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大激戦の中に

 狭い部屋での戦闘は苛烈さを増していた。

 鳴り続ける銃声の数も多くなり、プロトワイバーンの攻撃の頻度も高くなっていてそれらを一人で対処するにはこの部屋はアーフィにとってあまりにも狭すぎたのだった。

 手汗で滑りながらもリボルバーの装填を行い、一回の装填で撃てるようになる六発と頼りない数の銃弾を兵士に向けて一発ずつ放ち確実に命中させていた。

 兵士達からの小銃の乱射から身を守る為にデスクを倒し遮蔽代わりに使っていたが今ではもう穴だらけになっていて少し覗いてやればアーフィの背中がよく見えるがその小さな穴に銃弾を撃ち込める程、彼らには能力は無くプロトワイバーンも同じだった。

 しかしアーフィはその穴に銃弾を撃ち込んで大きく拡げると銃口を突っ込んで遮蔽を盾に安全な状態からの一方攻撃を可能にしていた。


 『撃てッ──!!怯むな──!!』


いつの間にか兵士の数も十人を超えて何かの暴動でも起こったかのような対処だったが相手は一人でしかも女性にプロトワイバーンを用いても未だに処理が出来ず、苦戦を強いられていた。

 アーフィは全弾撃ちきってしまったリボルバーを凝視した。どれだけトレンチコートの中を探しても銃弾は見付からず焦ってしまった。


 「嘘……こんな時に…」


 どのポケットを探しても、腰に付けてある革製のポーチの中を探しても金属製の銃弾は見当たらずアーフィは辺りを見渡す。

 後ろにも目をやれば兵士達の小銃が落ちていてアーフィはそれを急いで拾った。

 手に取ると先ほどまで持っていたリボルバーよりずっしり重く感じるのは当たり前だったが何気に持ちやすく、やはり装備品や兵器に力とお金を注いでるんだと再認識する。あそこのプロトワイバーンも兵器として見れば例外ではないだろう。

 穴からプロトワイバーンと兵士達のことを監視しながら手だけで弾が残ってるか確認する。


 「これだけあるなら…!」


 流石にこの小銃の銃口は穴には通せないのでアーフィは体と小銃をを遮蔽から出して兵士達にまんべんなく放つ。


 『うぉおっ!?』


 『あぁッ!!』


 尖った銃弾は兵士達の防弾ベストをも貫き、次々とバタリと倒れていく。アーフィも乱射の振動で腕への負担がしんどいものになっていくが何とか堪えていた。

 全ての兵士を倒すと残った銃弾でプロトワイバーンに放つが鋼鉄の身体には痕も残らなかった。


 「やっぱりアナタが残るのね…」


 アーフィは遮蔽代わりのデスクから離れて倒れている兵士達の側へと近寄った。

 兵士の持ち物から小さく丸っこい金属の手榴弾と小銃の弾を奪い取ると、すぐさま小銃の撃ちきったマガジンを捨てて新しい物に替えて手榴弾からピンを引っこ抜きプロトワイバーンへ投げる。


 『ーーー。 ーーーー ーーーー、ーーー』


 プロトワイバーンはまたもや機械的な音を何処からか鳴らすとその開けっぱなしだった口をゆっくりと閉じようとしていた。

 アーフィの狙いは口の中に手榴弾を投げ込み、体内での爆発を目論んでいたのだがこのままでは爆発はプロトワイバーンの頑丈な装甲で防がれてしまう。

 だからアーフィはリロードを終えた小銃で宙に彼女の手によって放り出された手榴弾のピンがあった部分に弾を当てて口が閉じきる前に見事、勢いよく砲丸のような金属の爆発物を入れることに成功したのだった。

 プロトワイバーンは一歩遅く、閉じきると共に口の中で爆発が起きて火炎放射器から出たものではなかったが黒煙りを纏った炎を吹いていた。

 そのまま頭を地面に叩きつけ、青い電気を放電しながら倒れ込んだが、細い金属の腕が床に手を付けて顔を上げ赤い目をグラングランと揺らしアーフィを睨もうと足掻いていた。

 

 「てりゃぁっ!!」


アーフィは銃口を握りしめて鈍器を振り落とすように小銃を振るいプロトワイバーンの頭部を叩いた。

 するとプロトワイバーンは大きく仰け反り壊して入ってきた窓に背を預け、アーフィを睨んだが彼女は小銃で弾丸を胴体目掛けて乱射してプロトワイバーンを押していた。

 少しずつ外に身体を出していき最終的には弾丸に負けて落下してしまう。

 激闘を繰り広げたアーフィの額を汗が通り、そのまま頬へと進みプロトワイバーンが落下していったように水滴は床に落ちていった。


 「終わった……」


 その達成感と疲労感から足が崩れて尻餅をついてしまうが一呼吸すると勢いよく立って腕伸ばしを始めた。


 「クラックを追わないと…!」








 「ぐぅっ!!」


 青白い光だけが光源の世界で、クラックとネーリはアーフィプロトワイバーン達が繰り広げた激闘よりも苛烈さを増した物になっていた。

 ネーリの素早くて重い攻撃はクラックが大剣で防いだとしても勢いに負けて後退りをしてしまう程、強力な一撃だった。

 金属同士がぶつかり合う衝撃で生じる火花は革の手袋をしていても熱さが微かに伝わり無意識の内に火花を避けていた。


 「さっきから攻めて来ないな…臆病になったものよ…」


 「黙れ軍の犬」


 「元軍人が言う言葉ではないな」


 クラックは離れたネーリにも聴こえるくらいの響く舌打ちをして大剣を滑らしながら近づき下から斬り上げる。

 ネーリも落ち着いて剣で防ぐが斬り上げられた次の瞬間クラックの大剣は緑色に淡く輝いていて、それはクラックの技の〈破風撃(はふうげき)〉を纏っていたのだった。


 「堕ちろ」


 斬り上げた大剣を下へと振り落とし破風撃の衝撃と共にネーリへと斬りつけた。

 地面は揺らぎクラックもネーリも体制がふらつくが、それでも衝撃が大きいネーリの方がやや痛手にも見えた。

 

 

 「ぬあぁっ!?」


 その衝撃は余裕の表情を見せていたネーリをしかめさせる程、重い一撃を与えクラックは更に背を低くし大剣を横に振るった。

 ネーリは急いで後ろへ飛び下がるがクラックは大剣を左手に預けるとそのまま右腕を伸ばし力を籠めて〈エアド〉を放つ。

 風の弾丸は周囲の空気を回転させて己の身体に纏わせ弾丸と言うにはあまりにも大きい例えるなら砲弾サイズにまで成長していた。

 それをネーリの腹部に放ち距離を空けさせて手を腹に当ててよろめいたところをクラックは逃す筈はなく、刃を地面に擦りながら滑らしもう一度、破風撃を放とうとするがネーリは一歩先に右腕の回路装置を青色に輝かせると何処からともなく水が湧いて縦長の線を作りクラックに向かって突進した。

 クラックはその攻撃は危険だと感じ中断をしてまででも回避行動をとって避けようとするが回避に至るまでが遅く、直接的なダメージは少なかったもののお気に入りの藍色のコートは破けてしまった。


 「水の初級魔法…〈アクアロ〉か…」


 ネーリはたった一回の魔法攻撃だけで有利不利を無くし、クラックにダメージを与えるという功績を叩きだした。

 クラックは獅子の爪にでも引き裂かれたような切れたコートを脱ぎ捨てて少し大きめの黒色のシャツと軍に入隊した頃に配られた今でもちょっぴりブカブカなグレーのズボン、革のブーツを露見させる。


 「望むは短期決着だ…!」


 大剣の柄を握る手に自然と先程よりも力が入り、クラックは魔法攻撃を捨てて武器を片手持ちから一撃一撃を重視する両手持ちへと変更して剣先は天井へ向けていた。

 ネーリは一瞬笑ったかのようにも見えたがそれは幻想か幻覚の類いだとクラックは思い込んだがその後、声を上げて笑いだしたので呆れたことに目の前の金髪の男はこんな激闘の最中でも笑っていたのだ。


 「何が可笑しい?」


 「いや、こんなにも汗をかいているんだ。久し振りの激闘だ…楽しもうじゃないか」


 ネーリは柄から手を放すと刃を足で蹴ると玩具のびっくり箱のように細い金属の板が飛び出しクラックの元へ回転しながら直進してきて冷静に弾いてそれを対処するとネーリはいつの間にかその長い距離を素早く詰めて来ていて黒色の剣を闇に溶け込ましながら振るった。

 一瞬の刃が乱反射させる銀色のような白色のような不確かな光の位置情報を頼りにクラックは大剣の動きを光の動きに合わせて攻撃を相殺させる。ビンゴだった。

 大剣の滑らかな動きは確実にネーリの攻撃を捉えて相殺どころか剣も弾かせ飛ばし、それでもネーリは左手をコートのポケットに突っ込み拳銃を取り出し、右手は地面に突き刺さったままの金属板を手に取るがクラックは刃を突き刺して支え代わりに使い身体を浮かせてネーリの胸部を蹴った。

 

 「うぐぁっ!」


 「はち切れろ!」


 クラックはそのまま剣先を地面に滑らせ火花を生ませ、ネーリへと突っ込む。刃は暗闇に隠れず、閃光の如く直進し、ネーリの剣でのガードへ突き刺す。

 突き攻撃の衝撃は周りの空気に波紋を生ませ、そして衝撃は不思議な引力に導かれ大剣の剣先へと集まってくる。

 やがて目に見えぬ渦となネーリを押す力が強くなる。


 「吹き飛べっ」


 クラックは柄を握る手に力を籠めると、渦が加速しネーリを吹き飛ばした。突き攻撃からの吹き飛ばしの強力な技はネーリの踏ん張る足も虚しくそのまま下へと落下していった。


 「なぁっ!?」


 ネーリは何が起きたのかも分からぬまま腕を上に伸ばし落下していった。


 「これが〈乱突撃(らとつげき)〉だ…」


 クラックはあまりにも暗すぎる真下を覗くが何かが動いてる音や様子もないのでそのまま闘っていた研究所の天井に二つ目の穴を大剣で空けて部屋に降りるとそこではアーフィが床に膝を擦りつけながら散乱している資料を集めていた。


 「わっ!?クラック!?」


 アーフィは驚いて尻餅をついてしまったがクラックの顔を見ると安堵の息を漏らしてお尻をはたきながら起き上がる。


 「脅かしてすまない。……あぁ、アイツは片付けてきた」


 アーフィは「大丈夫なの?」とクラックの汚れた身体を心配する。するとクラックはぶっきらぼうに「あぁ」と返事した。


 「クラック、これ何の箱か分かる?パスワードだか何だかが必要みたいで開かないの」


 アーフィは手に小さな金属の玉手箱のような物を大事そうに抱え持ってクラックに質問したが彼もこのような精密そうな機械系には疎くパスワード等もいつものコートにしまってあるメモ帳に書いて覚えてる為、この箱は何だか分からなかった。だからクラックはコートから外して付け直した鞘から大剣を抜いて箱を斬りつけたのだった。


 「く、クラック!?」


 「開けば何でもいいだろう」

 

 澄まし顔で言ったが彼は内面、機械に詳しくないことを隠すので精一杯で頭の片隅に残っていたパスワードの一欠片を探す気にもならなっかた。クラックはアーフィに背中を見せて大剣をしまった。


 「開けばって…重要な物でも入ってたら…?これって…」


 「どうしたアーフィ?」


 「これってリボルバーよね?こんな大事そうに扱ってお偉いさんのかしら」


 「上の奴ら者が使ってた訳じゃないが〈クイックリボルバー〉という高性能のリボルバーだ。話だけは聞いたことはある」


 クラックは腕を組みながら自分の自慢話のようにアーフィの持つ黒色の〈クイックリボルバー〉について語ったがアーフィは聞き流す程度に「ふーん」と返した。


 「…聞いてるのか?」


 「あぁ、ごめんなさい」


 アーフィはハッとした顔をしてクラックに謝ると彼は髪をかいて「いや、もう一度聞くか?」と返事した。

 アーフィは笑いながら結構と自分の唇を人差し指で押さえてクラックを黙らせた。


 「あ、あぁ…」


 クラックはアーフィの仕草に戸惑ってしまった。後はこの資料を集めて此処を出ればいい、そういう考えだった。

 この二人はまだ知らなかった。

 この後、先程の激戦すらも凌駕するほどの地獄の戦闘が起こることをまだクラックもアーフィも知らないのであった。

 



 


 




 




 

 


読了ありがとうございました。

少し遅くなってしまって申し訳ございません。

もう少し早く更新できるよう精進していきたいと思います。

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