暗き街 part3
「何で、カレンが謝るんだ?」
リオンは、言ってから後悔した。明らかにイラついた口調になってしまった。別にカレンにイラついた訳ではないし、先ほどの店主の態度が原因でもない。だが、それについてカレンが謝ることはない。そうさせてしまう自分にイラついたのだ。
「あ、いえ…きっと気の悪いことを言われたでシょうから…」
そんなリオンの内心など伝わるはずもなく、カレンは委縮した様子で唇を動かす。俯き、わずかに除く瞳にはうっすらと涙が見えた。
「気にしてないよ。多分、あの店主の言うこと分からなくもないから」
「この街、というよりこの国は金がすべてっスからね、他国の方に手を借りるなんて、ありえないことなんスよ」
「なら、自国で何とかしないのか?」
「トムス薬技研支社の人間が、評価が下がるのを恐れて本社に報告をしていないんでシょう」
「自己保身か…情けない限りだな」
三人は話ながら、“貨物起動車”に乗り込む。ここで手を引くことは、考えていなかった。魔物を討伐した後は、この街の人間の誰かに手柄を押し付ければいいだけなのだ。リオンたちは別に、誰かに賞賛を受けたいわけではない、魔物の被害を無くしたいのだ。
(……まぁ、自己満足と言われればそうなんだがな)
道路を走る“貨物起動車”から見える景色を眺めながら、リオンは自嘲気味に笑う。
そうしながらも、そういえばと、思う。
「これからどこへ向かうんですか?」
今、必要なことは手がかりを見つけることだった。むやみやたらに動いたところで、解決の糸口が見つかるはずもない。下手をすれば、薬技研支社に嗅ぎつけられるかもしれない。
「とりあえず、ウチの家に行きまシょう。流石に両親には協力してもらいまスから」
カレンがハンドルを操作しながら答える。言葉とは裏腹に、その表情には不安の色が浮かんでいた。
本当に協力をしてもらえるのか、内心不安なのだろう。
手掛かりは確かに欲しいが、リオンはそこまで期待はしていなかった。わずかばかりではあるが、この国に身を置いて分かる。金に支配されているこの国で、よそ者に協力をする者はほぼいないだろう。
しかも、ほとんど得体のしれない自分ならまだしも、エアリアはガランの騎士団長だ。そんな人間に、好き好んで協力をしてくれるとは思えなかった。
「あまり、無理しないでくれな」
ハイ、と答え、カレンはハンドルを切り、路地へ入っていく。そこは今までよりも輪をかけて、発展が送れているように感じられた。立ち並ぶ建物もまばらで、古めかしいものと、目新しいものが入り混じっているようだった。
「この辺は、再開発の対象区域なんスよ。あ、ここがウチの実家っス」
その言葉とともに、カレンが“貨物起動車”を止めた。




