4-5 手紙
「う゛…………」
気持ち悪くて中々食べるのもままならない。
「お母さん大丈夫……?」
「うん……今は仕方がないからオレンジを食べておくわ」
食事の時間はなるべく家族と過ごしたいので、匂いで気持ち悪くなっても一緒のテーブルにはつくようにしている。が、
「お母さん、無理しちゃダメなんだからね!具合悪いならお部屋でゆっくりしてて」
「……はーい」
レオは優しく大人びている。
しっかり怒られたので、オレンジを抱えて部屋に引っ込む。
妊娠中の諸注意や産後のあれこれを医師から聞いてからは、既にお兄ちゃん気分でトリーシャの事までアレコレと世話を焼いてくれるようになってきたのだ。
つわりが軽くなるまでは少し甘えさせて貰おう。
生まれてくる子には、いつかどれだけお兄ちゃんが頼もしかったか教えてあげなくちゃ。
少し具合が良くなったらレオもめいいっぱい甘えて良いからね〜と心の中で約束する。
レオは非常に張り切っているみたい。頭が良いから妊娠がまだ秘密なのも友達にも内緒にしてくれているみたい。
お医者さんにも「順調ですね」と言われているし、このまま元気な子供を産まないと。
ドルシーもつわりに効く薬草を持ってきてくれたり、子育てに関する情報収集をあちこちから掻き集めてくれている。
この世界の出産事情については詳しく無いから助かる……。
安定期に入り、つわりも収まってきた頃に手紙でアイバン公爵夫妻宛にセオドアから手紙を出して貰った。
孫が増えるという事で、堅苦しいお手紙の返事と祝いの品をいくつか、そして支援金をドカンと貰えた。
『身体には気をつけさせなさい』の一言が、多分不器用そうな公爵夫妻なりの優しさなのだろう。
レオとはまだ交流は少ないものの、レオからの手紙に対してやたらと大量の外国製のオモチャや絵本(レオには少し子供向け過ぎる)が贈られてきたり、孫に対する愛情が全く無いわけでは無いらしい。
義父母とはなんとか良い距離感を保っていけそう……トリーシャは安心していたのだが、実両親のキャンベル夫妻からの手紙は思いがけないものだった。
『一度会いに行く』
「まあ、孫の顔もあまり観に来ないけど、むこうに遠慮してるんだろうからね。孫も二人目ともなれば慣れたものかしら」
こちらの世界の出産は命懸けだろうし、トリーシャの実の母が手伝ってくれるのならば、ありがたい話かもしれない。
トリーシャは直ぐに手紙を書いて了承した。
久しく会っていなかったから会いたかったし、それに最近は色々と忘れていたのだ。
自分の実家での扱いの事を……。
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