ぼくらの決着
ーーバヂヂヂヂ!!!
もう一人のリオンの言葉を、手にした雷剣で文字通り斬って捨てる。
振り下ろされた電光は凄まじい雷鳴を轟かせながら、受け止めた氷撃の刃を粉々に打ち砕く。
「たとえ、真実がどうであれ僕は僕の信じた道を進む。一時の感情に押し流されるようなことはしない!!」
リオンは叫びと共に剣を振り、雷光を二筋走らせる。放たれた雷の柱は蛇行しながら互いに交差しあい、もう一人のリオンへと突き進む。
「ふんっ!!」
だがその雷光は、気合と共に放たれた巨大な氷塊によって、潰れるようにかき消える。
もう一人のリオンはそのまま剣を幾度か振り、さらに追撃の氷塊を撃ち放つ。
「うぉおおお!!!」
怒号を上げながら手にした剣へと魔力を注ぎ炎を吹き上げると、眼前に迫る巨塊をまるで上質な肉を斬るがごとく次々と溶断していく。
凄まじい魔力の奔流に飲まれ、溶けた氷塊が瞬間的に蒸発して辺りが蒸気に覆われていく。
「はんっ!! また目くらましかい!? もう通用しないよ!!」
言葉と共に剣を突き出し魔力を込めるもう一人のリオン。すると剣を中心に水蒸気が再び凍り付いていく。
「くっ!? なんだ!?」
距離を取ろうとしたリオンの腕が、なにかに掴まれたように引っ張られた。視線を送ると、ちょうど手首の部分に氷で作られた手枷がはまり、もう一人のリオンの剣につながっていた。
周囲の空気は刺すように凍てついているのに、汗がブワッと吹き出る。
もう一人のリオンの顔が禍々しく歪んだと思った瞬間、右肩に凄まじい激痛が走った。
「がぁぁああああっ!?!?!?」
叫んでから、氷の矢を撃ち込まれたと気づいた。見ると、矢と言うにはあまりに大きな氷の塊が右肩に深々と突き刺さっていた。勢いのまま千切れ飛ばなかったのが不思議なくらいだった。
「いい声をだすじゃないか。さすがは僕といったところかな?」
嗜虐に歪んだ笑みを浮かべ、もう一人のリオンが氷の矢を自身の周りにいくつも浮かべる。
「さぁ、早く傷を治しなよ。そうしたら次を撃ち込んで上げるからさ」
「はぁ……はぁ……遊んでいる……つもりか……?」
「ボクなりの対話さ。平和的に君が肉体を明け渡すようにね」
イカれた話し合いがあったものだ。リオンは自身の中にここまで狂った思考が存在していたかと思うと傷の痛みも忘れ、空恐ろしさも覚える。
「なぜそこまで僕を奪うことにこだわる?」
「ボクの存在する意味を刻むためだ。ボクというモノが生まれた理由も分からないまま消えるのはゴメンなんだよ。だから、ボクはボクの心に従う!!」
その叫びと共に、出現させた氷の矢をすべて放つ。矢は複雑な軌道を描きながら、リオンの体を貫かんと殺到していく。
もう一人のリオンの口元がニヤリと裂ける。放たれた矢は囚われの獲物に突き刺り、その体を凍てつかせてゆく。
己が悲願を遂に叶えたのだから、笑みがこぼれるのも無理はないだろう。
「クク、ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!」
爆発したように笑いながら、氷漬けとなった元主人格へ近づいてゆく。
どのような表情を浮かべ、その意思を奪われたのか。悲しみか、悔恨か、はたまた責務から解放された安堵か。その顔を見ようと覗き込んだ瞬間、
「は? ……あ?」
もう一人のリオンが感じたのは困惑だった。次いですぐに激痛が走る。
どこに?
振り向くと痛みを与えた者、リオンが氷剣を突き出し脇腹を貫いていた。
「な……んで?」
「お前が氷の魔術を使えるなら、僕だって使えるのは当然だろ?」
氷の矢が体を貫くその瞬間、リオンは周囲の氷から身代わりの人形を作り出し、それと入れ替わったのだ。
おあつらえ向きに周りは氷で満たされていたし、まるで身を隠せと言わんばかりに氷の矢が取り囲んでいた。
だから入れ替わってももう一人のリオンは気が付かなかったのだ。目的を達成したと思い込み、警戒心も薄れていたのも追い風となった。
「クッ……ソがぁぁあああ!!」
壮絶な雄たけびを上げ、リオンへと殴りかかろうとした影だったが、その叫びは断末魔となった。
「お前に僕の目的の邪魔はさせない」
静かに呟き、自身の闇へと猛烈な吹雪を剣から放つ。
リオンの瞳に映るのは、怒りとも憎しみともつかない表情を浮かべながら砕け散る自分だった。
「……自在術式……か」




