【目覚め】
この物語はフィクションであり、登場する組織や人物は実在のものとは一切関係ありません。また、物語には独特な考えが表れますが、これは物語を読みやすくするための要素であり、私個人の信念とは異なります。この点を理解いただいた上で、物語をお楽しみいただければ幸いです。
まぶしかった。目の前には光があった。それは、勉強机に使われるようなライトであった。俺の頭には吸盤がたくさんついているヘルメットのようなものをかぶされていた。首を右に傾けると俺と似たようにヘルメットを着けて、ベッドに横たわっている人が多かった。しかし、彼らには意識がない。ウークは、すぐに自分が実験台にされているのだと悟った。何の組織かはわからないが、ここから逃げないといけないことは確かだ。ウークは隣に寝ていたのっぽでガリガリのいかにも頼りなさそうな男を起こした。このガリガリ以外にも周りにいた他の男たちも起こした。しかし、子供はいても女はいなかった。しかし、ウークにはなんで男たちだけしかいないのか理解できなかった。そして、施設は大きかった。さすがに、全員を起こすことは無理だった。ウークは周りの男たちをベッドから起こすと、ウークは起こした約四十名に声をかけた。
「俺は逃げる。逃げねぇー奴はベッドに戻れ。それが嫌ならついてきな。」
とウークが言うと少し動揺が見られた。そして、ほとんどの奴がここから逃げると言った。しかし、あいつは違った。最初にベッドから起こした奴だ。この頼りなさそうな男が必死に話し始めた。
「お前らがここから逃げたら、誰がまだ起きてない奴を守るんだ?僕はまだ、ここで寝ている奴のことを見捨てることができねぇ。お前らがもし、逃げたとしても僕はこいつらを助けるまでは逃げん。お前らのことは信用できない。お前らが助けに来ることはないに等しいと思っている。でも、後悔だけは嫌だ。誰かを見捨てて逃げたくないんだよ。僕は。」
と頼りなさそうな男は意外にも正義感のある言葉を放った。
「分かった。俺がお前を助けることを信じるな。でも、このウークがどんなことがあっても今から逃げる仲間、いや兄弟を死なせはしない。それだけは信じろ。俺は行く。名前だけ教えてくれ。」
とウークは鼻をゴリラ並みに膨らました。
「僕の名はモヤシだ。」
と名前だけ頼りなさそうな男から聞くと、すぐにウークの一団は排気口へと姿を消した。モヤシは何かをした後、自分のベッドに行き、寝たふりを始めた。
『守りたいものは人それぞれだ。自分が守りたいものを守れなくて何を守れる?それを理解してくれた時点で、ウークを信用は出来る。あぁ、また早く会いたいよ。こんなところではなくて別のところで...』
とモヤシが頭の中で願っているとあたりが騒がしくなった。警報が鳴り始めた。この施設の人にウーク達の脱走がばれたのだ。モヤシは唾をのんだ。もし、意識があることが気づかれたら、何をされるのか分からない。
「ウーク逃げ切ってくれ。お前さえ、ここから逃げきるだけでも未来が明るくなる。見つかる前に早く。」
とモヤシが独り言を言っていると覆面をかぶった警備員たちがウークのベッドに近づいてきた。
「いねーぞ。人間特攻の実験台どものサンプルが」
「もし、逃げられたら帝王様に殺されるぞ。」
と施設の警備員たちが次々に焦っている。しかし、ある施設長だけは、探偵気取りで事件を面白がった。
「いや、殺されない。ベッドはまだ温かい。まだ、この施設から逃げていない。施設から十キロ圏内を封鎖させろ。」。
「でも、もう逃げられているかもしんないっすよ。施設長。」
とある警備員は恐る恐る施設長に聞いた。
「いや、こいつらは元々馬鹿だ。この装置によって、仮想世界で天才だと勘違いしているやつらがほとんどだ。だから、逃げることなんて不可能だよ。」
と、施設長は自信満々に答えた。
「確かにあいつらは本当に才能のない子供の集まりだもんで逃げたところで餓死しますね。」
と他の警備員も施設長に賛同し始めた。
「まあ、ここから逃げるのは足が百本あっても無理だけどな。果たして、この要塞から逃げ出せる馬鹿は何人いるのかな。」
と施設長は何かのボードゲームで戦略を立てる悪役のようにその一言を放った。
次話、10月20日17時から公開予定です。