VS.ドラガン part1
二十一番街の外れ、再開発計画が関連会社の倒産により頓挫し、中途半端となった場所。
半ばまで出来ている近代的なビル、古い路面と新しい路面が混在する道路。
人で在ることを捨てた、さりとて真なる魔族となったとも言えない今のドラガンには似合いの場所と思えた。
(奴が俺の知るリオンなら来るが……)
つまらない感傷を胸の内から追い出し、待ち人を想う。脳裏に浮かぶ屈託のない笑顔、歯を食いしばる悔しそうな顔、激しい戦いにも怯むことのない凛々しい顔、だがなにより、こびり付いて離れないのは最期の瞬間。
嘆きとも怒りともつかない複雑な表情。
リオンを裏切り命を奪ったあの瞬間の顔だった。
(……これこそつまらない感傷だ)
かぶりを振って、千年前の大罪に蓋をする。考えたところで詮無いことなのだ。今は、もう一度の大罪への覚悟を決めるだけ。
ドラガンは静かに目を閉じ、来るであろう者を待つ。
しばしの後、“起動車”の疾走音が辺りに響く。ハルトは興味を示していたので、音でもどういった類の物か分かるだろうが、生憎ドラガンには音では分からなかった。
だが、それを分かる必要は無かった。音はドラガンの目の前で止まり誰かが降りる気配がする。
瞳を開けると、そこには待ちわびた姿が映っていた。
「ふふ、やはり来たなリオン」
「ドラガンこそ、変わりませんね」
リオンに言われるがまま、人がまずいないであろう場所ということでカレンの案内でここへ来たが、本当にあの魔族がいるとは。
エアリアは驚いていた。そもそもここへ自分たちが来るかも定かではないのに、この魔族は待っていた。
リオンもいくつかの場所の候補の中から、迷うことなくこの場所を選んだ。
敵対することになっても何かしらの繋がりはある、ということだろうか。
互いに構え、睨みあう両者を見ながらそんなことを考える。カレンもこれから起こるであろうことへの緊張からか、表情を固くしている。
「わざわざここで待っていたんだ。僕の答えを聞くつもりなのでしょう?」
「ああ、我らと世界、お前はどちらを取る?」
そう、ドラガンがここでリオンを待っていた理由、それはリオンの迷いを断つことだった。
世界の平和を成すために“勇者”をはじめとした仲間たちの命をその手で奪うのか、仲間の命を一縷の望みに賭け救い出すために世界の崩壊を甘んじて受け入れるのか。
その狭間で揺れるリオンの答えを聞くために、ドラガンは待っていたのだった。
千年前も変わらない、ドラガンの癖とも言えるものだった。迷い苦しむ者を導くことはしない。その拳で以って、戦いの中で答えを出させる。
リオンもハルトも、幾度となくドラガンとは拳を交え、答えを出してきた。
今回も同じだった。たとえ敵同士となろうとも変わることのない友人のやり方にリオンは苦笑する。
「なぜ笑う?」
「いえ、あなたのやり方にバカ正直に付き合う自分もそう変わらない、と思ってね」
「そうだな、互いにな」
ーーバヂヂヂヂヂヂ!!!!!!
少ない言葉とは逆に、激しい拳のぶつかり合いで凄まじい閃光が、人気の無い街の外れに迸った。




