暗き街 part1
たどり着いた二十一番街は確かに、先ほどの三番街と比べれば田舎と呼ばれるべき場所なのだろう。
だが、リオンの記憶の中の田舎町と比べれば、十二分に発展していると言えた。
しかし、それだけの街ではあるが、不可解なことが一つあった。
「あんまり人は多くないんだな」
街の発展具合に比べ、出歩いている人の数が少なかった。さらに言えば、その少ない人々の表情も暗く沈んでいた。カレンが特別明るい性格というのもあるのだろうが、それを差し引いても随分陰鬱とした雰囲気の街だった。
「ここが、本当にカレンの故郷なのか?」
その為、浮かんでくる疑問をカレンにぶつけるが、当の彼女も困惑したような表情をしていた。
「いえ、普段はもっと人出もありまスし、こんなに暗い雰囲気ってことはないんでスが……」
そう言って、辺りをキョロキョロと見回すが、明るい雰囲気の人も、場所も見つからずに単なる徒労に終わる。
店舗もいくつか並んでいるが、そのすべてが空いているのか、否かの判断も出来かねないほどになってしまっている。
「とりあえず話を聞いてみるっス」
三人は手近な店の中を覗き、人がいるのを確認すると中へと入っていった。そこは、様々な薬品を販売している店だった。
リオンは、棚に並ぶ商品のいくつかを眺めてみるが、ほとんど何に使う物なのかも分からない品ばかりだった。その一つを手に取ってみると、
『夜の自信を取り戻したい貴方に!!』
なんのことやらさっぱりなリオンは、それを元の棚に戻し二人のもとへ進んだ。
「……なんですか?」
エアリアが、こちらを不機嫌そうな顔で見てくるので聞いてみるが、
「別に……」
それだけ言って、そっぽを向いてしまう。心なしか距離を取られているようでもある。
(何なんだ……一体?)
いささかの理不尽さを感じながらも、気を取り直して店主とカレンの話に耳を傾ける。
「それで、どうしてこんなに寂れているんスか?」
「魔物だよ……定期的にこの街から金品を奪っていくんだ」
やつれきった顔で店主の放った言葉は、三人に大きな衝撃を与えた。特にカレンのショックは大きかった。自分の故郷が魔物に襲われていて、苦しんでいるなど知る由もなかったのだから無理もないだろうが。
リオンもリオンで、別のショックを受けていた。ショック、と言うと若干の語弊はあるが、それくらいの衝撃はあった。魔物が人間の金品を奪っていく。それも定期的に。
明らかに千年前とは違う習性だった。一応、貴金属や宝石類を集める種類の魔物がいたにはいたが、定期的に奪うことはなかったし、人間を生かしておくこともなかった。
「三週間くらい前かな、突然やって来て、あちこちの店から現金や金目の物を奪っていった」
「この街の自警団は?」
「敵うはずないさ。最初の襲撃でほとんどが大ケガで病院送りさ」
「次に来たのはいつっスか?」
「ちょうど一週間後だった。最初の襲撃とは違う店がやられてね。その次がちょうど昨日さ」
また違う店がやられたよ、そう付け加え、店主は疲れ切ったようにため息をつく。
三人は店を後にし、顔を見合わせる。カレンの表情から何を言いたいのか、二人は聞くまでもなかった。
「魔物がどこから来るのか探らないとな」
だからリオンは迷わずそう言った。




