第6話 両親を救う
「ねえ、お母さん。僕動物飼ってみたいです!」
レオがトリーシャにおねだりする。
「レオ……お前はまだ生き物の世話なんて出来ないだろう。お母さんを困らせるな」
「動物……。そうか!その手があったわ!猫を飼えば良いのよ!」
「――!?そうですね。トリーシャさんの言うとおりです。今すぐ猫を飼いましょう」
そうだった。確か流行病の原因はネズミが病気を媒介したこと。
それならばこの国が猫だらけになれば、ネズミが減ってパンデミックは起きなくなるはず!
「いいえ!猫を国中に増やすのよ!それでネズミの数が減れば、私の両親も死ななくて済むわ!」
「――!?貴女の両親がネズミに殺されるんですか!?……そんな。にわかには信じ難いですが、いえ、貴女の言うことを全面的に信じます。
この国を人間よりも猫の数が多い猫の国にしてみせます!!」
「僕猫飼っても良いの?やったー!」
問題はどうやって流行らせるかよね。
早急に考えないと……。
トリーシャがああでも無い、こうでも無いと考えている間に、セオドアはあちこちの貴族に子猫を配り歩いた。
セオドアに負けないくらい顔の良い友人達を利用して、未婚の貴族令嬢達に配り歩かせた。
その結果……貴族間で猫を飼うのが一大ブームになり、それを知った平民の間にも徐々に猫を飼うのがステータスとなっていった。
特に、気になる異性や上司の家から子猫を貰うことで親密になる手法が流行りに流行った。
数年後には本当にどこを見ても猫だらけになるのは予測に難しく無かった。
「……セオドア様って本当に仕事早いわね」
トリーシャが何をするでもなく問題が解決していく。
敵に回したら恐ろしそう。
そして、そうこうしている間にセオドアが北に行く日が来てしまった。
念のために馬車は念入りに確認したし、何度も心配していたら、護衛をつける約束をしてくれたからこれで安心……だと思いたい。
「生きて帰ってくるんですよ!!」
「戦地に行くわけではありませんよ。……しかし、心配いただいて嬉しいです。
必ず貴女の元へ帰ってきますから」
ぎゅっと抱きしめられる。
びっくりしたが、祈りを込めて抱きしめ返した。
トリーシャはこの素直で優しいところのある男が好きになり始めていた。
「いってきます」
セオドアがトリーシャの顔を両手で挟んで、優しく唇を重ねて、すぐに離した。
「続きは帰ってからですね」
颯爽と馬車に乗り込んで行ってしまった。
トリーシャは、はくはくと口を開いたり閉じたりするばかりで反応できない。
「……もう!勝手に!……もう!」
自室に戻ってベッドで足をバタバタさせる。
あーもう!なんなの!?
あーもう!
顔がニヤついてるのが自覚できて、クッションから顔を上げられない。