帰省
その建物は、少し古ぼけた薬品販売の小さな店だった。
「また、薬屋か……どうやって儲けを出しているんだ?」
リオンは、あまりの薬屋の多さに、思わず呟く。ここまで多いと明らかに売り上げを食い合ってしまい、共倒れになりそうなものだった。
「ああ、実店舗の販売はそこまで重要ではないんス。他の街への卸売りが主な販路なんスよ」
“貨物起動車”から自身の荷物を降ろしながら、カレンが答える。
確かに、思い返してみれば、今までの店も客自体はそこまで多く入ってはいなかった。三番街でも、街自体の人通りは多かったが、店舗への出入りはそこまで多くなかったように感じた。
「なるほどね……商売の仕方も変わるものだな」
不思議そうな顔を向けるカレンに気が付くことなく、リオンは独りごちた。
千年前は、街での商売といえば店舗での実売がほぼすべてで、卸売りは専門の業者が行っていた。
「この国特有のやり方だけどな。四つの地域に土地を切り分け、その中で主流となる物を流通しあうやり方を取っているんだ」
エアリアが“貨物起動車”をカギに戻しながら説明をする。
リオンはその言葉に、なるほどと頷いていた。カレンが言っていた、『この街で、魔道具売りが食べていけない』、その意味が分かった。恐らく、一番街、二番街が魔道具を主流とする街なのだろう。そして三番街は、薬品の販売によってトムスに支配されている。その街で、薬品以外の製品など、取り扱うのも難しいのだろう。事実、カレンの販売していた物はどれも手作りの品だったようだし、薬品以外の商品の販路は、トムスが独占しているのだろう。
「年端もいかないのに、結構綱渡りなことをしていたんだな……」
相当な苦労をしていたであろうカレンに、リオンは素直に凄いと思う。自分よりも年下な女の子が、そこまでの苦労をしてでも、何かをしようと頑張ることに尊敬していた。
「あの……ウチのこと、いくつに思っているんスか?」
「え? 多分、十三、四だろ?」
「ウチは二十二っス!!」
「えぇっ!?」
衝撃の返答だった。
リオンは素っ頓狂な声を上げ、エアリアでさえも驚きのあまりに、声を失いカレンを見つめている。
「な、なんスか? そのシツレイな反応は……」
「いや、どう見ても子供だから……」
「済まない、私もてっきり十代だと……まさか、私の二つ下だとは」
二人の言葉に、カレンは呆れながらも苦笑した。
「ハハ……まぁ、慣れっこではありまスがね……」
三人はそんな話をしながら、ようやくカレンの実家の門をくぐった。
中には、カレンによく似た顔つきの女性と、柔和な顔つきの男性が棚の整理を行っていた。
「あら? いらっしゃい、何かお探しでスか?」
カレンに似た顔つきの女性、恐らく母親がこちらに気づき、カレンのそれと同じような口調で声をかけてくれる。
「うそ……カレンじゃない!?」
「え!? ……おお、カレン! 良く帰ったなぁ!」
二人は、すぐさまカレンに気が付くと顔を綻ばせて迎えた。
「あ……その……ただいまっス……」
カレンも嬉しいのだろうが、気恥ずかしいのか、普段の明るさは鳴りを潜め、しどろもどろになっていた。
「なに、家族の前で照れてるのよ。そちらはお友達?」
「あ、そうだ、この方たちは、この街の魔物討伐を請け負ってくれた方々っス」
やはりと言うべきか、その言葉を聞いた途端、二人の表情がサッと変わった。
「え……魔物討伐……?」




