表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/265

その男、元老院議員 part4

「お、おい、リオン……」

唐突にトムスへと殴りかかり、怪我すらも意に介そうともしないリオンに、流石のエアリアも困惑を隠せずにいる。

確かにトムスの行いは許されるものではないが、ここまで彼が我を忘れるのは意外だった。

正直、リオンは『命』というものをもう少しドライな考えで捉えているものと思っていた為、ここまで彼の強い怒りを目の当たりにすると自分の怒りの矛先がなくなってしまう。


カレンに至っては、自分の説明がリオンにあそこまでさせたと思っているのか絶句して行く末を呆然と眺めるのみだった。


「なぜ、そこまで激昂する? 私は、むしろ命を大切にしていると思うが?」

だが、トムスはそんなことを言って、リオンの感情をさらに逆撫でする。意外ではあるが、この男がここまで余裕を失うのは、好都合だった。

得体のしれない『何か』を感じるが、こうなってしまうなら、主導権はこちらにある。冷静さを失わせ続ければ、後は勝手に自滅する。

幸いなことに、向こうは命を奪うことに、強い忌避感情も抱いているようである。バリアも破られる様子は無い。

残った騎士とおまけの女など、所詮は小娘。こちらのペースで進めることなど容易い事だった。



「ふざけるなよ……どこが命を大切にしている、だ。貴様のやっていることは、罪だ!!」

流れる、いや、力を込めているため、吹き出ると言った方が正しい程の血を流しながらも、リオンはバリアに拳を叩きつけることをやめようとはしない。どうせ、回復魔術で治せるのだし、今は、内に渦巻くこの怒りにすべてを委ねていたかった。

この感情も“自在術式マルチスキル”によるものなのか、自身からのみ湧き上がるものか、リオンには判別が付かなかった。

だけど、そんなことはどうでもよかった。ただ目の前の男に拳を叩きつけたい。自分や、“勇者”、仲間たちが護りたかった世界を見下すような、この男だけは許せなかった。



「普通の者にこの街を護らせていたら、お前たちは今日だけで、何人の命を奪った? 私はその命の代わりとして、クローンを使っているのだ」

「クローンは命では無いと、そう言うつもりか?」

「ボタン一つで大量に造られるモノだ。少なくとも生きるための命では無い」

まともではない。リオンは率直にそう思った。目の前の男は、自分が罪を犯していると一切考えてはいない。この街の住人を守っていると、本気で考えている。

しかし、それも正義感からくるものでは無いことは、リオンにも分かる。そういった感情で動く男では決してない。

住人も、自らの私腹を肥やすための物でしかないのだろう。そういった傲りが、言葉の端々から伝わる。

だから、

「……もういい、貴様には何を言っても無駄だ」

そう言って拳を下す。

急速に怒りの炎が消えていくのを、ハッキリと感じる。いや、怒り自体はある。だが、それ以上に、失望がそれを上回っていくのだ。

この男と自分は、住む世界が違う。こんな下卑た思想の持ち主の為に怪我をした事実すら恥じてしまう。それほどの失望が、今のリオンの心を満たしていた。



「ふん、なら早いとここから、立ち去ってもらおうか?」

失望されているのはトムスも分かったが、いちいち腹を立てることでもない。追い出すきっかけがあるなら、それを利用する手はない。



「最後に一つだけいいか?」

正直、リオンも一刻も早く去りたかったが、これだけは聞かなくてはならない。その為にここまで来たのだから。

「本当に最後だぞ」

その返答にリオンは、ゆっくりと口を開く。


「貴様は、魔族……いや、魔王を怖いと思うか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ