戦いの終わりは
ーー闇が迫る。それは仲間の姿を模り、リオンへと襲い掛かる。
「こんなものっ!!」
だが所詮は偽物、目の前で変化したものなどに惑わされるリオンではない。杖から放つ雷撃で、マリーベートの姿を模した闇を貫く。
「え……?」
しかし、リオンの瞳に映ったのは、口からどす黒い血を溢れさせ仰向けに倒れていくマリーベート本人の姿だった。
「マリーッ……!」
声を上げるがもう遅かった。荒れ狂った雷撃がマリーベートの体を引き裂いた。肉片が宙を舞い、リオンの顔を鮮血が汚していく。
「う、うわああぁああぁああ!!!!!」
狂ったような叫びを上げ、慄きと共にへたり込む。何が起きているか分からなかった。
震えながらも、仲間へと目を向ける。
そこには、
「あ……あ……わああああああぁああああ!?!?!?」
完全に制御を離れた雷撃が未だに暴れ狂い、残った仲間たちへと牙を剝いていた。肉を引き裂き、骨を砕き、その命の灯に終焉を齎す惨状が広がっていた。
「ああああぁぁぁぁああぁっぁぁぁあ!!!!!」
もはや声にもならない程の慟哭が響き渡っていたーー
「おい、リオン!! 大丈夫か!?」
なにかにうなされ、苦しそうに呻くリオンに心配そうに声をかけるエアリア。
ドラガン、と呼ばれた魔族は既に、空の遥か彼方に消えていた。後に残ったのは激しい戦闘の痕跡と虫の息となったリオンだけだった。
不慣れな回復魔術を使って応急処置はしたものの、効果があるのかはいささか疑問だった。
だが、リオン自身の魔術が自動で発動でもしたのか、エアリアのささやかな回復魔術も普段以上の効果を発揮しているように感じられた。
それでも依然として予断は許さない状況であった。苦しそうに呻くばかりで一向に目を覚まさないリオンに、エアリアだけでなくカレンもその大きな双眸に涙を浮かべて不安げな顔を向けている。
「リオンさん、大丈夫でシょうか……?」
「出来ることはしたんだ、後は彼を信じるしかないな……」
そう言いながら、汗に濡れたリオンの額をタオルで拭う。カレンのリュックの中に水が入っていて助かった。
熱く火照ったリオンの頬を拭きながら、その苦しそうにしている顔を見つめる。
まだあどけなさも残るその顔は苦痛に歪み、時折かつての仲間の名前だろうか、なにかを呼んでいるような呟きも微かに漏れている。
(どれだけの苦難にさらされて来たんだ……)
自分よりも年は下だが、遥かに壮絶な経験をしてきたであろう少年。仲間から裏切られても、それに救いの手を差し伸べようとする優しさを持ったこの少年をなんとしても助けたいと思った。
「……どうか、無事に目を覚ましてくれ」
その呟きと共にリオンの手を強く握る。カレンもそばで祈るように目を閉じている。
二人の思いが通じたのか、リオンの体が一際大きく跳ねると、凄まじい慟哭を上げながら重たい瞼を開いた。
「ああああぁぁぁぁああぁっぁぁぁあ!!!!!」




