不可解なこと
カレンの両親は、険しい顔つきでリオンとエアリアの顔を見る。その目つきは、娘が連れてきた者への遠慮もあったが、やはり他の店の者と同様に、訝しむようなものであった。
「そちらの女性は、ガランの騎士様じゃあないか、そんな方に頼む訳には……」
カレンの父親が言い淀むが、それをカレンが力強い口調で制す。
「なに言ってるんスか! このままでいてもこの国が助けてくれる訳はないっス!」
「僕たち、がこの街を救ったという事実が不都合なら、この街の人間のやったことにしてもらって構いません」
カレンの言葉にリオンも続き、エアリアも同様に頷いている。
「えぇ……しかし、それでは報酬などが出まセんが……」
カレンの母親は、驚いたように言う。この街の住人である以上、カレンの親とはいえ、やはり自身の儲けを考えていない行動を信じられないようだった。この辺はカレンが、この国の住人なのに特異だということだろう。
「構わない、私たちは報酬目的の旅ではない。魔物を討伐する、それ自体が目的とも言えるからな」
「うぅむ、それならばこちらとしては有り難いが……」
「そうねぇ、せっかくカレンが連れてきて下さったんだシ……」
未だ、俄かには信じられないようではあるが、何とか分かってくれたのか、ポツポツと魔物の情報を話してくれた。
曰く、魔物は四足歩行で、赤褐色の毛皮に覆われた大型の種類らしかった。口からは火球を吐き出し、剛毛の外皮は自警団の攻撃を一切受け付けず、あっという間に返り討ちにしていったという。
そこまでなら、通常の魔物とそこまで変わらない習性だったが、リオンにとってどうしても腑に落ちない点があった。
それは、
「魔物が、『金目の物を差し出せば、破壊活動は行わない』って言ったのです」
カレンの両親が言ったその言葉だった。
「それは、魔物自身の口で“喋った”のですか?」
金品の略奪行為も不自然だが、一番疑問だったのは、魔物が口を聞いたことだった。
「リオン、それがどうかしたのか?」
「ええ、どう考えてもおかしいですね。話を聞く限りでは低級の魔物でしょうが、それならば人語を解すことはないんです」
そう、千年前なら、人の言葉を話す魔物はすべて、魔王軍直属の上級魔物だった。街を突発的に襲撃するような低級の魔物が人語を話したことは、一度でもなかった。
まぁ、千年の間に進化した、と言われればそれまでではあるのだが。
「なんにしても、この街の住人が苦しんでいることは事実だ。正体を考えるのは後にしよう」
エアリアの言葉にリオンも頷く。正体がどんなものであれ、苦しむ者がいるのであるなら、それを助けることに変わりはない。どうせ、今回の件に納得していないのはリオン一人なのだ。これ以上、時間を取るわけにもいかない。
「それで、魔物はどこからやってくるのですか?」
リオンたちは、一番欲している情報を両親へと尋ねた。




