VS.ドラガン part2
激しい魔術の衝突の余波で、エアリアとカレンは飛ばされそうになるのを必死でこらえる。
肌に伝わるビリビリとした衝撃が、両者の魔術の質の高さを物語っていた。
「これが魔族と戦うということか……!」
幾度かの魔物との戦いを経験してはいたが、目の前の戦いに比べれば児戯にも等しいと言えた。
リオンの放つ雷撃が空気を斬り裂きながらドラガンへと襲い掛かる。ニヤリと笑うドラガンはそれを苦も無く蹴散らし、夥しい数の火球を放つ。あまりの熱量で大気が揺らめき、ドラガンの姿を不明瞭なものへと変えてすらいる。
だがリオンも眉一つ動かさずに、迫る火球に猛烈な氷雪の嵐をぶつけ、そのすべてを凍てつかせる。
周囲には氷漬けとなった火球という、幻想的な光景が広がっていた。
「なるほど、確かにそれなりの覚悟は決まったようだな」
「ええ、あなたとの戦いでも遅れを取らないだけの覚悟はあります」
「それで、世界と我ら、お前はどちらを取るのだ?」
激しい魔術の応酬の中で、二人の言葉が交わされる。
世界の平和を取り仲間を救うことを諦めるか、かつての友の為平和を犠牲にしてでも果てなき戦いの中で一縷の望みを求めるか。
だが、リオンは迷うことはなかった。灼熱の熱線と共にぶつけられたドラガンの問いに、まっすぐな瞳で返す。
「僕はその両方を取ります!!」
その言葉に重ねて、雷剣の一太刀で熱線を斬り裂き霧散させる。
霧と散った己が魔術の中でドラガンは拳を握る。それは怒りだった。
「それが叶うとでも……?」
静かに、しかし猛烈な怒気を孕んだ声で聞く。
それは覚悟でもなんでもない、ただの夢想だとそう切り捨てるべく。
「ええ、この仲間と共に成し遂げてみせます」
ーーガッギィィイイイン!!!!!
リオンの言葉をかき消すように、凄まじい金属音が響き渡る。
カレンを狙ったドラガンの槍の一撃をリオンの剣が防いだ音だった。
「お前が守らなければならないお荷物と何が出来るって?」
「誰よりも頼りになる仲間だ。きっとあなたすらも超えられる」
「そうか……なら、やって見せろ」
言葉と共に撃ち込まれる猛烈な刺突の嵐を、剣と障壁で防いでいく。だが凄まじい重さの定点攻撃に剣がだんだん耐えられなくなっていく。障壁も一撃防ぐごとに砕けてしまうため張り続けることが出来ないでいた。
「くっ……やはり強い」
「それで? ここからどうやって巻き返すんだ?」
「こうだっ!!」
叫んで、リオンは眼前に迫る槍に対し、“自在術式”でなにかを出現させた。
「……?」
それは柔らかな感触で、突き出されたドラガンの一撃に纏わりついていく。
不可思議な物体に包まれた得物を抜こうと、怪訝な顔をしながらも槍を引っ張るドラガンだったが、その表情はさらに訝し気になる。
「なにっ……!?」
抜けないのだ。渾身の力を込めてもまったく動かない。いや、正確には引き抜くことが出来なかった。
押し込むことは可能なのだが、そこから一ミリでも戻すことが出来ないのだ。
奇妙な塊は、相変わらず不思議な柔らかさで宙に浮いている。それなら抜けないまでも、それごと動かせそうなものだが、そこに固定してあるかの如く微動だにしない。
「今だっ! カレン!!」
その叫びを聞いて、カレンのリュックからなにかが飛び出してきた。
「爆裂鋼、射出っス!!」
大量の“爆裂鋼”が、ドラガンへ向け撃ちだされた。




