4-3 家族の喜び
「妊娠……ですか」
お医者さんに告げられて、慎重に聞き返す。
途中で生理は最後いつ頃だったか聞かれたところで、もしやと思ったが……その単語を聞くと信じられない気持ちと嬉しい気持ちがジワジワと迫り上がってくる。
気がついたらお腹に手を当てていた。まだ全然膨らんでないし、言われたからってそうとは分からないけどね!
「そろそろ三ヶ月になる頃ですね……それでは妊娠中の過ごし方の注意を…………」
「はい!!あ、メモ帳!メモしないと!!」
「あ、いえ、後で他のものに紙に書かせて届けさせますので……」
トリーシャは頭の中がホワホワとなりながらも、医師の言葉をしっかりと聞く。
ただ、現代日本よりは色々と情報が古いのか、緩いのか……寝る前にホットの赤ワインを飲みましょうとか、ダメ絶対な事まで言われた。
体を温めろ的なことなんだろうけど……アルコールは加熱で多少飛んでも残るだろうからダメよ!
くっ……!この世界に来る前にちゃんと妊婦さんに関する知識を身につけておけば良かったよぅ。
とはいえ、明らかに駄目そうなもの以外はちゃんと医師の指導に従うことにした。
日本にいても出産とか怖いけど、この世界の出産なんて想像するだけでちょっと怖くなる。
医師が帰った後に、迷ったけれど一番仲の良いメイドのメアリーに相談する。
「まぁ……若奥様、おめでとうございます!でも若旦那様より先に私が聞いても良かったのですか?」
「なるべく早くサポートしてもらいたいからね。セオドア様にも言うけど……」
少しだけ気掛かりなのはレオのことだ。
きっと喜んでくれるだろう。弟でも妹でも……。
だけど、男の子が生まれた場合、周囲はどう思うだろうか。
レオが嫌だと言わない限りはレオに後を継がせたい気持ちに変わりはない。
レオは大事な息子だ。
「セオドア様に先に妊娠を教えてから、レオに対する対応について相談しようかしら……」
夜になり、夕食を終えた。
レオが猫達と遊んでいるのを確認。事前に猫達にレオを頼むと言っておいて良かった。
「あの、セオドア様……大事な話があります」
「何でしょうか? 私にとっては貴女の言葉はどんな一言、一音であっても女神の信託であり、世界の意思そのものですが……」
「あ、はい」
真面目な雰囲気が出ない!なんで大真面目な顔でそんな言葉をノータイムで吐き出せるの!?
砂糖漬けになった気分だけど、もうサッサと言うに限るわね。
「あの、私妊娠しました!セオドア様は……」
父親になる……は違うわね。もうなってるもの。
「二人のパパになります!!」
「……………………!!!!!???」
セオドアは目を大きく見開いて固まった。
「あの……セオドア様?」
カチカチに固まったセオドアの目の前で手をヒラヒラと振る。反応がない。
「た、大変だ……」
セオドアはたっぷりと時間をかけてようやくボソリと小さな声で呟いた。
「た、大変だー!レオーー!!!!」
脳みそがオーバーヒートしてしまったらしく、踵を返すと頼れる息子の方に走っていってしまった。
「ええ……!?」
「うおー!!やったぞーー!!」
「おかあさーん!!やったーー!!」
顔いっぱいに笑顔を咲かせた男子達がバタバタとやってきた。
ミケも一緒に駆け寄ってくる。姉猫たちは落ち着いたものだ。だけど姉猫達の尻尾の動きがご機嫌そうである。
「そうと知ってればお祝いを屋敷いっぱい用意したのに!!ああ、なんてことだ!早く手配しないと!そうだ!哺乳瓶、哺乳瓶は何個あれば良いんだ!?10個くらいか?……あとベビーベッドも必要か!?乳母車!!職人に作らせなくては!!後は何を……何をすれば良いんだ!?」
「お母さんおめでとう!!すごい!やった!僕お兄ちゃんになるんだ!すごい!すごい!!あのね、あのね、友達のユージーンの家で妹がいて赤ちゃんで僕も手を触ったんだけど、凄くちっちゃくてね、それで僕は……」
「にゃ〜」
興奮した男子達が落ち着くまでは、会話は不可能そうだった。
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