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それは、魔物か

駆け寄ったリオンに、自嘲気味にエアリアが笑いかける。

「なに言ってるんですか!? すぐに回復します」

杖から癒しの光が灯り、エアリアの体を包み込む。苦しそうだった表情が緩み、大きなため息を一つ吐く。

「すまないな、助かる」



だが、そんな大きな隙を魔物が放っておく訳もない。二人へ向かって火球を放ちながら、さらに二の手でカレンへも尻尾から閃光を放つ。

「させると思うか?」

しかし、なんの手も無しにリオンが回復に走るような愚策を犯すはずが無かった。

向かって来る火球は障壁で逸らし、カレンに向かう閃光には、同じ閃光の魔術で相殺させ防ぐ。

「早くこっちへ!!」

叫んで、カレンを呼び寄せると自身は杖から剣に持ち替え、魔物へと向き合う。大きさはそれほどでもないが、体躯に見合わぬ馬力を持っている為、ぶつかり合うのは危険。かといって杖を使った遠距離攻撃に切り替えても、複数を狙う攻撃にさらされて守りに意識を割かれてしまう。



「それならっ!」

リオンは勢いよく魔物へと駆け出す。魔物も火球を放ちながら、その体をリオンへと突っ込ませる。

雷の魔術を纏わせた剣で、火球を切り裂くと同時に、迫ってくる魔物へと雷の斬撃を飛ばす。

つんのめりながらも、すんでのところで雷の刃を躱す魔物だったが、そんなことは想定の内、

「畳みかけるっ!!」

エアリアが炎の斬撃を、雷の斬撃に重ねるように放つ。だが、属性の違う魔術の為、弾いてしまう。

炎の斬撃はあらぬ方向へと飛んで行ってしまうが、狙いはそれではない。

本命は、同じように弾かれた雷の斬撃。

リオンの攻撃を躱すため、身をよじったことで遠目でも露わになった、その尻尾。

弾いた雷の斬撃が揺れる尻尾を、その体から自由にする。


ーーそこそこやるようだな


それは、確かに人の言語だった。今まで低い唸り声を上げるのみだった魔物が、唐突に喋りだしたのだ。

ガサガサとした不快な声で、人間の発する声とはまるで違うものだった。

「……本当に、人の言葉を喋るんだな」

リオンは未だ半信半疑だったが、実際に目の当たりにしてしまえば信じざるを得ない。


ーー我ほどの存在なら、矮小なる人の言語を解することなど造作もない


随分と鼻につく喋り方をする奴だ、リオンは率直にそう思った。人を心底下に見ているかのような、

そんな印象を与えるような口調。

千年前の魔物も、人を下に見てはいたが、ここまで小ばかにしたような喋り方はしなかった。

そもそも、実力差が大きいのでそんな考えにもならないのだ。人が小さな虫に対して、尊大な態度を取らないのと同じように。



だから、

「まるで、人間みたいな口の聞き方だな」

エアリアが疑問を口にする。それはリオンも同じだった。

この時代の者であっても拭い切れない違和感、人間でもなければ、こんな話し方はしないであろう。


ーー自らの無知を、自身の知識で補填するその行為こそ、まさに愚者。嘆かわしきことだ


それでも、人をイラつかせるようなその態度を崩すことはない。

「そうか、それなら、もう貴様と話すことは無い!」


もうたくさんだった。

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