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第1話


「今日もいい天気だな。それに風も適度に拭いて過ごしやすいし、後で川で洗濯しないとな。」


 どこぞの桃太郎のばあさんみたいなことをしているがこれには深いわけがある。


 100年前に突如としてそれは現れた。洞窟や塔など様々な形をしており、中に入るとそこは別世界へとなっている。人々はそれを『ダンジョン』と呼ぶようにした。


 ダンジョンはあまりにも未知の存在であり、出現当初は危険だということから侵入を禁止し、24時間の監視が常に行われていた。


 転機となったのはダンジョンが現れてすぐに『覚醒者』と呼ばれる不思議な『スキル』という名の力を扱うものが現れたことだ。スキルはダンジョン内でしか使えないという制約があるもののこれまでの未知の存在であったダンジョンを次々と攻略していった。


 覚醒者にはどうやってなるのかは誰もわからない。ただいきなり目の前に自分にしか見えないボードが現れ、与えられたスキルを確認することで覚醒者となることができる。


 世界はあらゆる分野において進化を遂げると思われていたが100年後に待っていたのはただの荒廃した世界だった。


 世界がこうも変わり果ててしまったのは今から5年前の『S級ダンジョン大崩壊』が原因である。


 無数にあるダンジョンにはそれぞれS、A、B、C、D、Eの6階級に分けらている。


 その中でもS級ダンジョンは世界に8つしかないものの歴史上誰1人として攻略することができなかったものである。


 歴史上最も多くのダンジョンを攻略した『英雄』も、あらゆる魔法を扱う『賢者』も、1000の軍勢を操る『ネクロマンサー』もS級ダンジョンに挑んでは再びその姿を見せることはなかった。


 そんな攻略不可能と言われているS級ダンジョンが一斉にダンジョンブレイクを起こした。


 世界は阿鼻叫喚の嵐に巻き込まれ一月もしないうちに世界はモンスターに支配された。


「は~あ。なんでこんなことになったんだろうな。」


 別に俺は偶然生き残ってこの山に住んでいるわけではない。むしろ死に関してなら俺は誰よりも経験している。


 スキル『不死』


 これが俺、聖仁成(ひじりじんせい)に与えられたスキル。読んで字の如く何があろうとも死なない。体の一部がなくなったとしても少し時間がたてば元通りになるし、溶岩の中に落ちたとしても気づけば安全なところで目が覚める。


 ちなみに俺のスキルのランクは特E級。スキルのランク分けはダンジョン攻略に適したスキルかどうかで決まるものなのでE級だから最弱というわけではないらしい。


 もう1つ特○級についてだがこれはダンジョンの外でもスキルが使える特別な覚醒者に使われるものだ。全世界で見てもごくわずかな覚醒者しかおらず、ダンジョン大国と呼ばれている日本でも2000万人ほどいる覚醒者のうち俺を含めて9人しかいないらしい。


 9人の内訳はS級とA級が1人ずつ、B級が3人でC級が2人、D級が0人、E級が2人となっている。このE級の二人のうちの1人が俺というわけよ。


「最初に喜べたこのスキルも今となっては死ねない呪いだからな。」


 この山に来るまでの凄惨な出来事を思い出し、吐きそうになったのを我慢しながらもなんとか目的の川までたどり着くことができた。残念ながら洗濯機どころか洗剤すらないので手を使って気合で服を洗うしか方法はない。

 

「よし終わった~!こんくらいやれば大丈夫だろ!あとは乾くまで川で水浴びだ!」


 いくら川の近くだろうと暑いものは暑い。それとずっと中腰でいたせいか腰が痛い。仁成は、洗った服をそこら辺の木にひっかけて、着ていた服は近くの石の上において川の中へ慎重に入っていった。


「ひゃ~!冷て~!さいっっこう!」


 仁成は思った以上の冷たさにびっくりしながらも久しぶりの水浴びに歓喜していた。風に乗って飛んで行った洗濯物には一切気づかなかった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦


 腰に剣を携え、森の中を進む1人の少女がいた。少女が歩いていると目の前に武器や盾を持ったゴブリンが何体も現れた。そのゴブリンたちは全員が武器や盾を装備していたり、弓を持って木の上に潜んで少女を逃がさないように囲んだ。


「武器持ちのゴブリンは知能が高かったり、上位種が従えていることが多いのだが、気配を見るに上位種はいないようだな。」


 少女は剣を抜くと同時に死角から飛んできた矢を切り捨て、一瞬にしてゴブリンたちに近づいたかと思えば、ほとんど同時にゴブリンの首が飛んで行った。


 返り血を浴びることもなく鮮やかにゴブリンたちを切り捨て、剣を鞘に納めたとき1枚の布が飛んでくるのを見つけた。


「なにこれってパンツ!?一体誰が……もしかしてここに人がいるの?」


 少女は驚きながらもこの先に人がいると思い、パンツが飛んできた方向を頼りに進もうとした。


 すると「俺のパンツが」という男の声が森の中に響いた。


「やっぱり、近くに私以外の人がいる。急がないと!」


 少女はパンツを片手に握りしめ声の主がいるであろう川へとむかった。

 

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