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休息

エアリアの言葉に王女の顔は今までで一番の笑顔に輝いた。

「ありがとう、エアリア。リオン、貴殿もそれでよろしいですか?」



二人のやり取りに口を差し挟む余裕もなく蚊帳の外気味だったリオンは王女の言葉に頷く。

「はい、僕にとってはとてもありがたい提案です」

「そうですか、では今日はこれまでとします。二人ともご苦労でした。十分休養をとり準備ができたら討伐の任に着いてください」

そう言って席を立ち、謁見の間をあとにする王女をエアリアとリオンは来たときと同じように跪き見送った。

時間にすればそこまで長い時間ではなかったはずなのに、リオンはどっと疲れが襲って来たのを全身で感じた。思っていたよりも王女への謁見に緊張していたようだった。

「ご苦労様、思いもかけぬことにはなったがとりあえず、今日はこちらで宿を取ってあるからもう休んでくれ。 詳しい話は明日行おう」

リオンの疲労を慮ってくれたのかエアリアが休息を促してくれたので、リオンはそれに甘えることにした。

「ありがとうございます。ではまた明日に。場所はこの城でいいですか?」

「いや、こちらから迎えにいこう。色々準備したいこともあるし、動きながらの方が都合がいい」



リオンは、エアリアの案内を受けてやって来た宿でようやく落ち着くことができた。今日だけで色々なことがあった、ありすぎたと言っても過言ではないかもしれない。

「僕はこれからどうなってしまうんだろう」

洗面台の鏡に映る自分を見つめ独りごちる。そこにはいつもと変わらぬ“リオン”が映っていたが、今の彼はもはや違う“リオン”とも言えるものだった。

頭で念じ、手をかざせば水が、食べ物が、さらには金貨や銀貨までもが現れてくる。それはマユリから受け取った“自在術式マルチスキル”の力だった。明らかに世界の理を無視しているこの力が自分の自由になる。その事実にリオンはやはり自分は変わってしまったと胸の奥がチリチリと痛んだ。



だが、彼に弱音をはいている暇などなかった。同じように変わってしまった友が、


『世界を脅かしている』


それを許せないから、千年前も友と、辛く苦しい旅をしてきたのである。

今日、ほんの少し見ただけでも、世界は邪悪に蝕まれていると感じたのだ。それをかつての友が行っているなど、リオンには到底許せる話ではなかった。

(たとえ、この手で皆の命を奪ってしまうことになっても……)


悲痛な決意を痛む胸に秘め、リオンは少し横になる。千年前より遥かに柔らかいベッドだがその柔らかさにそこまでも沈んで行きそうな気分になりながら彼は、意識を微睡みの中へと落としていったーー

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