4-7 両親
「ただいまー!」
空が茜色になる頃にレオが帰ってきた。
「レオ、久しぶりね」
「大きくなったな。分かるか?お前の爺さんだ」
両親は喜んでレオの元へと笑顔で向かった。
「あれ?あの……」
レオは笑顔のキャンベル夫妻を不思議そうな顔で見る。
レオが祖父母と顔を合わせたのは、もう一年以上ぶりだ。それ以前も疎遠だったし覚えていなくても無理はない。
「あなたのおじい様とおばあ様よ。あまり顔を合わせる機会も無かったものね」
「こんにちは、おじいさま、おばあさま」
レオはニコリと微笑んだ。
「久しぶりだな。立派になったな」
「………………そうね」
父は満足そうに頷いたが、母は別の感想を抱いたようだ。レオの顔をマジマジと不躾なくらいに眺める。
「…………ほら、外から帰ってきたら手を洗ってきなさい」
何となく不穏なものを感じたトリーシャはレオを急かした。
「うん、あれミケ達は?いつも帰ってくると飛んできておかえりって言ってくれるのに」
レオがキョロキョロと周囲を見る。
猫達はトリーシャの両親を警戒してなのか、今日は近づいて来ない。
「何言ってるの?猫は喋らないでしょう?」
母が呆れたような顔をし、叱責するような口調でレオに問う。
「うん。だけどね……」
「貴方ももうこんなに大きいのだから、いつまでも小さい子供のような事を言っていてはいけません。貴方のお母様はそれはそれは立派だったのですよ」
言い募る孫の言葉を遮って、母はお小言を言った。
しかし、レオは彼の祖母の言葉の後半にだけ反応して目を輝かせた。
「うん!お母さんは優しいし、凄く立派だよ!」
「ええ……そうでしょうとも。あの子は本当に……本当に優しくて…………」
母は涙ぐんできてしまった。
それにしても……二人は実のところ会話が通じていない。
レオの言うお母さんはトリーシャのことだが、トリーシャの母の言うお母さんとは、死んだ姉サーシャのことだ。
「おばあさま?」
「はっはっは、お前の婆様は涙脆いんだ。歳をとるとみんなそうなる」
「ちょっと……!私はまだそんな歳ではないですよ」
「はは……そうだな」
「ほら、レオ手を洗うんでしょ。急いで」
トリーシャは再度レオを促した。
「うん」
レオは駆け足気味に部屋を出て行った。
「あら、家の中で走ってみっともない」
「…………私が急かしたからです」
トリーシャは完全に思い出していた。
この母、昔から何でもかんでも目に付いたことに一言言わずにはいられないのだ。
ただし、サーシャには言わなかった。
そして夫であるトリーシャの父にも……女が夫にモノを言うのははしたないから。
「母さんの言うとおり、ちょっと落ち着きがないな」
そして、父はこの通りの母のイエスマンなのだ。
本日の投稿だいぶ遅くなりすみません!
午前中に予定が入って疲れてなかなか執筆進まず……明日も午前中は屋外活動が長めに予定が入ってるので、やはり投稿遅くなりそうです。
でも、何とか毎日投稿は頑張ろうと思うので、応援よろしくお願いします。




