第3-21 増えるスピリチュアルパワー
その後もトリーシャはフレア婆さんと会い続けた。
もちろん毎度たらふく奢らされる。
「お前さんのその目、目立って仕方ないだろう……」
「ええ……黒髪と合わせると不気味がられて……」
「不気味がるだって? 知恵も教養もない奴らばかりさね。世界を動かす力を持つものの象徴だよ。まさかこの地でも見るとは思わなんだけども」
「子供……あの、血筋的には甥っ子なんですけど、その子も同じ目の色で……」
「血が繋がってるなら、そういう事もあるだろう。もちろん特別な存在の証だよ」
「なら、その、子供の分の不幸を防ぐものも欲しくて……」
「はぁ……仕方がないねぇ。ま、いつも奢ってもらってるし安くしておくよ。そうそう、玄関に飾っておくと良い置物もあるんだ」
そんな感じで、レオの分も購入し、追加のグッズも買っている。
公爵家の財力からすれば端金とすら言えない額なのでトリーシャは数日おきに老婆から幸運グッズをお買い上げしまくりだ。
不幸を防ぐブレスレットのお陰か、はたまた首から下げる小さな鏡のついたネックレスのお陰か、それともライオンの置物のお陰なのか……
目の前の人が雨上がりの水たまりを通った馬車の水で大変なことになったのに、トリーシャは無事だった。
「やっぱり少しだけどラッキーな事が多い気がするのよね……」
特にネックレスはちゃんと毎日しておけと言われたから、常につけている。
他のもデザインが幸いシンプルなので、毎日つけていても、どんな服でもそこまで違和感がないのはありがたい。
「うーん……それにしてもライオンの置物が重すぎる。フレアさんはよくこんな重量あるもの持ってきたわね……」
もしや家の要らないものを処分してるんじゃ……?そんな考えが頭を何度もよぎる度に、トリーシャはブンブンと首を振る。
馬車を待たせているところまでえっちらおっちら優雅さをギリギリ保ちながら歩いていた。
そんな時
「きゃー!やめて!誰か助けて!!」
少女の悲鳴に、トリーシャは咄嗟に声のした方向へと視線を向けた。
他の道ゆく人も同じ方向を見て……すぐに進行方向へ視線を戻して、悲鳴の前と変わらぬ足取りで通り過ぎていく。
「え!誰も助けないの!?」
どうしようか迷ってるいると、今度は先ほどよりせっぱ詰まった悲鳴が聞こえた。
だが、やはり周りの人たちは興味がない様子。
「す、少しだけなら……」
老婆と会う日はいつも一人での秘密の行動だ。高位貴族の自覚が全く足りていないのに目を瞑りつつ、そっと必要もないのに息を潜めて、緊張に唾を飲み込んで裏路地を覗き込んだ。
トリーシャはそこで、女性が男に押し倒されているのを発見した。
「ちょっと!何してるの!」
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