カレンの探索手段
“貨物起動車”が、一つの建物の前で停止する。
そこは、周囲からは死角となり、距離はそれほど離れていないのに隔絶されたような、雰囲気を感じさせた。
「これが話に出てきた廃ビルか……」
見上げたそれは、所々がヒビ割れており、不気味な威容があった。
「まずは、周囲を探ろう」
“貨物起動車”をカギへと戻したエアリアが、廃ビルの裏手へと回ろうとする。
罠があるとのことなので、真正面から入っていくのは出来れば避けたい。
「ならイイ物を持ってきたっス」
そう言いながら、カレンが背中の大荷物から、小さな鈍い銀色の球体をいくつか取り出す。
球体にはガラスがはめ込まれている部分があり、リオンはなぜか三番街で見た監視システムを思い出した。
「これは“探求虫”って言って、危険な場所や、入り込めない隙間の探索を行う物っス」
「へぇ、これはとても便利じゃないか。これは売れるだろう」
エアリアが褒めながら、地面に転がる“探求虫”と呼ばれた球体の一つを手に取る。
やはり、国を守護する騎士であるからか、情報収集を行うことの出来る物には強い興味を惹かれるのだろう。
「いえ、この国には監視システムが行き届いていまスのでそれほどは……」
「ガランなら引く手あまたなんだがなぁ」
エアリアが意外そうに言いながら、“探求虫”を元に戻す。
「で、これはどう使うんだい?」
リオンがの質問に、カレンが転がる一つを手に取り差し出す。
「これに、魔力を込めて欲しいっス」
「これに? まぁ、構わないけど……」
リオンは手渡されたそれに、言われるがまま魔力を込める。横では同じようにエアリアも魔力を込めている。
「うひゃぁああ!?」
その時、リオンの横で今まで聞いたことのないような情けない声が響いた。リオンが振り向くと、声の主は手にしていた“探求虫”を放り出していた。
放り出されたそれは、先ほどまでの球形ではなく、四本の細い触手を足のようにくねらせ、カレンの足元をうろついていた。
リオンの手にしていた“探求虫”も同様に、触手を伸ばしリオンの手から離れると、カレンの元へと歩き出した。
「んんっ! それは一体どうなっているんだ?」
エアリアがほんの少しだけ顔を赤らめながら、カレンの足元をうろつくモノを気味悪そうに見ている。
リオンも、蠢くそれにあまりいい感情は抱かなかった。
「魔力を込めると、こうやって自動で動いて周囲の探索を行うっス。今はすべてウチの指示で動くようにセットしてあるっス」
「そ、そうなのか。まさか残り全部もやるのか?」
エアリアはこういった動きをするものが苦手なのか、乗り気ではなさそうに“探求虫”を見ている。
「後は、僕がやっておきましょう。エアリアさんは、周囲の警戒をお願いします」
「そ、そうか、役割分担は大事だからな。うん」
余程イヤだったのか苦笑交じりに提案したリオンに、安堵したように呟くエアリア。
リオンが、残りの“探求虫”に魔力を込めると、カレンは“魔道通信機”を使って指示を出す。
「さぁ、この廃ビルの調査を行うっス。行くっスよ!」
その言葉と共に、一斉に“探求虫”の群れが走り出した。
リオンはそれを眺めながら、
(きっと、あの動きで売れなかったんだろうな……)
そんなことを考えていた。




