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緑色の体液

作者: 富樫祈里

「光、電気消してくれよ。俺もう寝るからさ」

 龍司が羽毛布団から顔を出してそう言った時、光は今し方稼働し終えたばかりのドライヤーの余熱を左手に感じ、何も言わずに振り向いてやった。光の机から漏れる電気スタンドの灯りだけが、今現在この部屋の光源となっており、あらゆる物の一面を照らす一方、見たくない部分を黒で覆っているかのようであった。光が椅子から離れてスタンドの電源を切った時、夜の窓が宙に浮かんだ。壁という壁を無視し、闇は果てしなくどこまでも続いている。光は龍司の隣に敷かれた布団の上に立ち、裸足で深夜のアスファルトを進む感覚を覚えた。しかし次の瞬間には自分が凍った水の上に立っている事に気付いた。脆い氷がひびを作り、今にも光の息の根を止めに掛っているかのようだ。

「どうしたのさ、突っ立っちゃって。寝ないのかよ」

「私、もう少し勉強しようかと思っていたのに。あんたと違って朝はそう忙しくないもの。なんてね」

 畳とほぼ並行の姿勢のまま、龍司が笑った。自分たちの目の位置を考えると、光は何か悔しくて仕方なかった。精神がその人の胸や頭のどちらに収まっていたとしても、他人との立場は空間には左右されない。少なくとも、光と龍司では。同じ学年の制服を着ようとも、龍司とじゃ対等ではない気がしていた。

 光が真っ直ぐ腰を下ろすと、右から龍司の手がすっと伸び、光の利き手を掴みぐっと引いた。重心を奪われ、倒れた先には龍司の顔があるはずなのに、窓から注がれる柔らかい夜の光は、彼の輪郭をなぞるだけでこちらからは見えない。しかし、大げさな布団の下で奴の体が寝そべるのは確かであった。

 反射的に顔を晒し、光は両腕を地面に押し付け体を支えた。

「言っとくけど、しないよ、キス。やめてよ」

「分かってる。父さんも母さんも起きているだろうし、しないって誓うよ。光の頭を撫でようとしていただけだから」

 しかし、龍司は光の耳の位置に手を伸ばし、優しく握り親指を幾度も動かした。だんだん目が慣れ、壁と壁の接合部が線を引き、自分たちが箱の中に居る感覚を取り戻した。同様に、龍司の顔もゆっくりとフェイドインする。ぼやけているはずなのに嫌に鮮明なのは、記憶が修正し錯覚を作っているのだろう。

「光って、視力いくつだっけ。0.5も無ければ良いのに」

「何よそれ。言っとくけど、1.0よ」

「じゃぁ眼鏡要らないのか。あーあ。残念だな」

 矯正をして1.0だとは、光は言わなかった。それよりも、奴の好みの為に不自由を望まれたことに、光は苛立ちを感じ片腕に爪を立てた。この男の言葉は、この類の事しか記憶にない。一方で、眼鏡なんかで龍司の愛が買えるなら安い話ではないか。

「ねぇ、何か話して。今日学校であった事とか」

「話。そうだなぁ。四時間目、体育だったんだけどさ。男子はリレーをして、それで俺一着だったんだ」

「知ってる。相手が良かっただけ、なんでしょ」

「ん。どうしてお前が知ってるんだよ」

 質問に光は答えなかった。ただただ、教室に戻ろうと階段を下っている途中で、龍司達の階から彼の声と芭月とが談笑しているのが聞こえたのだ。自分が居なくても、この人の世界は回る。自分も同じクラスで、体育館からグランドが覗けてさえいれば。グランドを覗ける唯一の窓から、いつ走るか分からないこの人の姿を待ち望むのだ。芭月がそうしていたように。この前の運動会では、龍司は騎馬戦で誰もが予想もしなかった雄姿を見せた。その直後、競技と競技の入れ替えですれ違った時、光は隣を歩く友人にもひけらかしたい思いで、龍司を褒めた。しかし、奴の顔ときたら。照れるでも咎めるでもなく、兄妹である光の神経を疑い、若干の怯えを含んだ目だった。光の方も動けなかった。望まれていない事を知った。

 止まっていた龍司の手が、再び光の耳を撫でた。

「光も何か話してくれるんだろ。今日どうだった。ほら、四時間目好きな音楽の授業があったんだろ。着替えの時聞こえたぜ。光も歌ってるのかなぁ、って」

 事が、一変した。龍司の表情が闇の中にあるのが悔しい。どんな顔をして彼は言葉を放ったのだろう。しかしすぐに、一瞬前に考えていた事が光を転覆させ、龍司を見る目に輝きが消えた。到着した海底で闇雲に手にしたそれを、光は龍司に聞かせた。

「虫の幼虫、が、ね……」

 あまりにも小さな声だったから、龍司も体を起こし、羽毛布団が肩から落ちた。光は視線を下ろしていた。

「虫の幼虫が、渡り廊下で死んでいたの。誰かが踏んだんだと思う。潰れてさ、液がびしゃって広がっていたの。久代と華菜子は気付かなかったみたいだけど、私一人だけ、ひっ、て悲鳴上げちゃって……」

「うげえ。それは嫌だな。でも虫の幼虫なんて、今の季節いるかな。それ、今日の話なのか」

「ううん。夏ごろ、だったと思う。あんたの誕生日の少し前。半袖の制服だったから、運んでいた段ボールが腕に痕を作ったのを覚えているし……」

 そう言って言葉が切れた時、光はその虫の死骸を闇の中で見つめていた。現実世界に焦点が合わない感覚が、光の頭を揺らす。その虫は渡り廊下の隅で、自分の体液を敷物にして横たわっているのだ。肉片が引きずられたのが、大部分とは別に点在している部位がある。形はばらばらであった。もはや膨らみが消え、コンクリートの廊下に奴がこびり付いている。そこだけに目をやると、同じ次元で生活していたのが嘘のようだ。幸い頭と胴体とは、捻じれずにもともとの状態でくっついていた。その目からは今にも涙が落ちてきそうだ。今になって、どうして光はこの虫に感情を求めるのだろう。

「もうこの話は止めよう。気分悪そうだぜ。女は虫が嫌いなんだろ。それに、風邪ひくぜ。布団に入れよ」

 そう言って龍司が自分の羽毛布団を開いたが、光は何も言わず自分の布団の中に体を収めた。

「別に私は虫苦手じゃない。そんなんじゃないの」

「そうか。でも、虫なんか気持ち悪いって、芭月が言ってたぜ。女は皆そう思ってる、ってもな」

「そう……」

 ともかく私は違うの。その言葉が言えなかった。固い布団が熱を持つのが、なんだか遥か遠い先の事に思えた。甘えなかった事を後悔するのは初めてじゃない。

「明日の休み。お前、どうするのさ。俺は朝練済ましたら、保里高と試合。時間があれば、山本商高とも」

「二週間くらい前にお母さんから聞いたよ。私も応援行くって言ったら、あんたが嫌がるって言われた」

「だって、変だろ。一応兄妹だぜ。で、何するのさ」

「おと……。男の人と、会うの」

 流石に、言える話ではなかった。光は言葉を濁した。

「男の人。何だそれ。聞いてないぞ。誰だよ」

「言わない。別に、恋愛しようってんじゃないんだから。ほっといて。あっ。ねぇ、パパ達に話さないでよ」

「親にも内緒。あー、やだやだ。如何わしい」

 龍司が機嫌を損ねても、光はそれを宥める余裕は無かった。やはり、言わない方が良かったのだろうか。父親に知られる危険まで付きまとい始めた。そう、父親に。実際、お母さんは知っているのだ。というより、この話を持ち出したのは彼女だ。ただ、パパが知ったら何と思うだろうか。結局二組とも同じ状況だから、知ったとしても、理解してくれはするとは思うが……。

「お前が男と会うってんなら、よし、俺も決めた」

 龍司の言葉で、光ははっとなった。顔を上げた瞬間、彼が次は何を言い出すのか恐ろしかった。

「俺、芭月に誘われたんだ。明日練習が終わったら、一緒に買い物にでも行こうって」

「買い物って……。試合終わるの、いつも早くても六時くらいでしょ。その後からって、暗くなるじゃない」

「別に。前に康平たち達と十二時までボーリング行ったこともあるし。大丈夫だろ」

「駄目だよ。そんなの言い訳になんない。酷いよ」

「酷いって、お前なぁ……」

 龍司は体の向きを変え、頭を掻く動作を見せた。すぐにその腕は羽毛布団の膨らみに隠れ、体を支えた。

「言うけどな、お前も男と会いに行くんだろ。お相子じゃないのかよ」

「私のは恋愛ごとじゃないってっば。最初にそう言った。でも、あんたの方はそうでしょう」

「っつ。仕方ないだろ。俺が芭月が好きで何がおかしいんだ。出掛けても変じゃない。分かれよ」

「分かってるよ。だから、今までだって」

「だいたい、お前な。秘密にしたらしたで嫌がるくせに、言ったら言ったでその態度かよ。我儘だぞ」

「あんただって、今、私が男と出掛けるって知って」

「その話はしてない。良いか。俺とお前、俺と芭月の関係じゃ、どっちが当然だ。俺たちが結ばれて良い訳」

「そんなの、言葉にしなくても、良いじゃない」

 光は殆ど泣きそうに、固い布団を目に押し付けた。話の途中から上半身を起こしていた光の背中を摩るのは、夜の冷たい空気だ。それでも、その腕の中で光は孤独だった。しかし、龍司がその手を払いのけると、奴は自分の唇を光の頭に押し付けた。その瞬間、光の心に作られた防波堤が壊れ、涙が布団を濡らす。もはや止める術が見当たらない。はぐらかされた、と言う気持ちが強かった。

「ごめん。離して。もう寝なよ」

 光はそう言って龍司から体を反らした。龍司は納得したか分からないが、奴は言葉にならない声を漏らし、そして羽毛布団に包まり横になった。光に背を向けて、黒の頭だけが見えている。光は龍司の方向を見て、何かに似ていると思った。

「俺ら、ちゃんと籍が入ってるんだぞ」

 龍司がぽつりと呟いた。それは幼稚にも皮肉にも、とにかく可笑しな響きだった。一番は熟年離婚の危機を迎えた夫婦の気持ちでいることだろう。傑作だ。そんな状況、望んでも与えられたものか分からないのに。

「知ってるよ。馬鹿にしないで。長いこと高遠名乗ってないわよ。私、だって」

「小学校からの連中だって俺らが双子だって思っているんだぞ。俺なんか誕生日も一月だって思われてるし。なのに今さら言えるかよ」

「でも、知ってる。結婚って、実際私たち」

「良いだろ、そんなの。籍、入ってるんだってば。同じってことにしとけよ」

「酷いよ……」

 光が声をしゃくり上げた。間が空いて、振り返らず龍司が放つように言った。

「俺たち、一応フェアなんだぞ。お前は全部全部、俺の状況に合している気でいるかもしれないけど、俺だってお前の状況に縛られている。そういう関係の中で、何が出来ることを限界までするのが良いんじゃないのかよ」

 それでも光の嗚咽は止まらなかった。寧ろ呼吸が余計に苦しくなったのを感じた。そうしている間に、龍司がしびれを切らしてか、彼女の手を掻き分けて、瞬時に唇を奪った。水圧で融通の利かなくなった瞼を光が開ける頃までに、奴は先ほどの態勢に大急ぎでついた。そんな奴を見て、光は本当に、ただただ龍司を理解しなかった。それにしても、やはり、何かに似ている。

「俺は、お前の事嫌いになる気は無いからな」

 龍司の声が、いつもと違い緊張しているのが分かった。双子のエスパーなんて自分たちの間に通用するはずがないのに、奴の顔がこれ以上ないくらい熱いのが伝わる。しかし、光は変に落ち着いていた。心の中で静かに思った。

あぁ、この人は私の事が好きなんだ。

それでも、納得できない矛盾に身を任せ、光はすっと立ち上がった。窓の外で偶然にも、何かが弾ける様に光り、彼女を動かすかの様であった。

「ねぇ、もしも私から暴力を振るわれても、あんたは私のことを同じ気持で見てくれるの」

 それは自分でも不思議なくらい落ち着いた声だった。また氷の上に戻ってきたのに、水底に大切なものを忘れ、今や目に見えているのに取れない状況であった。

「お前の暴力なんてたかが知れてるだろ。怖くなんかねぇよ。寧ろ、お前が傷ついて俺のこと嫌いになるかってことの方が、よっぽど」

「振るわれても、嫌いにならないんだね」

「……まぁ、そうだな。痛いとも思わないだろうし」

「言ったよ。言ったんだからね」

 そう言って、光は利き足を上げ、もう一方で体を支えた。

 光は利き足で龍司を力任せに踏みつけた。踏みつけるというより、寧ろ足を投げつけているような錯覚に陥った。冷気が囲んでいるのに耳が酷く熱い。踏みつけた個所が窪んだのが、少量の光の中でもはっきりと分かる。思わぬ痛みに龍司は体を逸らしたが、声を抑えた。それが光の心を刺激する。責めない、拒まない。この人は今、耐えるだけだ。無力な姿を晒しても構わないというその態度に光は苛立ちを感じた。そして、ようやく龍司とある像が一致した。未成熟、まだ変態もしない自分たち。龍司も自分も、あの虫だ。そう思いながら、何度も何度も、できる限り一つの窪みを深めないようにしながら、光は暴行を続けた。

 やがて、足もとでビチャリと弾ける様な音が立った。光の顔の横を生ぬるい液体が飛び過ぎる。その一部が顔に付着し、光の行動を止めた。立ちつくし、利き手で拭うと、窓からの光がその緑色を照らした。

光はこんな時、自分の不器用さ加減にうんざりする。あんなにも一つの窪みに集中しないようにと気をつけていたはずなのに。足元に広がっているのは、あの夏の日に見たように、虫の死骸だった。虫の幼虫。そいつが潰されて横たわっている。いやに足が寒いからもう一度確認してみたら、両足とも緑の液で汚れていた。仕方ない。その虫は光に蹴られたせいで腹が抉られ、大きな風穴を作っているのだ。床はもう、すでにそいつの体液で一面を覆われていた。それにしても、胸糞悪い匂いだ。光は鼻を押さえたが、やがてすぐに夜風が吹き、その匂いを消し去った。

その瞬間、光はまた、足元の氷が崩れ去ったのが分かった。忘れ物の感情は取り戻せたが、どこまでも沈み、沈み、息が苦しい。これはきっと、罰なのだ。龍司を小記憶の箱に押し込めようとした罰が今下っているのだ。徐々に、光の眼から涙が溢れた。

「光、起きなさい。もうすぐ時間よ」

 母親の声で目を覚まし、光は体を起こした。東と南、両方の窓から光が注がれ、部屋の中は眩しいくらいであった。横を見て龍司を確認するが、この時間に彼が居るはずもなく、布団はとうに畳まれ、昨日から準備されていた用具一式は彼とともに消え去っている。変な気分だ。ああそうか。今日は日曜日だ。自分が寝ていて、龍司が消えていても、なんら不思議じゃない。

 そう思いながら布団を除けた時、光は自分の右足の裏に、緑色の体液が付いているのが見えた。いや、あの日見た虫が、彼女の踵で押しつぶされているのだ。光は吐き気を覚えた。しかし、瞬き一つ終わったころには、そいつは後かたも無く消え去り、元々の肌色だけが映った。一瞬の間に、光は緊張と安堵を味わい、汗が頭に纏わりついた。

龍司に会いたい。何故彼は挨拶もせずに、自分を置いていってしまったのだろうか。着替え終わった光は、椅子の上で膝を立て、風の吹き抜ける窓の遠くを見た。やはり、彼の世界は自分が無くても回るのだ。何を考えても、それが一番彼女への恐怖であった。

昼時になり、光は母親から「会ったらあの人に宜しくね」という言葉を預かり、家を後にした。ガウンコートで出歩くには温かい日で、街も日差しを受けてキラキラしている。光は持たされた紙を確認しながら、ある喫茶店のドアを開いた。酷く緊張する。

確信は無かったが、奥のほうに座る男の人が、自分の父親だろうと思った。

「すみません。あの、私、高遠光ですが……」

 その男がぱっと顔をあげた。始めに思ったのが、龍司には似ていないがやはり、私にはどこか似ている、ということだった。特に口元、髪質が。この人の顔が自分の心の中、龍司の隣に焼きついた。どうしても二人を比べてしまう。光りを浴びたその人の顔は、余計に輝いて見える。手を伸ばして触れてみたい。溢れ出る喜びを抑えた様なその笑顔が、光の心にあった最後の氷を溶かした。

「光か。そうか、大きくなって」

 物心つく前に聞いていた声が、まさかまたこうやって聞くことが出来るとは。

「覚えているかな。あの、君がまだ浅沼だった時に、いや、君の、お父さんだよ」

 その言葉が元になって、光はまだ座りもしないうちからぼたぼたと涙を流していた。喜びの涙にしては冷たすぎる。涙が顔の頬を過ぎ、唇と肩を震わせた。昨日から自分は何度泣いているのだろうか。

 父親の手は触れて良いのかどうか分からないかのように、空中で上下し、そのうちぱたりと落ちた。

「光、いや、光ちゃん、大丈夫か。あの、ごめん。会わない方が、良かったよね。君も今、幸せな家があるのに」

「違うの。ごめんなさい。そんな事、ないの」

 この人と血が繋がっている事に、他のどんな言葉すら要らなかった。寧ろ、やはり、自分たちは血が繋がっていないじゃないか。光は兄に対して強くそう思った。

「お父さん、お父さん。ごめんなさい。でも、私、浅沼に戻りたいの。もう、高遠をやめて、そっちに戻りたい」

 光は不格好に顔を抑え、必死で涙を拭おうとした。しかし、涙ではなく言葉が遮られる。龍司の顔が頭から離れず、止めることは不可能に思えた。

 父親は光の言葉が呑み込めていないようであった。それが当然であろう。ただただ自分の幸せばかりを願っているのを咎められてもおかしくない。でも、しかし。どうして自分がこう必死に訴えているのかを、奴は理解してくれるだろうか。

「高遠じゃ、だめなの。ごめんなさい、ごめんなさい。浅沼に戻りたい。そしたら、ね。もしかしたら……。だから、あの家を出て、高遠じゃなくなりたい。ねぇ、お父さん」

 光は、あの気持ちの悪い臭いを纏った自分を忘れた訳ではなかった。弱い存在の上に立ち、その死を見下ろす自分の姿。奴に醜い姿を投影し、自分だけあるがままの姿を保つ、それこそ汚れた自分の考え。

しかし、どう強がりあがいても、今言葉にした以上の本心は、彼女には無いように思われた。

END.

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