第一話 絶望の淵で
「お前、誰?」
声がした。誰もいない、真っ赤な絶望の中で。少年は顔を上げる。そこには、短髪の髪をした少年がたっていた。髪はベージュ色。少年と同じ、ベージュ色。
やった・・。生き残りがいたんだ・・・。
少年は思った。そう、生き残り。少年達の周りには、生きているものなんて、いなかった。すべで、血の海におぼれ、すでにいない。少年はこの絶望の淵で希望を抱いた。
「僕は・・」
少年は答えようとし、口を開けたが、言葉が止まってしまう。
僕は・・・?
分からない。自分が誰なのか分からない。あれ、何でここにいるんだっけ?分からない。分からない分からない分からない。僕は誰で、何故ここにいて、周りの惨状は何なのか、分からない。
短髪の少年は少し考えたそぶりを見せ、聞いてくる。
「分からないのか?自分が」
少年は戸惑いながらうなずく。短髪の少年は自分に手を当てて言う。
「俺はフラッド。フラッド・ヴァイオ。生き残り同士、仲良くなろうかと思ったけど、自分がわかんないんか・・・」
少年はうなずく。
あれ?
何で僕、さっき、自分が生き残りだって分かったんだろう。分からない。もしかしたら、さっきの状態だったら全て覚えていたのかも知れないのに・・。思い出せない、何でだ?何なんだ?分からない。
「まあいいや。お前、自分が分かんないんだろう?俺と友達になって、自分探しの旅、なんてどうだ?」
フラッドが聞いてくる。少年はフラッドを見つめる。
―――それもいいかも知れない。
少年はうなずいた。フラッドは笑い、うなずく。そして、右手を腰に、左手をあごに添え、顔を近づけてくる。
「お前、名前がないと、不便だよな…。俺がつけてやろうか?」
少年は少し考える。確かに、不便だ。少年はうなずいた。
「よし、お前はクリアだ。何も分かんないから、クリア。クリア・ヴァイオにしようぜ」
クリア・・・ヴァイオ。気に入った。クリア・ヴァイオ。響きがいい。
「俺たちは今日から兄弟みたいな?」
フラッドが笑って言ってくる。クリアも笑い返した。しかしそのあと、クリアは驚いた。フラッドが、悲しそうだった。すぐに普通に笑う。
何で、悲しそうだったんだろう…。
何を考えてるか分からない少年・フラッド。記憶を失くした少年・クリア。二人が出会った時。