており、壁には様々な絵画も飾ってある。


正面には大きな階段があり、上の階へと繋がっていた。


「…理事長室は最上階になります。こちらへ。」

「!は、はい!」


百合子に促され、夕貴は共に階段を上がる。


「……」


夕貴は、階段を登りつつぼんやりと考えていた。


ーこの学校が、本当に……


「…貴方もご存知かと思われますが」


すると、そんな夕貴の心中を察してか否か、百合子が口を開いた。


「!?」

「…この学院の生徒たちは、普通の生徒たちではありません。」


百合子は重々しい口調で、夕貴に告げる。


「…え…あ……はい……」

「…罪を犯し、何処にも、誰の手にも負えず、言わば社会に見放された子供たちがここにはいるのです。」


百合子は2階に到着すると、そのまま3階へと続く階段を上がり始めた。


「!あ、あの…罪を犯したって……」

「…言葉通りの意味です。生徒それぞれ事情は違いますが、皆が皆、何かしらの罪を犯してここにいる。」


夕貴の問いかけに、百合子は淡々と返す。


「っ……」

「……そして、生徒たちがこの学院を卒業するには、「18歳になって卒業の時期を迎えるまでに、一般社会でまともに生きていけるように更生する」という要件を満たさなければなりません。」


3階に到着し、2人は話しながら廊下の突き当たりの理事長室を目指す。


「18歳で卒業の時期を迎えるまでに、ですか…」

「はい。そうですよ。」


百合子はこくりと頷きながらそう返す。


「…あの……ちなみに、要件が満たせなかった場合って……」

「…我が校には、留年制度はありません。ですから、要件が満たせなかった場合には…」


夕貴の質問に、百合子が答えようとしたその時だった。


「理事長、遅れてすみません!!」


背後から、焦ったような声が響いてきた。


「!?」

「…構いませんよ。これから手続きですから。」


百合子は声の主に向かって、これまた淡々と告げた。


「!そうですか…よかった、間に合ったねぇ。」

「ごめんなさい、僕が裏庭の水やり当番忘れちゃったから…」

「大丈夫だよ、間に合ったんだし!」

「………」


夕貴がわいわいと話す声のする方を見る。


ーそこには、4人の男女が立っていた。


上は高校生くらい、下は幼稚園生くらいの年齢の子供たちだ。


「え…」

「!紹介が遅れましたね。彼女たちは、我が校の生徒たちです。今回は貴方の校内の案内係として、各学年から1人ずつ、代表として来て頂きました。」


百合子の言葉に、子供たちが反応する。


「!このお兄さんが、新しい先生!?」

「!そうみたいだね…こんにちは、初めまして。」

「!新しい先生、かぁ……」

「……(ペコリ」



ー夕貴は情報量の多さに頭を抱えつつも、生徒たちに向き直って挨拶した。


「…初めまして。今日からこの学校に配属された、白井 夕貴です。よろしくお願いします。」

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