表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/265

マユリ、邂逅 part1

目が覚めるとそこは見知った空間だった。

何もない真っ白な空間、リオンがマユリと初めて会った場所だった。

「あれ……? なんでここに来たんだ?」

困惑し辺りを見回すリオン。そこへ不意に声が聞こえてきた。

「まったく…… あなたは一体何を考えているのですか?」

その声の主は呆れたように言いながら現れた。

「マユリ……」

「人の身で星の心(アカシックレコード)に接続しようとするだなんて、あなた死にたいんですの?」

リオンには言われていることの意味が分からなかった。

「僕はただ、知りたいことがあっただけだ。そんなに危険な場所なのか?」

「そもそもあれは場所、ではありません。この時空すべての叡智が集約された情報集積体なのです」

リオンにはますます訳が分からなかった。

「それの何が危険なんだ? ただ知識が得られるだけなんだろ?」



マユリはわざとらしく大きなため息をついて首を振る。

「はぁ…… いいですか、星の心(アカシックレコード)は単に知識が得られる、というだけではないのです。すべての叡智の奔流をその身に取り込むのと同じことなのです。人の身でそれを行えば待っているのは存在の消失ですのよ」

説明してくれてはいるがどことなく責めるような言い回しに、流石のリオンもムッとして言い返す。

「そうは言っても、そもそもそっちがほとんど何も教えてくれずに送り出したせいじゃないか」

だが、そんなリオンの言葉にもマユリは特に悪びれもせず、

「あら、聞かれなかったからですわ。なにを聞きたいんですの?」

そう普通に返されてしまってはリオンも怒りの向く先を失ってしまう。



「な、なんて言い草だ…… まぁいい、勇……いや、魔王の侵攻が異常に遅いのはなぜなんだ?」

「遅い?」

リオンの言葉にキョトンとしてマユリは聞き返す。

「遅いさ、僕が戦った魔王は三十年ほどで世界の半分を支配下に置いたんだぞ。なのに千年たっても支配出来ていないなんておかしいだろ」

そう言ったリオンの言葉で合点がいったように頷くマユリ。

「ああ、なるほど。それは向こうもあなたと同じように永い時を眠っていたからですわ」

「眠っていた?」

今度はリオンが聞き返す番だった。

「ええ、魔王の闇の力を取り込み、それが肉体になじむまで。活動を始めたのは、ほんの数年前ですのよ。まあ、その間も散発的な魔物の出現自体はずっとありましたけど」

(そうか……それでこの時代の人々もあんまり危機感がなかったのか)

そう、魔王の侵略を受けているにしてはこの時代の者は皆、どこか緊張感にかけるように思えていた。街を行き交う人々、ガランの王女、そして騎士団長のエアリアも魔族と戦争をやっていると言う事実をハッキリ認識していないような部分もあった。

それもこれも、まだ魔王軍が本格的な侵攻を行っていないせいだったのだ。



「それは分かった。もう一つ、自在術式マルチスキルをどうして僕に渡した?」

「あら、それは前に言ったはずですわ。 あなたが魔王の元仲間だからと」

違う、リオンが知りたいのはそうではなかった。

「聞き方が悪かった、なぜ自分ではなく人間である僕に渡した? あんたならもっと上手く使えるだろ」

だが、マユリは首を横に振る。少し悔しそうな表情をその美しい顔に浮かべて。


「いいえ、その力は人間にしか扱えないのです。無限の可能性を持つ人にしか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ