恋の量子異常発生中
晴天の空、飛行場に飛行機が降り立つ。
黒の革靴にオフィスカジュアルな装いの男、黒川健は忙しそうにスマホを耳に当てスーツケースを引いていた。
イケメンの健を空港中の女子が振り返って見る。
「良いかなー沖縄来てるけど、仕事だから。」
残念そうに控えめに笑って健がいう。
電話の相手は親友の武田だ。
「お土産もってきてよ。もずく天ぷらでもいいから。」
健は渋々承諾し電話を切った。
健は露出の多い外人女性たちを見て思った。
沖縄で良い出会いあるかな、女性と縁のある人生だが惹かれる女性に出会ったことがない。
全国デパートチェーングループの会長の息子であるが故に寄ってくる女性は必然的に腹黒い人が多かった。本当は趣味の合う綺麗な女性とイチャイチャしたいんだ。
空港にある時計を見てハッと我に帰り足早に去っていく健。
デパートに着いた健を店長が迎える。
店長は女性で毛先を巻いたロングヘアーの熟女だ。
「めんそーれ!社長この度はご足労ありがとうございますー。」
183センチの健をマツエクで伸ばしたまつ毛をパチクリさせながら上目遣いで見上げる熟女店長。
「佐々木店長、沖縄の売り上げ好調で店長の手腕ですね。」
慣れない暑さで額の汗を拭いながら健がクールに返す。
健の秘書と店長に案内されデパートへ入った一同は一通り店内を見たあと、応接間に移動する。
時刻が1時間進めたころ健が言う
「タバコ吸いに行きますが喫煙所は何階ですか?」
「各階のフードコート近くにあるのですが、案内します。」
店長がそう言うと、秘書が止める。
「社長のおタバコは一人で行くと決まっているんです」
困った顔をした秘書の鈴木が店長を断固として止める。
一人にになった健はやっと解放されたかのように、喫煙所へ急ぐ。
一人でタバコ吸うのは気が楽というのもあるが、客や従業員の調査も含まれているのだ。
喫煙所に入った健は女性が一人タバコを吸っているのに気づく。
黒のミディアムヘアでショートパンツを履いたラフな格好だ。
Tシャツはゾンビゲームの『アイオアハザード』のゾンビの絵がプリントされている。
ゲーム好きの健は思わず話しかけてしまう。
「それってアイオアハザードのTシャツですよね」
ミディアムヘアのもえが驚いて見上げる。
「そうです、アイオアハザードやるんですかー?」
二人はタバコを吸ってる間ゲームの話で盛り上がる。
「それじゃそろそろ戻らないといけないので行きますね。」
もえが喫煙所を立ち去る。
健ははぁーとため息をつき、良い子だったなと思った。
完全にもえは健のタイプだった。
応接間に戻った健は再び店長と秘書を連れ、店内を見て回ることに。
いくつかお店を回ったところで「トロピカルスカイ」と書かれたテナントがあった。
「ここは今月オープンしたばかりで売り上げの出だしもいいみたいですね。」
店長が健に自信満々に言う。
そこにさっき喫煙所で会ったもえと出会う。
店長がもえに話しかける
「比嘉さん、おすすめの商品ありますかー?社長、こちらオーナーの比嘉さんです」
健が驚いた表情で自己紹介する。
「どうも、先ほど喫煙所で会いましたね。ジョンソングループ社長の黒川です。」
健は残念だった。会社の名前を出すと大体の女性は怖がり、そして自分自身の権力にすり寄ってくる女性たちが多いからだ。そのたび女性というものに失望してしまうのだった。
「あ、そうなんですね、なんか意外ですね、グループ会社の社長さんでもゾンビゲームやるんだ」
もえは大笑いしながら言い、健は困った表情を浮かべながらも、可愛いと思った。媚びてこない感じが意外でさらにもえのことが好きになった。
「ゾンビゲーム?」
店長が不思議そうに健を見る。
「まぁお気になさらずに。」
健はグイグイくる店長を制止する。
「誰ですか?オーナーこのイケメンの人ー?」
トロピカルスカイの女性店員がゾロゾロと集まってくる。
健は会社ではクールなイケメンキャラだったので、女性に囲まれているのは慣れていた。
そのたびに失望していた。
「ジョンソングループの社長さんだって。」
もえが困ったように店員たちを止める。
「それで比嘉さん、おすすめの商品はありますか?」
健が必死にもえの連絡先を交換するためのシナリオを模索しながらもえに聞く。
「私はこのスノーボールとTシャツがおすすめです。特に沖縄観光をしている方達にお勧めしています。」
もえが健にスノーボールを手渡しながら言う。
「なるほど、しかし、お店のことで少し相談があるのでご一緒にランチはいかがですか?」
健は真面目な顔でもえの目を見て言う。
店長は健の後ろで驚きひたいに手を当てふらつく。
それを支えながら秘書は社長の方からランチに誘うとは珍しいと驚きの表情を見せる。
「良いですよ。」
もえと健はランチ場所を決めその場を後にした。
那覇市内のカフェで予定通りもえを待つ健。
カフェの行列でイケメンの健を女子たちが振り返って見る。
1人待っていた健だったが、順番が来て店内に通される。
そこへもえが遅れて席にやってくる。
「ごめんなさい!お店が急に忙しくなっちゃって!」
もえが申し訳なさそうに席に座りながら言う。
「俺も来たばかりですよ。すみません忙しい時期に」
健がクールに言う。
店員がやって来ると注文を2人に聞く。
「僕は生ビールで」
健が前髪を分けながらクールに言う。
「え、良いんですか?仕事は??」
心配そうにもえが聞くが健はもう大体の仕事は済んだから直帰でいけるともえに伝えると、もえももう直帰なのでもえも生ビールを頼むことになった。
「社長でもビール飲むんですね、てっきり熟成されたワインでも飲むのかと思いました!」
もえが朗らかに言うと
「俺はワインも好きで詳しいですが、あまり周りに言ってないんですが生ビールが1番好きなんです。」
そうクールに言った後もえにウィンクする健。
「うわーそうなんですね!庶民的!やっぱり生ですよね〜!!」
大笑いするもえ。
カフェで2時間2人は初対面とは思えない仲の良さで、健のクールさはどこかへ行き。2件目せんべろ、3件目カラオケと充実した時間を過ごす。
酔いが覚めて公園のベンチで座った2人。
健が和やかな表情でもえに言う
「いままで色んな女性と接してきたけど、君みたいなストレートな女性は初めてで楽しいよ」
もえはニコッと笑って健に言う。
「健さんって恋愛経験実はあまりないですよね、意外で私もびっくりしちゃいました。
無言で10秒ほど見つめ合う2人だったが、急に健がおどおどして言う。
「そろそろタクシー呼ぶよ、冷え込むと良くない」
もえがぷっと笑って返す。
「まだ夏なので寒くないですが、そろそろ帰りましょうか。」
数分後、健はもえをタクシーに乗せ、自分もホテルに帰る。
ホテルの一室に着くと違和感を覚える健。
視界がカクつきすこし飛び飛びの感じがするのだ。
健は飲み過ぎで寝れば明日には治るだろうと考え、すぐにベッドに入った。
翌朝健は部屋にやってきた秘書の顔に違和感を覚える。
肌の繊細さが消えてぬるりとした質感になって毛穴が一つも見えない。動きもどこかぬるりとした印象だ。
健はオープンワールドゲームの『グランドセフトアウト』を思い出した。
しかしこれも飲み過ぎで、視力が一時的に悪くなっているのかと考え、秘書と2人で次の視察先の福岡に行くべく、空港へ向かった。
空港ではイケメンの健を女子達が振り返って見るのだが、動作がやはりオープンワールドゲームのNPCの様だ。
ひどい二日酔いだなと自分に呆れるが、飛行機に乗った健は重大な事件が起こっていることに気づくことになる。
飛行機は離陸し、キャビンアテンダントに水を注文した後、二日酔いを良くするべく一気飲みしたあと窓の外に異常な光景を目にしてしまう。
健が目にしたものは、遠くの海が波もないのっぺりした灰色の地平線で飛行機の数キロ先で鮮明な海が突然現れると言う連続した現象だった。
これに似たものを健は知っていた。
それは自分がよくやっていたゲーム『グランドセフトアウト』でたまに起こる処理落ちの現象だ。
健はそれを観て恐ろしくなった。
この世界がゲームの中に入ってしまったのか、あるいは自分の頭の中だけがおかしくなってしまったのか。
冷や汗をかいた健は秘書にも相談できずにいた。
深夜、沖縄のジョンソンデパートでスーツ姿の男女2人組が健ともえのいた喫煙所にいる。
神のシステムエンジニアとその新人、太郎とあかねだ。
熟練エンジニアの太郎は独立型の量子スキャナーを片手で喫煙所に向け言う。
「こんな恋愛指数はロミオとジュリエット以来か。あれは実話だということを多くの人は知らないだろうが。」
新人のあかねは恋愛指数とはなにかと太郎に聞くと太郎が返す。
「恋愛指数とはすなわち恋愛で起こる当人たちの量子もつれの度合いだ。この地上では量子もつれによってテレパシーやシンパシーを感じたという実験結果がでている。その指数が一定量を超える場合はほぼ無いが、ロミオとジュリエットのように、指数を一定量超えた場合、人生という道の混線が発生してしまうことがある。2つの人生が1つになってしまうんだ。」
あかねが自分に言い聞かせ納得した表情で言う。
「つまり一つのメインメモリーしかないのにも関わらず、2つのゲームを動かすことになってしまうと??それによって当人たちの脳内ではゲームの処理落ちなどでメモリを軽くしようと調整が行われてしまう、と。これを再びそれぞれの道に戻すにはどうしたら良いんですか先輩?」
太郎が頷きあかねに返す。
「これを当人たちに知られる事なく道の混線エラーを修復しなければならない。ロミジュリの事件以来わかっている解決法は、当人達の口付け。量子もつれを和らげるにはこれしかない。」
翌日福岡のジョンソンデパートを早めに出た健はコンビニでビールを買って1人公園で飲んでいた。
健が歩くと遠くの景色は灰色ののっぺりした地平線から突然ビルが現れたり人が現れたりするので、処理落ちの現象に恐ろしさを未だに感じ困惑していた。
そのころもえは仕事を休み、カフェで友達と会っていた。
もえは友達に必死に訴えたい表情で言う。
「突然視界がカクカクしたり、遠くのビルや人が無から描写されたりするの!ほんとだよ??さっきなんか口の中がビールの味でいっぱいになったんだけど、ちょっとふらふらしてきちゃった!私精神科に行った方がいいんじゃないかな!?」
もえの友達が心配そうに返す。
「もえビール飲んだんじゃない??精神科に行ったら入院なるんじゃない??一度精神病で薬に頼ると、なかなか抜け出せなくなるから、精神科は行かない方がいいよ!」
太郎とあかねは健康食品会社の工場に来ていた。
敷地外から工場に量子スキャナーを向ける太郎。
スキャンした後、量子もつれ生成装置で工場に向けてビームを放つ。
あかねが心配しそうにつぶやく
「これでしばらく2人の症状が和らげば良いですが。」
太郎があかねに返す。
「ここの営業担当は新製品を売り出し、大々的にテレビコマーシャルをうつが、飲むかどうかは彼ら次第だ。これは彼らのメモリ量を一時的に増やすだけの応急処置さ。」
翌朝、健は自宅のある東京に向かおうと飛行機の中にいた。
飛行中また健を処理落ちの症状が襲う。
健の視界がカクつく。
そして自分を含めすべてのものが3Dポリゴンで描写される。
いったい俺になにが起こってるんだ。
このまま俺は将来過ごさなくていけないのか。
これ以上症状が悪くなったら仕事にも影響が出てしまう、しかし俺が仕事をできなく亡くなった場合会社の株価にも影響がでる。
医者に相談して世間に公表されれば大変なことになる。
健の相談相手は基本的に武田しかいなかった。
飛行機を降りた健は真四角になった手でスマホを操作する。
突然視界にウィンドウが現れ「電話をかけますか?」と表示される。
戸惑った健は叫んだ。
「武田に電話します!」
空港の人たちが怪訝な表情で様子を伺っている。
表情といっても目は傍線で鼻はなく口も傍線で描写されているが困っている表情は顔に表現されている。
秘書は遠く離れて買い物を済ませている。
武田が電話を取り、健が焦った表情で相談する。
一通り自分の症状を話したあと、武田が返す
「自分が小人になったような感覚になる人とかは聞いたことあるけど、おまえのような症状を聞くのは初めてだ。どちらかといえば統合失調症の幻覚にも近いが、とりあえず家で休んだらどうだ??
スマホも操作できるみたいだし、もう少し様子をみたらどうだ??
俺もこのあと解決方法を模索するから、また何かあれば連絡してくれ。」
わかったと健はいい、電話を切ることを考えた瞬間『電話を切りますか? 』と視界にウィンドウが現れ、切りますとつぶやいた。
自宅のリビングに戻った健は健康食品薬の小包が家に届いているのに気づく。
社長直々に新製品として売るのでぜひ飲んでみてくださいと手紙が添えられていた。
健はもえとまた話したいと強く思っていた。
彼女の表情声でまた癒されたい。
この先沖縄に戻ったらあの表情がまた観れると良いなと願った。
電話をもえにかけるが、何度鳴らしてももえが出ることはなかった。
健は気を取り直しパソコンを立ち上げるが、画面は旧バージョンのosのようになっている。
「視界 ゲームの世界に見える」などの検索ワードを調べてみるが役に立つ情報はない。
健はたいして有益な情報を得られず、ベッドの前で「寝る」と言い眠りについた。
翌朝、健康食品薬を鞄に入れ、健は北海道へ向かうため再び飛行機に乗り込んだが、恐怖でいっぱいになっていた。
また視界が変化して今より悪くなってしまうんじゃないか。
沖縄から離れてからおかしい。
沖縄でなにか、何者かに加害を加えられていたんじゃないか。
不安でいっぱいな健に再び処理落ちが襲う。
視界が安定したあと自分や周りの景色は16ビットで表されていた。
一人称の16ビットゲームのような感じだ。
キャビンアテンダントは平面的に現れ、顔色が悪いですが、大丈夫ですか?と問いかけた。
健はとりあえず水を注文するとすぐに出てきた。
「水を飲む」
健がつぶやくと視界が暗転し、「ゴキュゴキュ」とウィンドウに表示されて視界が明転する。
水の飲んだ感覚はあったが、健は焦っていた。
どうしようもない焦りが健を襲っていた。
北海道での仕事を終わらせて、ホテルに着いた健は16bitの視界もお洒落でいいなと精神が壊れはじめていた。
すべてがシンプルな16ビットで表現されている。
ホテルの部屋でTVをつけてみると、送られてきた健康食品薬のコマーシャルがやっていた。
そういえば健康食品薬を鞄に入れたなと思い、飲んでみた。
TVでは健康に関する番組がやっていた。
ぼんやりと癌とかレントゲンも16ビットで表現されるのかな??と考えていると知らず知らずのうちに3Dポリゴンの視界を通り越して、オープンワールドのゲームの視界にまで戻っているのに気づいた。
治っている。やった、薬が効いてきたのかな?
その頃もえは精神病院に入院していた。
「16ビットってどゆこと??俺の顔のどこが棒と線なんだよ〜」
病院で一緒に入院しているチャラい男がもえに問いかける。
「それに私好きな人いるので、鼻のない男とは付き合えません!」
もえがチャラ男に冷たく返す。
「花がないなんて失礼な人だなぁ〜あーあちまんねぇ」
チャラ男は言い捨ててどこかへ行ってしまった。
同じ入院患者がまたもやおーいおーい!と叫んでいる。
しかしいつものことなので患者は皆知らないふりをしている。
病院の外では太郎とあかねが量子生成ビームを撃っている。
「これでもえが健に電話をかけて2人が気づくと良いのだが。」
太郎が汗を拭いてつぶやいた。
もえが面会室でスマホを持っている。
もえが健さんに電話をかけるとつぶやくと健のスマホに電話がかかる。
もえは健に入院していることは言わず、互いに処理落ちのことは黙って、ゲーム以外の話題で盛り上がっていた。
するとうしろから再び大声でおーいおーいと叫ぶ老人患者。
もえは慌てて言い訳する。
「今ガソスタの近くにいるの!ごめんなさいそろそろ切るね!電話を切る。」
もえは少しでも健と話ができてよかったと思った。
すると看護師が眠剤の時間ですよ〜ともえに近づいてくる。
「もえさんには新しく1日三回の健康食品薬が処方されているので飲んでください。」
もえは看護師に言われた通りに薬を飲む。
病院外の太郎はあかねに言う。
「応急処置は済んだが、なかなかうまいこといかないな。」
あかねは苦笑しながらそうですねとつぶやく。
北海道でオープンワールドの視界まで戻った健はもえとの電話でかなり正常な精神を取り戻してきた。
沖縄から離れてからおかしいので、あえて薬を飲まず、沖縄へ再度出張に行こうと考える。
翌日、薬の効果が切れ16ビットの視界に戻った健は早速北海道から沖縄への直行便に乗った。
そして沖縄に近づくたびに視界が良くなるのに驚く。
沖縄に着いた頃にはヌルッとした映像のオープンワールドゲームの視界にまで戻った。
健は思った。
もしかしてもえとの出会いがキッカケになったんだろうかと。
早速沖縄のデパートに戻った健はトロピカルスカイでもえに会いに行こうとするが、もえは病院に入院中と聞く。
まだ日も暮れていなかったのでその足で病院に向かった健は病院に着くが、病院の入り口でもえを発見する。
遠くからでももえの姿は繊細に見え、輝いていた。
話しかけようと遠くから叫ぼうとした時、もえは現れた男性と抱き合ってほっぺにキスまでしているのを健は見てしまう。
健は絶句し、背を向けてタクシーでホテルへ帰った。
落ち込んだ健に呼応し、もえと健の視界は16ビットの世界にまで落ちていた。
ホテルの部屋で健は再び武田に電話をするとつぶやき電話をかける。
健は沖縄でもえに会ったこと、もえが中心ではないかということまで全て話した。
武田はそれを聞いて返す。
「ほっぺにキスだろ??愛情表現としては家族だということも考えられるんじゃないか??もしもえが中心だったとしたら、彼女にも影響があると考えられないか??お互いにシンパシーを感じるといった場合量子もつれが関係しているんじゃないか??
彼女と電話していてなにか変わったとこはなかったか??」
健は武田のアドバイスを聞いて再度電話していた時のことを思い出す。
そしてもえが電話を切る時、電話を切るとわざわざつぶやいていたことに気づき動揺する。
視界は3Dポリゴンまで戻っていた。
「ごめん俺行かなきゃ。電話を切る。」
武田に電話越しで言って切ると、健はスマホでもえに電話をかける。
もえが電話にでると健が言う。
「もえさん今どこ??」
もえが返す
「最後に会った公園にいるけど??」
健がもえにそこに行くので待っていてと言うと電話をきる健。
公園で1人健を待つもえは3Dの水面に反射した建物の光を見つめてぼーっとしているが、水面はポリゴンなのでまったく綺麗に思えない。
しかし段々と映像がカクつき、ヌルッとしたリアルな描写になるがまだ繊細な描写には欠けていた。
「もえさん!」
後ろで叫ぶ健に振り向くもえ。
「君にも見えていたの??16ビットの視界や3Dポリゴンの世界が。」
健が聞くともえが答える。
「どうしてそのことを知ってるの?お医者さんと親友にしか話してないのに。」
健が答える。
「俺にも見えていたんだ!君との出会いでおかしくなったんだ!君に近づけば近づくほど世界が鮮明になっていくんだ!」
健ともえは1メートルの距離に近づくともえがつぶやく。
「ほんとうだ。」
もえは水面を再び見るとそこには現実に近い綺麗な水面が写っていた。
もえが健をを抱きしめる。
2人を遠くで見ている太郎とあかね。
あかねが太郎に聞く。
「量子ビーム使いますか??」
太郎が答える。
「ここで使うのはナンセンスだよ。」
太郎が笑みを見せる。
「俺たちなんかしなきゃいけないのかな??
しなきゃいけないきがする。」
そう言って健はもえに口付けすると2人は自分たちが輝くのを見て、それから2度と処理落ちの現象は起きなくなった。
デパートのトロピカルスカイで女性社員やバイトに囲まれてプレゼントを贈られたり、夕食の誘いを受けるが無言でクールに振る舞う健はもえに呼ばれる。
「健さんお昼行くよー」
健ははーいと答えるとダッシュでもえを追う。
残された女性社員たちは、だれあれ社長に対して失礼などと、ぶつくさ言っている。
助手席を開けてあげる健にキスをしてし乗り込むもえ。
車に乗り込んだ健ともえは出発する。