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決意

起動車バイク”をカギへと収納し、エアリアが空を睨んだままのリオンに駆け寄る。

「リオン、大丈夫か?!」

エアリアの顔には、大きな困惑が浮かんでいた。

リオンは怒りとも悲しみとも言えない、複雑な表情を向ける。

「エアリアさん……」

「店の前に戻ったら君はいないし、戦闘の後はあるしで焦ったぞ。 でも、無事で良かった」



安堵のため息を吐いてエアリアは鎧の腰部分に付けられた、小さなポーチを叩く。

すると、鎧がそのポーチの中へと収納されていき、先程の服装が下から現れた。

「……」

リオンが呆気にとられていると、エアリアはポーチを指差す。

「ああ、これは最新式の戦闘鎧ドレスアーマーなんだ。使わないときはこうやって小さく仕舞っておけるんだ。便利だろう?」

そう言いながらも、エアリアの顔つきは険しかった。



無理もない、と思いながらリオンは頭を下げる。

「すみません、勝手な事をして。しかも、結局こうやって助けられて……」

だが、エアリアの言葉はリオンの予想とは違っていた。

「別に助けることは構わないよ。戦闘を行ったのも事情があるのだろうしね。でも、君に無理をしてほしくはないな。遠目に見えたが自分ごとあの魔族へ攻撃をしただろう?」

そう言いながら、エアリアはリオンの身体に異常がないか調べている。

「あんな無茶なやり方をしていては身がもたないぞ。 私たちはもう仲間なのだから、無理せず頼ってくれ」



そう言われ、リオンは目頭が熱くなるのを感じて思わず俯く。

「すみません、僕……我を忘れてしまって……」

リオンの胸の内には、ひとつの言葉が浮かんでいた。


――もっと仲間を頼っていいんだよ


そう言って、独りよがりに突っ走ってばかりだったリオンに優しく微笑みかけてくれた“勇者”

エアリアの言葉には、かつての言葉と同じ暖かさが感じられたのだ。



そんなリオンの様子を見て、エアリアは心配そうに顔を覗き込む。

「大丈夫か? どこか痛むのか?」

リオンは、溢れてきそうになる涙をこらえ顔を上げる。

「大丈夫です。少し、昔の事を思い出してしまって……」

「そうか、それなら良かった」

エアリアは、リオンがもう大丈夫そうだと判断すると、騎士の顔つきへと戻り口を開く。

「さっきの魔族は何者なんだ? 知り合いのようだったが……」



リオンは一瞬迷ったが、

「あいつは……ハルトは、千年前の知り合いです。魔族に身を堕として僕の命を狙って来たようです」

結局、事の詳細を話すのは躊躇ってしまった。

エアリアや王女も今の魔王が“勇者”であるとは知らないようだし、いたずらに混乱させるべきではない、と判断したからだったがそう考えてしまうのが、未だこの時代の者を信頼しきれていない事の証左だと気づいてはいないリオンだった。



「そうだったのか……それは辛い思いをしたろう。今後、奴と戦うことがあれば私が変わろうか?」

エアリアが沈痛な面持ちを向ける。

だが、リオンはその提案には首を横に振り、

「いえ、これだけは僕が自分でケリをつけたいんです」

そう言ってまっすぐエアリアの目を見つめるリオンを見て、ただならぬ想いを感じたのか、

「わかった、だがその道は大きな苦難の道だぞ?」

と、そう一言だけ忠告した。

「はい、たとえどうなろうとやり遂げてみせます」

その言葉に、エアリアは少し苦い顔をしながらも、

「まあいい、 準備は出来ているからそろそろ出発しよう」


そう言って、ポケットからカギ束を取り出し先程とは違うカギの先を地面へと向けた。

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