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支給品

スキル封じの腕輪。身に着けると自身が持つスキルが使えなくなるという効果を持つ腕輪。本来であれば犯罪を犯した罪人に付けられるものである。少なくともただの老婆にスキル封じの腕輪がつけられる訳がない。


「おっとすまんのう。感情が高ぶってしまったわい」


さきほどまで放たれていた殺気が嘘のように消える。


「村に住む者たちに報復する事も考えたがやめたわい。そんな事をしても彼らは返ってこない。おそらく彼らもそれを望んでいないじゃろうからな」


この老婆がどのようなスキルを持っているかは分からないが、目の前にいる彼女は只者ではないという事は分かる。


「じゃからワシは罪滅ぼしも兼ねてある事をしようと決めたんじゃよ。スペンサー家の息子、その者の行く末を見届けようとな。ここで待っておれば必ず息子は帰ってくる。そう信じてな」


そして老婆は長い間待ち続けたのだ、その日が来る時を毎日毎日。


「奇跡というべきか、今日を以ってそれが為されたという訳じゃ。のう? アル・スペンサー?」


こちらの姿を目に映し、老婆は二ヤリと笑みを浮かべた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……気づいていたんですか。俺が二人の息子……。アル・スペンサーだって」

「ワシの目を舐めるんじゃないよ。姿は変わっておれど雰囲気は全く変わっておらなんだ。それに村の者が気味悪がって近づかないであろうスペンサー家をあんな目で見ておったんじゃからな」


どうやら初めて会った時から老婆は俺の正体に気づいていたようだ。最初俺の姿を見た老婆は信じられない者を見たという驚きを覚えつつも、とうとうこの時が来たのかと感動に震えたという。


「お主には何といったらいいか……。いくら謝っても謝り足りん……。お主の両親がいなくなったのもワシの力が及ばなかったせいじゃ。この老体でよければいくらでも好きにしてくれい。目でも内臓でも……好きなものをくれてやるわい」

「いいんです。あなたのおかげで両親の身に何が起きたのか……それを聞く事ができましたから……」


話を聞く限り、この老婆は全く悪い事はしていない。それどころか非難する人々とは違い、むしろ両親の味方をしてくれていたのだ。感謝はすれど謝罪される必要などない。最もそれは老婆の言っている話が本当であればなのだが、話を聞いてる限り、この老婆が嘘を言っているようには見えないが確認する必要はあるだろう。


「アルよ……。お主の両親に起こった事、ワシが知っているのは今ので全てじゃ。それを知った上でお主はどう動く?」


そう、問題はこれからどう動くかだ。俺の目標の一つであった両親との再会。最早それは叶わない。となれば俺に残るものはただ一つ。


「その目……。お主は修羅の道を歩むんじゃな……。ワシが言うのも何じゃが本当にその道で良いのか? お主が望むのなら平穏な生活を過ごせるようワシが手続きする事もできる」

「……。両親との再会とは別に俺はこの道を進むと決めました。決心は変わりません」


両親がいなくなった世界、そんな世界で平穏など望めない。望めるわけがない。こうなってしまった以上俺はもう戻る事はないだろう。


「……お主が決めた事じゃ。お主の両親には反対されるかもしれんがその判断に従おう。お主に渡したいものがある。ついてくるのじゃ」


何やら老婆は覚悟を決めた様子を見せる。そしてついてくるよう言われたため、俺は老婆の後ろについて歩き、家の中のさらに奥に進む。すると何やら変な形をしたドアの姿が目に映る。魔法でしか開けられないよう細工が施されたドアだ。それを老婆が魔法で解除し、その部屋の中に俺を招き入れる。部屋の中に入ると見たことのない道具や武器がびっしり置かれていた。


「この部屋にあるものはワシやお主の両親が集めたものじゃ。お主の母が亡くなる前に許可を取ってワシがここに集めておいたのじゃ。全て持っていくがいい」


見たことのない武器、防具、道具ばかりだがいずれもただの代物ではない事が分かる。


「……これをあなたと両親が」

「お主の両親も相当じゃったが、こう見えてもワシも昔はそれなりにやり手じゃったからな」

「だけど本当にいいんですか? ここにある物……。俺が言うのもあれですが碌な使い方はしませんよ?」

「ふぇふぇふぇ、どう転ぼうとお主のために全てを託す。そう決めたのはワシじゃ。好きにするとよい。お主がこの後"何をしようとも"ワシからは何も言う事はない」


老婆の好意に甘え、俺はここにある品をすべて頂く事にした。そしてこの後、俺が何をしようとしているのか、目の前の老婆は口に出さずともわかっているようだ。


両親の味方をしてくれていた老婆がいたという事は驚きではあったが、だからといって俺のやる事は変わらない。

結局俺も両親も、人の悪意によって人生を狂わされた。自分とは異なるもの、自分より弱いもの、そんな存在を無下にし、馬鹿にする彼らを到底許す事ができない。

俺が進む道。



それは 復 讐 だけだ



そして老婆の話を聞いた事で、復讐のターゲットは増えた。両親に非道な嫌がらせを行ったという村の住民たち。老婆の話を完全に信じた訳ではないが、彼らから一人一人話を聞けばそれが真実であったかどうかは分かるだろう

口を割らせる方法はいくらでもある。俺のスキルを使えば簡単に苦しみを与える事ができる。

俺は自分でも分からないうちにニヤリと笑みを浮かべていた


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