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疑問

夕飯もそこそこに、二人は休息の準備をするため“貨物機動車カーゴバイク”の中の寝袋を出した。もちろん、交代で寝ずの番は行うが。

エアリアが最初を務めると言ったがリオンが先にやらせてもらうことにした。

運転を行うエアリアを休ませたいと思ったのもあるが、眠れなそうだというのも大きかった。



(夜は結構冷えるな……)

防寒用の厚手のケープにくるまりながら薪を火にくべていく。

時折、薪がパキッと乾いた音を立てるだけで周囲に他の物音はしなかった。

一人で静かにしていると、どうしても昼間のことを思い出してしまう。

魔族となったハルトは性格こそあまり変わらなかったが、強大な魔力や凄まじいまでの膂力はやはり以前とは違ってしまっていた。

(まあ、それは僕も同じか……)

怒りで我を忘れていたとはいえ、かつての仲間へなんの躊躇もなく斬りかかれた自分が正直怖かった。

助けたい、その思いに偽りはない。しかしそれが無理ならこの手で命を奪うのも覚悟は出来ている。

だが、昼間のあれはどうかしていた。



ハルトと対峙したとき、話したいことは沢山あったのにそれがすべて消え去り、後に残ったのは強烈な殺意だけだった。


――裏切者を殺す


その思いだけが頭の中を渦巻いていた。

それでいて怒りで状況が上手く掴めない、ということはなくむしろ思考はクリアになり効率的にハルトを殺すように動こうとしていた。

(それも、この力によるものなのか……?)

リオンは指先に小さい電撃を光らせ、それをさせている力を思う。


自在術式マルチスキル


マユリから貰った力だが、よく考えてみれば分からないことが多すぎる。

あの時は言われるがまま力を受け取り、この時代へ来たがあの女は何者なのか、なぜこんな理を無視できるような力を所有していたのかすべてが謎だった。

(ま、考えても仕方ないと言えば仕方ないんだけどな)

リオンはかぶりを振って、こびりつく疑問を思考の外へと追い出す。

あの女の目的がなんにせよ、もう状況は動いてしまっているのだ。

“勇者”は“魔王”となり、この世界を闇で支配しようとしている。


(待てよ……)

リオンはあることに気が付き、薪を火にくべようとする手を止める。

(あいつ、千年もかかってまだこの世界を支配出来てないのか……?)

そう、魔族たちの侵攻が異常に遅いのだ。千年たっても支配出来ていないどころか、この数十年はむしろ人間は魔道工学とやらで発展している。

千年前の魔王はそんなことはなかった。

魔族たちの本格的な侵攻が始まって、わずか三十年で世界の半分ほどはその支配下に置かれたと聞いている。

“千年”という時間、それは言葉にするのは簡単だが実際には途方もないものだ。

その時間の中で世界の支配が出来ないなんてもはや、やっていないのと同義である。



そこまで考えて、リオンは一つのアイデアを思いついた。

(想像力が形になるならやってみるか……?)

手のひらを見つめ、力を込める。

リオンはかつて聞いた、ある伝説を思い出していた。


星の心(アカシックレコード)


この世界のすべての事象を知ることができる場所で、過去も現在もそして未来さえも自由にできる、という伝説だった。

リオンは、マリーベートからその話を聞いたときは単なる噂や迷信の類と思い適当に聞き流していたが、もし本当にそれがあるならこの“自在術式マルチスキル”で行くことができるかもしれない。

リオンは手に力をさらに込めて想像する。

(星の心(アカシックレコード)へと僕を連れて行ってくれ……!)



手から激しい光が瞬いたと思った瞬間、リオンは意識を失っていた――

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