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人生の終焉

おお、ブクマありがとうございます。

自身も復讐物は好きなのですが中々書くのが難しい……

これからもよろしくお願いします。

「グルァァァァァァァ!」


こちらの姿を目で捉えたキマイラが激しい咆哮を放つ。その勢いは凄まじく、思わず身震いしてしまうほどだ。


「お……おい、何でここにキマイラが……」

「そ……そうよ。本来ならもっと下層にいる魔物じゃない! 何でこんな所にいるのよ!」


スレインたちは、目の前にキマイラがいるという現実を受け入れられず、思わず愚痴をこぼす。


(キマイラの傍にいれば人とは遭遇しない……。ジュエルビートルが何匹もこのあたりにいたのはこういう事だったのか)


憶病な魔物であるジュエルビートルと何匹も遭遇した理由。それはキマイラという凶悪な魔物のそばにいれば安全であると彼らは判断したのだろう。キマイラとジュエルビートルがお互いに襲いあわないという事は知らなかったが、状況を見るにそうとしか考えられなかった。


「……撤退だ。今相手をするには危険すぎる」

「うん。万全の状態ならともかく消耗しきった状態だと不味いよー」


ルゼルとルゥがすぐさま撤退するよう、注意を促す。相手は下手をすればギルドメンバー総員でかからないと撃破できないほどの強さを持っている。討伐のために万全の準備を整えて来たのならともかく、ダンジョンで探索し消耗した状態での戦闘となるといくらスレイン達が優秀であるといってもさすがに分が悪い。


「二人の言う通りだわ。スレイン、今すぐ撤退しましょ」

「おいおい、馬鹿を言うなよ。逆にチャンスじゃねぇか。今ここでコイツを倒せば俺たちは間違いなく最強だ!下手すればSランクも夢じゃねぇぜ!」


ローズも二人に同意し撤退すべきだと主張するが、スレインは三人とは違い、これは好機であるととらえていた。もしキマイラを自分たちが倒す事ができたら……。そんな妄想をしてしまったのだ。


「……駄目だ。危険すぎる。俺は反対だ」

「まぁ見とけよ。俺様の剣術にかかればキマイラだろうとただじゃすまねぇだろうよ! いくぜ!」


スレインは忠告を無視し、渾身の一撃をキマイラに向かって叩き込む。消耗しているとはいえ、Aランクの実力を持つ自身の全力を打ち込んだのだ。少なからずダメージを与える事ができるだろうと考えていた。


「くっ! かてぇー! 何だコイツは!」


攻撃を受けたキマイラはものともせず、逆に攻撃をしかけたスレインの剣ははじかれてしまう


「ちょ……ちょっと! 全然ダメージが通ってないじゃない!」

「……さすがにキマイラ相手ではスレインの攻撃でも」

「グルァァァァァァァ!」


攻撃を受けたキマイラがお返しと言わんばかりにスレインに向かって尻尾を大きく振り回してきた。


「かはっ!」


その一撃をもろにくらい、大きく吹き飛ばされてしまう。


「ぐ……嘘……だろ。ただ尻尾を振り回しただけだろ……。それなのに何でこんな……」

「……ここに残るのは自殺行為だ。スレイン今すぐ撤退だ」

「そ……そうよ。こんな化け物相手にしてられないわ!」

「ちっ! 仕方ねぇ。ここは撤退する。おいゴミ! 荷物を落とすんじゃねぇぞ!」


今の自分たちではキマイラを撃破するのは困難であると判断し、スレインはようやく撤退を決意した。撤退を選択した彼らの行動は素早いものであった、できるだけ最短の道を走りつつ、魔物と遭遇しにくい場所を選んで移動していた。だが逃げる彼らをキマイラは良しとしなかった。巨体ながらも恐るべき速度で追いかけてくる。


「……このままでは追い付かれる」

「不味いよー。何とかしないとー」


足を止めず必死で走り続けるが、キマイラの速度が思った以上に速い、このままでは確実に追い付かれてしまう。そんな状態まで追い込まれていた。


「おいおい、お前ら忘れたのか? こういう時のために用意していただろう? 最 高 の切り札をな!」


スレインが走りながらも剣を抜き、一切の躊躇もせずアルの体を切り裂いたのだ。


「かはっ!」


突然切り付けられ、体に痛みを覚えたアルはたまらず転んでしまう。そんなアルを無視し、スレイン達は足を止めず走り続ける。


「悪いなゴミ! ゴミのお前でも足止めくらいはできるだろ? 後は頼んだぜ! ははは」


アルは待てと大声で叫びスレイン達を引き留めようとするが、その声は届かない。みるみると彼らとの距離が離れていく。


「グルルルルルルルルル……」


そして、足が止まったアルの姿を瞳に捉えるモノがいた。キマイラのターゲットは完全にアルとなってしまったのだ。


「ぐっ……。くそぅ……。最後の最後でこんな終わり方だなんて……」


キマイラという魔物に睨まれる中、アルの体を襲うのは恐怖でなく、悔しさと怒りであった。怖ろしいスキルを授かったというだけで回りから畏怖の対象とされ、スキル封じの腕輪をつけられてからは無能と蔑まれ、日々虐めを受ける毎日でった。自分はただ家族と平穏な日常を過ごせるだけで良かったのに……。



悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。



憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。



妬ましい。妬ましい。妬ましい。



負の感情が蓄積されていく。


「お前も……俺を馬鹿にするのか……」


負の感情に支配されつつアルがキマイラに対して抱いた感情。それは恐怖ではなく怒りであった。魔物が何を考えているかなどアルには分からない。だがキマイラの目が自分にこう語りかけているように見えるのだ。仲間に見捨てられた愚か者。使えないから捨てられた無能であると。その証拠にキマイラはすぐにアルを始末しようとせず舌なめずりをし、じっくりこちらをいたぶってやろうと思っているかのような仕草をとっていた。


「こんちくしょうがーー!」


斬られた体を無理に動かし、先ほどジュエルビートルの解体に使ったナイフを手に握り、キマイラに突き刺そうととびかかる。だがそんな姿をあざ笑うかのように、キマイラは腕を振るいアルを大きく吹き飛ばす。


「かはっ!」


吹き飛ばされた衝撃で全身を壁に打ち付け、大きなダメージを負ってしまう。


「ちくしょう……。舐めやがって……」


いつでもこちらを倒せるにも関わらず、なぶるようにこちらを痛みつけてくるキマイラに怒りを隠せないアル。だが今の自分ではどうあがいてもどうする事もできない。


「はは……。せめて呪いの子らしく。死んだらお前を呪ってやるよ。簡単には死なせねぇ……。俺が死ぬ時に味わった苦しみ、痛みを何倍にもして返してやる」


呪詛のような言葉をキマイラに投げかけると、アルは自身の終焉を思い目を瞑った。



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