第3-24 現代知識無双なるか
「ついに出来たわ……現代知識無双」
「ん? 現代……? すみません、トリーシャさん。何て言いましたか?」
「あ、いえ、何でもないです」
トリーシャは感慨深すぎて心の中で思ったことが口から出てきてしまったらしい。
「トリーシャさんが嬉しそうで私まで嬉しいです」
「えへへ……顔に出てます?」
「はい! 貴女の笑顔はとても愛らしく、まるで春の柔らかな日差しが肉体を得て私の前に顕現したようです。あるいは神により唯一無二の才を与えられた芸術家が人生の最後にたどり着いた美の真髄と言いましょうか……いや、それではとても足りないな。巡る季節の中で最も美しい一輪の花を束ねて…………」
「いえ、もう分かりましたから結構です」
隙を見せたトリーシャが悪かった。
朗々とやたらめったら良い声で歌い始めたセオドアは早い段階で止めるに限る。
止めないでおくと普通に一時間超えるくらい喋り続けるし、ウロウロして周囲に迷惑になってしまう。
トリーシャは恥ずかしさあり、他の感情も入り混じってほてった顔を手で扇いで少しでも冷まそうとした。
そんなトリーシャがセオドアから目を逸らした先には、新しくオープンする喫茶店がある。
大通りに面した一等地。貴族も来れるし、裕福な平民も多く利用できる最適な場所は、始まる前からすでに勝利がほぼ決定しているようなものだ。
アイバン家からの出資で建てられたここは、トリーシャの現代知識無双のためにお金を出して貰って建てたもの。
トリーシャはオーナーになったのだ。
「お母さんよかったね」
「うん……嬉しい」
レオの笑顔に、トリーシャも笑顔がより深まる。
そして、オープン前に家族で来訪した。
カランコロンとドアベルが鳴る。
「「「いらっしゃいませ」」」
「「「「「にゃー」」」」」
店員さんと、たくさんの猫たちがトリーシャ達家族を出迎えた。
そう、ここは猫カフェ『ぽんぽんテイル』。
ここの売り上げは猫達の福祉事業に充てられることになっている。
上手くいったら、猫担当大臣補佐として国中に作りたいという野望もあるのだ。
そして、現代知識無双はそれだけではない。
「お嬢様、こちらにお掛けくださいですにゃ」
そう言って微笑むのは猫耳をつけたメイドさん。
ここは猫カフェであり、尚且つ猫耳メイドカフェでもあるのだ!
そして、猫をモチーフにした料理の数々。
トリーシャの現代知識をなんとか形にした、日本のカフェで食べられるタイプの料理の数々。
「これ、美味しいし見た目が可愛いです」
レオも嬉しそうだ。
レオの前のワンプレートにはオムライスにハンバーグにポテトにナポリタン。オムライスには猫の描かれた旗。
この世界には存在しないお子様ランチを作らせてしまったのだ。
これは……いけるわね!!
トリーシャは事業の成功を確信した。
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