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マユリ、邂逅 part2

「どういうことだ?」

人の持つ無限の可能性。

それは分かるがマユリにはその可能性がないというのか。様々なことができるしよほど可能性に満ちているようにリオンは思う。

「私には、可能性を形にするための想像力がないのです」

マユリは苦々しげに呟く。自分自身で“自在術式マルチスキル”を扱えないことがプライドを傷つけられているようであった。

「私は、世界をより良い形へと導くことしか出来ません。それを可能にするのは人にしかできないのです。」



人だけが持つ可能性は確かに、この時代での文明の発展度合いをみれば納得のいくものだった。

自らに宿る力の意味を少し理解し、リオンはこぶしを握る。

「分かった、正直なところ僕には過ぎた力だが今はこれに頼るしかない」

元々リオンは回復師として旅をしていた。戦いはあまり得意ではないため、“自在術式マルチスキル”が無ければこの先の戦いを生き抜くことは出来ないだろう。

それに、魔族となった仲間を救う道はこの力に賭けるしかないのだ。



だが、

「そうだ、最後に一つ聞きたい」

気がかりなことがあった。

「なんですの?」

マユリは何の気なしに返事をする。

「仲間と会ったとき、僕の心はそいつへの殺意でいっぱいになった。それもこの力によるものか?」

だが、つまらなそうな顔でマユリはリオンを見つめる。

「それで?どう答えて欲しいんですの?」

まるで、リオンの心の内を見透かすかのような瞳で。

「何が言いたい……」

リオンは、そんなマユリの瞳をまっすぐ見ることができずについ目を逸らしてしまう。

自分で聞いたことだが、正しい答えを聞いてしまったらショックを受けるのはリオン自身が一番分かっていた。



だから、マユリはそんなリオンの逸らされた顔を自身へと向けて告げる。

「確かに自在術式マルチスキルがあなたの中の感情を増大させてはいますわ」

リオンが聞きたい答えをマユリは答える。その言葉に含みを持たせて。

「ですが、あなた自身にお仲間への怒りや殺意が無ければ力は働きません。ゼロからでは何も生まれませんもの」

動揺したように、リオンは後ずさる。それは聞きたい答えではなかった。裏切られたとはいえ、救いたいと思っている仲間に殺意を抱く、それもほとんど無意識の内に。

「そう……か」

絞り出すように一言だけ呟き俯く。

仲間への殺意があっただけではない、それを“自在術式マルチスキル”だけのせいにしようとした自分の弱さにショックを受けていたのだ。



魔王を倒すための旅を経て、随分強くなったと思っていた。物理的に、だけではなく心も、と思っていたが結局はこれだった。

認めたくないことは得体のしれない力のせいにして目を背けようとする。

「はは…… 情けないな……」

だが、そんなリオンを見てマユリは優しく微笑みかける。

「逆に考えたらいいんじゃありませんの?」

何を言い出すのだろう?

リオンは顔を上げる。

「その心を弱さだと思うのなら、ここから強くなればいいんですのよ」

マユリは微笑みを絶やさずに言葉を紡ぐ。

「自身の弱さを認め、そこから成長できるのが人ですもの。あなたもそうでは無くて?」



(そうだ)

リオンは思い出す。

かつて“勇者”も似たようなことを言っていた。


ーー弱いことはダメじゃない、それを認めず成長しないのがダメなんだ。


リオンは顔を上げる。

少しだけ強さを増した心とともに。



マユリの背にはまたあの門が開いている。

リオンが旅立った時のあの門が。

「さあ、そろそろお行きなさい」


言葉を受けリオンは門をくぐる。かつての仲間を救い、世界に平和を取り戻すため。

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