危険な謎
両親は“魔道通信機”を持ってくると、そこへこの街の地図を表示し、魔物がやってくる場所、いや、根城にしている場所を指示した。
「あの魔物は、この地域の廃ビルを住処にしています。攻め込もうにも、罠が多く手が出せないと聞きます」
「魔物がこの街に住み着いている!? そんなことあり得ない!」
リオンが思わず強い口調で否定してしまう。カレンの両親は、その表情に僅かに怯えたような様子だった。
「リオンさん、どうか落ち着いて欲しいっス……」
「あ……すみません。ちょっと引っかかって……」
カレンが取りなしてくれて、リオンは申し訳なさそうに腰掛ける。
街に住み着く魔物。
それはリオンの常識の中では絶対にあり得ない存在だった。街を破壊し、そこに暮らす人々を殺戮しつくす。それが、リオンにとっての魔物だった。
「あの、魔物が街に住み着くなんて、今は普通なんですか」
特に疑問を抱いていない様子で話を聞いていたエアリアに、リオンは小声で尋ねる。
「いや、聞いたことはないが、そういった種類もいるんだろうな」
魔物について詳しくないが故に、それほど疑問を抱かずにいるようだった。カレンも言わずもがなだった。
「そんなに、魔物が街に住み着くことが不自然なんスか?」
「廃墟ならあり得たけどね。人がいる場所にいることはないはずなんだ……」
まるで、自分に言い聞かせるように、リオンはカレンの言葉に答える。正直、この時代にやってきてからは常識が通用しないことばかりだった。なので、魔物が不可解な行動を取っていても、おかしくはない。
大体“魔王”からして、元人間なのだ。その影響で魔物の生態も大きく様変わりしているかもしれない。それはあまり考えたくはないことではあるが。
「とにかく、この廃ビルへ行ってみよう。ご両親、情報を感謝する。必ず、この街に不利益にならぬよう約束する」
「いえ、お役に立てたのなら幸いでス。頑張ってくだサい」
「どうかお気を付けください。お二人に何かあれば娘も悲しみます」
「何言ってるんスか。ウチも一緒についていくっス」
両親の激励の言葉に、カレンが驚くべき言葉を発した。
「何言ってんだ!? カレンを連れていけるわけないだろ!」
「そうだ! あまりに危険すぎる、君はここで待つんだ」
二人は口をそろえて、カレンの言葉に反対する。それは当然でもあるが。ズブの素人のカレンを魔物討伐に連れていくなどあり得なかった。それでなくとも不可解な点の多い案件なのだ。何が起こるか分からない。
カレンの両親も驚いた表情のまま固まっている。
「でも、ウチがいた方が、魔物を退治した時の言い訳もしやすいのでは?」
「う、それは……」
なかなか痛いところをついてくる。目立たないように行動をするといっても、他国の人間のみでは厳しい部分もあるだろう。だが、カレンがいるならばそのあたりの問題も少なくなる。
「どうしますか?」
「だめだ。いくら何でも、ご両親の前で危険な魔物討伐に連れていくなどいえる訳がない」
エアリアの態度は頑なだった。確かに、自分の娘を危険と分かっていて送り出す親などいないだろう。
事実、両親はエアリアの言葉に安堵したように、胸をなでおろしている。
だが、カレンはなおも食い下がった。
「なら、二人を説得したら連れて行ってくれまスね?」




