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生命に、抗うモノ

「これを持っておくんだ」

凄まじい勢いで低下していく部屋の温度に対応するため、エアリアがカレンにカイロを手渡す。

魔力量を考えれば、一時間は持つはずだ。

「助かるっス。でも、リオンさん一体……」

カレンの疑問に、エアリアは答えることができなかった。氷の魔術を使うことは、ミチターの街での戦いで知ってはいたが、ここまで苛烈極まるとは思わなかった。

ハルト、と呼ばれた魔族はガランを出立する直前に、リオンと闘っていた者だ。リオンが言うには千年前の知り合いで、出来ることなら助けたい、と言っていたはずだ。

だが、あの戦い方では助けるなんて到底無理だろう。ハルトの方も相当の手練れのようだから、どちらかが死ぬことになるのは明白だった。



「怒りを制御出来ないって、あれではほとんど暴走じゃないか……」

何とかリオンの元へと行きたいが、彼の戦い方は独りよがりで、とてもではないが近づくことは容易ではない。不用意に近づけば、その途端に氷漬けになるのはこっちである。

それに、

「まずはこっちを何とかしないとな」

目の前に迫る、魔物への対処にも追われているため、しばらくは向こうは放置せざるを得なかった。

魔物たちは動きは鈍いが、力は元が人間とは思えないほどの膂力りょりょくだった。

それが三体で襲ってくるので、非常に厄介だった。だが、その力以上に厄介なのは、その臭いだった。

皮膚がただれ、皮下組織が所々から覗く肌から上り立つ悪臭は耐え難いものがある。

カレンも口には出さないが、顔にはしっかり『臭い』と書いてあった。



「カレン、絶対に私のそばを離れるなよ」

「ハイっス」

カレンを後ろ手に隠し、魔物と相対する。炎の魔術の出力を上げ、通常よりも距離を取る。そのまま横薙ぎに剣を振るう。炎が魔物たちを包み込み、その姿を見えなくさせる。

「これで、どうだ……!?」

だが、肉が焼け焦げる不快な臭いを上げながら、魔物はエアリアたちに迫っていく。

その内に炎をかき消し、ゆっくりとした足取りでさらに近づく。

黒く燻っていた肌も、元通りの爛れた皮膚に戻っている。



「くっ、こいつらも不死身なのか!?」

先ほど、マリーベートがつくったと、そう言っていた。ならば、ミチターであった実験体と同様の特性を備えていても不思議ではない。


ーーウアァァウウアア


不気味な唸りを上げながら、薄汚い爪で引っ掻こうと腕を伸ばす魔物だが、エアリアはそれを炎剣の一振りで斬り落とす。

痛覚も失っているのか、ほとんど反応せずに斬り落とされた腕を拾い上げる。

そして、そのまま切断面同士を合わせるとシュウシュウと、異音を上げながらくっついた。


「ヒエェ……なんて奴らっスか……」

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