VS.ハルトⅡ part2
壊れた壁の間から差し込む光を受け、砕けた氷の粒がキラキラと輝く。
その光を見ながら、ハルトの頬を汗が一粒伝う。
(……まさかコイツ)
その焦りを見抜いたのか、リオンがフッと笑う。
「心配するなよ。僕は大丈夫さ」
そう言って剣を構える。空気が急激に冷え、剣を包むように凍てついていく。
先ほどまでとは違う、周囲ごと凍らせる刺すような魔術ではなく。あくまで剣を覆うだけの魔術。
「氷の魔術が僕の本来の能力だって忘れたか?」
「ずっと雷の魔術ばかりだったからね。でも、ようやく魔王への執着心も捨てたって訳か」
その言葉を聞いた瞬間、リオンは剣の柄を潰しかねないほどに握りしめながら、ハルトへ斬りかかる。
「何そんなに怒っているんだよ」
「ふざけるな、僕はお前たちを助けることも諦めたつもりはない。言ったはずだ、これ以上仲間を殺らせるか、ってな」
今度はハルトが激昂する番だった。暴風と呼ぶべき風の魔術をナイフへ纏わせ、斬り結んでいる剣を弾く。その勢いのまま、螺旋状の烈風をリオンへと突き出す。
だがその暴虐の風はリオンの胴を刺し貫くその一歩手前、かざされた左手から放たれた冷気によりそれは叶わなかった。
「チッ…下らないことをいつまでも言って……」
「僕にとっては下らなくない。その為の旅だ!」
二人は旋風と雷撃の力をぶつけ合う。
激しい魔術の余波で、エアリアとカレンは後ろへ大きく飛ばされてしまう。
何とか体制を立て直したエアリアにカレンは支えられ、二人で激しい嵐の中心へと目をやる。
「リオンさん、やっぱりまだオカシイんでシょうか……?」
「どうだろうな……私たちを守ったあの眼差しはいつものリオンだと思うが……」
竜巻と雷鳴でほとんど姿が見えない仲間の安否に気を揉みながらも、頭の片隅に引っかかっていることがある。
ハルト、とか言うあの魔族はエアリアたちが討滅すべき“魔王”に近しい立場の者らしい。だが、リオンもまた“魔王”のことを知っている様子なのはどういった事なのかが分からなかった。
まさか“魔王”すらも元仲間だとでも言うつもりなのだろうか。
(……まさかな)
湧き上がる疑念に、バカバカしいと頭を振って剣を握りなおす。
今自分がすべきことは、仲間を疑うことではなく傍らの少女を守ること。やるべきことがこなせなければ騎士とは言えない。
見守ることしかできない歯痒さも感じるが、あの戦いはきっとリオンがやるべきことなのだ。
だからここは、ただ信じて待つことにした。
(……勝てよ、リオン)
「ハルト! どうして闇に魂を売ったりなんかしたんだっ!!」
「なぜ、そんなことにいつまでもこだわる!! 」
「当たり前だろ!! 僕たちは仲間だぞ! 理由を知りたいと思うのは当然だろ!」
「はんっ!! だったら言ってやるよ。俺たちは闇の力に魅入られたのさ。だからそれを拒絶するであろうアンタが邪魔だったのさ」
「嘘だ!!」
ほとんど反射的に叫んで、ハルトへと斬りかかる。だがその刃は精彩を欠き、簡単にハルトに防がれる。
「甘いな、先輩……」
その呟きと共に放たれた烈風の螺旋が、リオンの体を大きく吹き飛ばした。




