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第3-22 戦え!トリーシャ!

 男に押し倒されているのは、胸元が肌けた若い女性だ。年齢はトリーシャとそんなに変わらないくらいだろう。


 振り向いてトリーシャの方を見た男は髭がボサボサだし、前歯が無かったりでなかなかに人相が悪かった。

 トリーシャは思わずたじろぐ。


 その隙をついて女性は服を押さえながら男の脇をすり抜けて逃げ出し、トリーシャの後ろに回り込んだ。


「助けて……」


「う、うん……」


 とはいうものの戦う術など無い。

 ジリジリと男が近づいてくる。


「助けてー!」


「あ……」


 襲われていた女性はトリーシャを置いて逃げてしまった。


「そうよね……逃げるしか無いわよね」


 トリーシャも踵を返した。

 しかし、逃げた女性とトリーシャには違いがあった。

 彼女(逃げた人)は踵のない歩きやすそうな――逃げやすそうな――靴だったのに対し、トリーシャはヒールを履いていた。


「おい!この際お前でいい!こっち来い!」

 

 男のダミ声が迫る。


「嫌ぁ!!」

 

 僅か数メートルの距離はすぐに狭まり、男の手が二の腕を掴んだ。


「離して!」


 トリーシャは腕を掴まれ、引き寄せられて男の方にグルンと体が回った。

 胸元の小さな鏡のついたネックレスがキラリと強く白い光を一瞬放った。


「なんだぁ!?」


 男は怯んで目を瞑った。

 

 鏡が太陽光を反射してくれた!?よし!今のうちに……

 男が怯んだ隙に逃げる……前にトリーシャは鞄を大きく振りかぶった。

 目を開けた男の横っ面に重たい置物の入った鞄がクリティカルヒットした。


「ぐべら……!!」


 ビックリするほどの威力が出て、男は数メートル吹っ飛んだ。

 そして、地面をずしゃああああ!と滑っていき、ピクピクと痙攣する。


「……気絶したのかしら?」


 確かめるのはちょっと怖いので近寄らない。

 あ、野良犬が男に近づいていった。


「危ないわよ?」


 犬は警告するトリーシャを面倒そうに見ながら、男におしっこをかけ始めた。


「うわぁ……」


 一瞬憐れみそうになったけど、強姦魔だしなぁ……とその様子をなんとも言えない顔で眺めていると、なんと逃げちゃったはずの女性が警備隊を連れて戻ってきてくれた。


「良かった……助かった」


 今更ながらトリーシャは緊張が抜けて、へたり込みそうになる。

 怖かった。早く家に帰りたい……。


 そう思っていたが、警備隊に色々話をすることになった。

 強姦魔をぶん殴った経緯を説明するのだが、お忍びでのことで地味で安物のドレスを着ているので、公爵家の嫁だという主張をした時から怪しまれ始めた。


「いやぁ……だってそんなお貴族様が一人でウロウロしないでしょ。それにそんな変な置物で殴るって……」


 ぷぷぷ……と笑いそうになる警備隊員にトリーシャも怒りがふつふつと湧いてくる。

 何故か犯罪者をやっつけたのに犯罪者みたく扱われてトリーシャも良い加減ウンザリしてきた。


「本当なんです!」


「そのネックレスだって安物でしょ?元は銀か何かだったのかも知れないけど、そんなに錆びついて……」


「え……?」


 言われて胸元に下がるペンダントトップを摘んで見ると、朝にはつるりとトリーシャの顔を反射していたのに、すっかりくすんで黒ずんでしまっている。


「なんで……?」


 呆然と呟いた時、ドアの向こうが騒がしくなっているのに気がついた。


「トリーシャさん!」


「セオドア様!」


 これで公爵家の人間だと証明してもらえる――トリーシャは笑顔で夫を迎えた。

 だが……


「逃げましょう!」


「――はい?」


 セオドアはトリーシャの手を掴んで立たせると本当に逃げようとする。

 よく見るとドアの外で見張りの警備隊員達が床に伸びていた。


「ま、待て!」


 トリーシャの取り調べをしていた警備隊員が、目を白黒させながらも怪しい侵入者に剣を向けようとして――セオドアの蹴りが炸裂して壁にぶつかって床で眠り始めた。


 ………………ごめん。


 トリーシャは心の中で謝りつつ、愛する夫と手と手を取り合って逃げ出した。


 

 

 

 

 

 

 

良かった!主人公を活躍させられた!ヒーローも助けに来てくれた。゜(゜´ω`゜)゜。

活躍シーン少ないなと思って頑張らせました。


いつも読んでいただきありがとうございます!

十万文字くらいは書きたいなと思っているので、まだまだお話は続きます。


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