七番街
七番街に到着したときは既に陽もすっかり落ち、夜の帳が降りていた。
だがそれでも街は明るさに包まれていた。三番街と同じくこの街も眠らない街なのだろう。
行き交う人々も三番街同様忙しなかった。
「うわぁ、スゴイスゴイスゴイっス!!」
今にも駆け出しそうなほどカレンが辺りを見回し興奮している。先ほどまで運転していたのに元気なものである。
「まぁ、落ち着け。とりあえず、宿を取ろう。今から動くのは怪しまれるからな」
「そうですね。でも、あの男思ったよりあっさりとどこかへ行きましたね」
そう、ここまで来るのに四人だったが今は三人。同行者のライナスはこの街へ着くなり、それじゃあ、と言ってそのまま街の喧騒へと消えていったのだ。下心むき出しだった割には意外なほどに。
「道中で脈無しだと悟ったんじゃないか」
あまり話したくはない、とでもいうかのような顔で適当に答えるエアリア。彼女は最もライナスに話しかけられ相当参っていたようだった。
「宿はどこにしまス?」
そんな二人の会話を聞いているのかいないのか、カレンが“魔道通信機”片手に顔を向けている。
「この辺なら結構いいホテルありまスよ」
そう言って見せてくる画面には様々な情報が所狭しと表示されていた。
「一番安いところだ」
エアリアの返答にカレンは口を尖らせる。
「えぇっ、マジスか? 安いところは評判あんまり良くないっスよ」
「観光じゃないんだぞ、そうそう金を使えるか」
「せめてここくらいにはしまシょうよ。あんまり安すぎるとアメニティが……」
「はぁ……まったく」
なんとか食い下がろうとするカレンに呆れたような顔をするエアリア。このままでは埒が明かないとリオンは助け船を出すことにした。
「まぁまぁ、エアリアさん、ここは少しだけいいところにしましょう。あんまり安すぎるところだと観光目的の入国を疑われてしまうかもしれませんし」
「リオン……うん、まぁそれもそうか」
「じゃあ、イイんスね!?」
リオンの言葉に渋々といった風に頷くエアリアに、ニコニコと笑顔を向けるカレン。だが、リオンは浮かれるカレンにもキチンと釘を刺しておく。
「最上級の宿とかは困るよ。怪しまれない程度でなるべく安いところを探してくれ」
「了解っス。ちょうどいいところを探しておくっス」
そう言って“魔道通信機”を操作するカレン。エアリアは申し訳なさそうな顔をリオンへ向けた。
「すまないな、どうも私は融通を利かせるというのが苦手でな」
「まぁ、規律を守ることを重視する騎士団の中に身を置いていれば仕方ないですよ」
二人がそんな会話をしていると、カレンが明るい声で声をかけてきた。
「ちょうどいいところ見つかったっス。ここから歩いてすぐっス」




