第六話 追憶の故郷で
希少な獣人族ブラック達が住む村は…それはそれは自然豊かでのどかでHAPPYな村だった。
幼き日のデルタは、毎日かけっこしたり木登りしたり川遊びを楽しんで夜はぐっすり眠っていた。
そして、そんな平和で愛すべき日常が大人になってからもいつまでも続いていくと信じていた。
ブラック達の信仰は、大いなる自然にすべての英知と豊かさがあり、必要なだけすべて与えられる…といったものだった。
生活も自給自足で、大人も子供も協力して田畑を耕し、川魚を採った。
科学文明に頼らず生きてきた事が災いし、ある日…開拓地の占拠と拡大を目論む金目当てのタチの悪い貴族集団に目をつけられてしまう。
ブラック達は、あれよあれよという間に殲滅され、豊かだった村も民家ごとすべて…貴族が雇った傭兵たちに焼き払われた。
そしてブラックの魂の核ともいえる『命の結晶』までも、すべて抉り取られていた。
デルタが駆け付けた時には時すでに遅し、村は焼け野原となり
命の声は聞こえなかった。
ブラック「俺は…あの光景が今でも瞼の奥にこびりついてうなされるんだ…。生き残ったそいつが誰なのかは知らないが…そいつも同じ想いをしてるなら…すぐにでも駆けつけてやらなくちゃならねぇ…!」
グっと拳を握りしめるデルタ。
その隣でエミリアが寄り添い、彼の手の上にそっと触れる。
エミリア「私も賛成よ。きっとそのブラックの人も…デルタと会えるのを心待ちにしていると思うの。すぐにでも出発できるように必要なものを準備するわ」
デルタ「あぁ…すまない。よろしく頼む」
普段はツンとしているデルタだが、このときばかりはエミリアに深く頭を下げた。
そして、二人は一旦家まで戻り荷造りをはじめた。