第2-1話 女神たちの邂逅
これはまだプロポーズされてから、実際に結婚するまでのお話。
家同士で既に婚約が決まった後とはいえ、改めてセオドア本人からプロポーズされたのは本当に嬉しかった。
トリーシャはプロポーズの日の事を思い出しては、密かに頬が緩むのを感じていた。
だが実際に結婚できるのは少し先になる。
一緒の家に住んでいるとは言え、セオドアは忙しい様で中々ゆっくり一緒に過ごすことが出来ない。
それにまだ一緒に夜を過ごしてないし……。
いや、それは追々で良いんだけど。
レオと3人で手を繋いでデートに行くのはとても楽しいし、レオが見ていない隙に頬にキスをされる事も最近では偶にあった。
真面目そうに見せかけて積極的なのよね。
前世を含めて恋愛経験が乏しいトリーシャはそれだけでも顔が熱くなって慌てふためいてしまう。
それを見てセオドアは優しく微笑むのだが、良い加減そろそろ慣れておきたい。
セオドアも聞けば別に女性慣れしている訳では無いらしい。
セオドアに女性との噂がなかったわけでは無いが、本人に聞いてみたところ完全否定された。
別に過去のことをとやかくは言いたく無いけれど、それには少し安心した。
セオドアは公爵家の次男だし、顔もあの通り凛々しく整っているから女性と少し話をするだけで噂になるのだろう。
トリーシャときたら、この顔のせいで女の子が泣いていると何故かトリーシャのせいにされたりしていたのに。
人はつくづく見た目で判断する生き物である。
鏡に映る顔は確かに目元が少しキツイものの、前世の自分からすれば拝みたくなるくらいの美人だ。
菫色の瞳も神秘的でいつまでも鏡で見つめていたくなる様な輝きがある。
それを縁取るまつ毛もパーマもつけまつ毛も不要で、けぶる様にフサフサで寝起きでもしっかりとカールしている。
髪も黒々として、日本人だった頃よりも更に真っ黒だけど、キューティクルが燦然とした輝きを与えていて、不思議とゴージャスな印象を与える。
こんな美人を放っておくなんて、この国の男たちは馬鹿ばっかりよね。
だからこそ見る目のある男、セオドアと出会うまでつまらない男に引っ掛からなかったのだから良しとしよう。
さて、今日はレオと二人で服を買いに行く予定だ。
セオドアは幼少期からの友人と遊びに行くと言っていた。
帰りは遅くなる様なので、食事も外で済ませようかしら。
セオドアが買い物に付いてくると「ここからここまで全部で」と言い出すから大変なのよ。
どっちが似合う?なんて言い合いたいのに、「どれを着ても貴女はこの世で一番美しい」とか真顔で言い出すから……。
その時のことを思い出しかけて、恥ずかしくなってトリーシャは頭をブンブンと振った。
「どうしたの?お母さん」
レオが不思議そうに小首を傾げて見上げてきた。
まん丸の瞳はトリーシャと同じ菫色。
はぁ……女の子みたいに可愛いお顔!
でも、可愛いって言うと最近怒るのよね。
怒った顔も可愛いんだけどね!
トリーシャはレオをムギュッと抱きしめる。
「ううん……なんでも無い。さて、お出かけしましょうか」
ふふ……レオを素敵に着飾らせてあげる。
レオこそ何を着ても似合うんだから。
「……お母さん。やっぱりお目目は隠すの?」
ベールのついた帽子を被ったトリーシャを、少し悲しげにレオが見つめる。
「こういう帽子が好きなの。似合わない?」
「ううん……似合うよ!お姫様みたい!」
「ありがと。じゃあ、王子様はレオね」
「うん!」
トリーシャは今でも外に出る時には目元はベールで隠している。
いちいちギョッとした顔をされるのは疲れてしまうし、目つきが悪いからちょっとムッとした顔をしただけで相手が慌てちゃうのよね。
別にそこまで腹を立ててる訳じゃないんだけど。
同じ見た目をしているレオのために、堂々としたい気持ちはあるけど、セオドアがいないタイミングでは、トラブル防止を優先すべきだろう。
レオにも帽子を被せる。
色をお揃いにした親子コーデだ。
大きな姿見で二人並んだ姿を見ると、本当の母子にしか見えない。
微笑ましさに口元が自然と綻ぶ。
馬車で街中まで行きショップを回る。
商人を屋敷に呼びつけても良いんだけど、日本人の庶民的な感覚だと萎縮して楽しめないのよね。
買ったものは店に預けて後で届けてもらう。
護衛兼使用人が一応ついて来てくれているが、少し話をした程度でも親しげにすると、セオドアが可愛くヤキモチを妬いてくるので、淡々と仕事をして貰っている。
見た目通りの冷たい女と思われない為に、連れ出したらチップを渡してるけど、対応としてこれで正解かよくわからないのよね。
レオの教育も必要だけど、その前に誰か私を教育して欲しいわ。
手を繋いだレオはスキップしながら今日もご機嫌な様子だ。
夜になると偶に両親を思い出して泣いてしまう事もあるが、日中は大体このとおり。
そんなご機嫌な坊やが足を止めて、嬉しそうに声を上げた。
「あ、お父さん!」
「ん?あら本当。セオドア……」
トリーシャは固まった。
セオドアの隣には小柄な若い女性。
柔らかく波打つハニーブロンド。
セオドアもこちらに気がついて片手を上げた。
隣の女性がこちらに顔を向ける。
愛らしい顔立ち。
金色の大きな美しい瞳。
トリーシャの顔が僅かに苦々しげに引き攣るのは、嫌な連想をしたからだ。
黒髪で紫の瞳で描かれる悪い女神と対立する善良な女神は、金髪に金色の瞳と表現されていた。
キツイ目つきを更に鋭くするトリーシャに、愛らしい見た目のその女はフワリと花が綻ぶ様に微笑みかけた。
細々と続きを書いて、レオくんをセオドア超えの良い男にしたいです。
完結解除して連載中にするのは読者様減るんじゃ無いかと心配でしたが、ブクマしたり、いいねを最新話にさっそく付けてくれてる人がいて凄く嬉しいです( ;∀;)
ちまちま書いていくので今後ともどうぞよろしくお願いします。
誤字報告いただきました!
注意力散漫なので、読み返しても基本的に気が付かないので助かります!
また誤字報告いただきました!
毎日複数回貰ってます!ありがとうございます!
私が不注意過ぎるもありますが、皆様が優しすぎる。
ヾ(๑╹◡╹)ノ"♡優しくされるとそろそろ惚れるぞい。
誤字報告またいただきました!
ありがとうございますヽ(・∀・)
本当に私は漢字がダメで困る!iPhoneの漢字変換の方でちゃんとして欲しい(T-T)なぜiPhoneさんは私と同じでダメダメなの
10月も終わる頃……まだ存在した誤字!
教えていただきありがとうございます!