廃ビル探索へ
少々薄気味の悪い動きで、廃ビルへと進んでいき、割れた窓から続々と侵入していく“探求虫”。
その姿は、まさに虫だった。エアリアは蠢くその姿に、目を向けようともしない。
「さぁ、“探求虫”の映像がコレに送られて来るっスよ」
そう言って、二つ折りの“魔道通信機”の下部分、カレンはキーボードと呼んでいた方を、忙しなく操作する。
二人もそれを覗き込むと、上の画面に送られて来た映像が映し出される。あちこちに分散しているので、様々な映像がそこには映っていた。
「ほう、結構鮮明に映るものだな」
「ええ、レンズ選択は結構こだわりまシたから」
画面に集中しているのか、その後の、なら動きとかにもこだわれば……というエアリアの言葉は、カレンの耳には届いていないようだった。
廃ビルの中は明かりもなく、非常に暗かったが暗視機能と呼ばれたもので、映る映像は問題なく見ることが出来た。
「魔物の姿は中々確認出来ないな。少しでも正体の手掛かりが欲しいが……」
「そうでスねぇ……アッ!?」
送られてくる映像から情報を集めていたその時、映像の一つが突如途切れ、そこには砂嵐のような映像が流れるだけとなった。
「カレン、潰された箇所の特定は出来るか?」
「ハイ! ……三階の南側通路のようでス! 他の“探求虫”を向かわせます!」
即座にキーボードを叩き、映像が途切れた場所の映像を送らせる。場所が近づくと慎重に操作を行い“探求虫”が潰された、まさにその部分をレンズが捉える。
「センサーに反応したものを自動で攻撃する、ブービートラップっスね……」
「殺傷能力はどのくらいか分かるかい?」
「見たところ、そこまでは高くはなさそうでスね」
「恐らく、このビルに元々備え付けられた警備システムを改造しているんだろう。この形は見覚えがある」
カレンとエアリアが映像から、罠の性能を予測する。口ぶりからはこちらでも十分対処可能のようだった。
「ここ以外にも罠があるかもしれない、なるべく場所は把握しておきたいな」
いくら対処が可能とは言っても、場所が割れているか否かによって、その難度もだいぶ変わってくる。
「ええ“探求虫”の機能を使いまシょう。魔力の探知に重点を置いたモードがありまス」
「最初から使えば良かったんじゃ……」
「魔力を通常よりも多く消費するので稼働時間が少なくなるんでス……」
答えながら、キーボードを操作すると画面に流れる映像が一際暗くなりほとんど視認出来なくなる。
「これで分かるのか?」
「まぁ、見ていてくだサいよ」
カレンがさらにキーボードを叩くと、暗かった映像の片隅に赤い点が映った。
「なるほど、魔力を色で表示させるのか。小さいが性能は、いいな……」
若干含みのある言い方をするエアリアだったが、画面に映る赤い点と、実際の廃ビルとを見比べ、場所の確認をしている。
「アッ!? なんだ!?」
その時、カレンの叫びが響き渡る。今まで映像を送り続けていた“探求虫”が次々破壊され、映像がすべて途切れたのだ。
「罠にかかったのか?」
「そのようですが、どうも動きが変でスね……“探求虫”の場所をピンポイントで狙ったようです」
カレンのその言葉の意味するものそれは、
「中の魔物にバレたか……?」
そう“探求虫”にも魔力は使われている。それを魔物に察知されたのだろう。
魔物が人間の警備システムを使うのも不思議な話だが、それを探る手段は一つだった。
「乗り込みましょう。向こうに先に動かれると不利です」




