第3-2 初出勤
「本日からこちらで勤めさせていただきます、トリーシャ•アイバンと申します」
トリーシャも学園の講師兼事務スタッフになり、先ずは学園長に挨拶に来た。
「ご機嫌よう、アイバン先生。
仕事はそんなに多く無いから安心なさって」
ミネルヴァ学園長は素っ気なく言った。
うう……急遽公爵家の権威をカサに着てやって来た人なんて迷惑よね。
一応やる気はあるから、これから仕事で自分の有用性を示すしか無い。
こう見えてトリーシャは事務仕事がそこまで苦手では無い。
……と言うより、この世界の人が少し苦手なのかも。
簡単な四則演算も少し苦労しているのを見ると、日本での義務教育の意義がわかると言うもの。
ミネルヴァ学園長は伯爵夫人だったか。
自分よりも上の家柄の女なんて使い辛いのは理解出来る。
別に意地悪されている訳では無いからトリーシャもツンケンするつもりは無い。
とにかく胸を張って仕事をする。
「じゃあ、後のことはジンジャーに聞いてちょうだい」
学園長の横に控えていた女性がニコリと笑った。
「ジンジャー•イングラムよ。どうぞよろしく。
仕事場に案内するわ。着いて来て」
廊下を歩きながら、少し話をする。
ジンジャーは落ち着いた赤毛の女性で、トリーシャより少しだけ年上らしい。
学園長よりも友好的な態度で少しホッとする。
「学園長も言ってたけど、そんなに沢山の仕事は振らないから安心して。
……学園長も悪い人じゃ無いの。ただアイバン公爵家って聞いて警戒してるのね。
あれで気が小さいのよ」
ジンジャーはクスリと笑った。
同僚は友好的な人みたいでトリーシャは安心した。
「そうね……それと」
ジンジャーは言い淀んだ。
彼女の視線の動きから何を言いたいのかトリーシャは予測できた。
目を隠した方が良いと親切心からアドバイスをしてくる人は今でも定期的に現れる。
「目のことかしら」
「ええ……ごめんなさいね。貴女とても目立つ容姿をしてるから。
それ自体は良いんだけど」
「息子も同じ髪と目の色なの。有名でしょう?
息子は隠して生活できないんだもの。
私が堂々としていないと。でしょ?」
ジンジャーは少し目を見開いた後、ニコリと微笑んだ。
「そうね」
この同僚とは上手くやって行けそうな気がする。
「ところで、聞きたい事がもう一つ」
「何かしら?」
ジンジャーはチラリと後ろを見た。
釣られてトリーシャも振り向く。げっ!
四天王の年長組の姉猫三銃士が何故か付いて来ていた。
いつから?
完全に気配が無く気が付かなかった。
まさか学園長との挨拶の時には後ろにいたりしなかったわよね?
その時の様子をトリーシャは懸命に詳細に思い出そうとする。
学園長は一応変な反応は無かったけど……。
「可愛いわね。なんて名前なの?」
「タマ、シロ、クロ」
「そうなの。名前も素敵。おいでー、タマー、シロー、クロー」
「「「にゃーん」」」
初日から猫同伴なんて周りにどう思われるやら。
トリーシャは頭を抱えた。
ジンジャーはタマを抱えてご満悦だ。
シロとクロがトリーシャを心配する様に足元に寄り添ってくれる。
ありがとう。でも、私の悩みはあなたたちよ。
(ゞ……ゞ……ゞ)
(ゞ……ゞゞゞ……ゞゞゞ)
(ゞゞ\ \ゞゞ…… ₍˄·͈༝·͈˄₎《タスケテ
(ゞ \ \……ゞ/ /ゞゞ)
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《人間が見てない隙に
巨大化するから待ってろ
₍ᐞ•༝•ᐞ₎ ₍ᐞ•༝•ᐞ₎《今のうちだ!タマ!がんばれ




