第1話:深海魚
初投稿です。語彙力が皆無なので,稚拙な文章多めですが,頑張ります。
「はぁ~~~~~~あ」
首都セレンに4つ存在する修練場のうちの1つ,
アーリア修練場の兵舎で一人,
大きなため息をつく男がいた。
名はルイス・サルバドール,
有能で勇敢な父に続くため,
魔法剣士科に入り,9年間
ここで努力を続けてきたつもりだった,
けど……
「ま~た不合格か,やっぱランク『シルバー』の壁は高いよな」
この1年間,1か月に1回行われる
“ランク昇格試験”に散々挑んできたが,
結局,ランク「シルバー」の壁を破ることはできなかった。
この修練場には全部で6個のランクが存在する。
ランク「ビギナー」,ランク「ブロンズ」,
ランク「シルバー」,ランク「ゴールド」,
ランク「プラチナ」,ランク「マスター」。
この6つのランクに分けられていて,
正式な魔法剣士であることを証明する
“ライセンス”を取得するためには入門してから
10年以内にランク「ゴールド」まで昇格しなければならない。
「あと1年……か……」
この残り1年間でランク2つ分も上げなければ,
魔法剣士の道はあきらめるほかないわけだ。
――絶望的な状況だな……
そう思い悩んでいると,談話室の扉から一人の男が入ってきた。
「おっルイスさんじゃないっすか! 昇格試験の結果どうでした!?」
期待いっぱいの目で聞いてくるこのぽっちゃりとした男の名は,
ラード・アンダーソン,ランクは僕と同じ「ブロンズ」だ。
この体型からは想像しにくいが,修練場に入門してから,
たった3か月でブロンズランクまで上り詰めた,優秀な魔法剣士だ。
年齢は僕の2つ下の14歳だが,
スキルの差は言うまでもなくこいつが上だ。
「案の定,無理だった。」
僕がそう言うと,ラードは左手でぐっと親指を立てて
僕を励ましてくれる。
「そうでしたか……,ま,気を取り直して次も頑張りましょうよ!!」
「うん,ありがとう。お前はどうだ? ラード」
僕がそう聞くと,ラードは待ってましたと言わんばかりに,
合格通知書を机においてみせた。
アーリア修練場 魔法剣士科
ランク「ブロンズ」:ラード・アンダーソン
あなたは今回の昇格試験において,飛び級で,ランク“ゴールド”に昇格したことをここに称します。
最高師範:ケネス・ブラッドフォード
「やりましたよ!!ルイスさん!?飛び級ですよ飛び級!!,これで俺も上位陣の仲間入りです!!」
「おお! やったな,ここまで行けばライセンス取得は確実だしな!」
まさか“飛び級”をしてくるとは……
ラードの予想外の有能っぷりに畏敬の念を抱きながらそう言うと,
「いやぁ~,ライセンス取得はもちろんですけど,やっぱりトップランクの「マスター」めざしたいっすよね~,ね? ルイスさん!」
「え?……あ……うん,そうだね」
僕は一瞬,戸惑ってしまった。
自分にはマスターランクなど夢のまた夢,才能に恵まれすぎた
選りすぐりの超・有能剣士達が行くところだと認識していたからだ。
だが,よく考えればこいつもそれと同じだった。
入門した時期は僕よりずっと遅い上に,僕より2年も若いのに
あっという間にランクブロンズまで昇格してしまうような奴だ。
――やっぱ有能な人は目指す場所が違うんだな
僕は,机に置かれた合格通知書を見てそう思った。
サルバドール家の当主,つまり僕の父
オーウェン・サルバドールは首都セレンに王宮を構える,
セイレーン王家直属の護衛部隊王家六神の一人であり
僕はその子供として,修練場に入門した時,師範たちから大いに期待された。
しかも入門したのが,首都セレンで最も入門試験が難しいとされているこのアーリア修練場だったこともあり,多くの人たちにこの話題は広まった。
僕も高難易度の入門試験に見事合格し,アーリア修練場の正式な門下生と認められた時は,父さんのようになれるかもしれないと夢見たものだが,
現実はそう甘くはなかった。
入門してからの訓練は恐ろしく厳しいものばかりで僕には到底ついてくることができず,またランクブロンズからの訓練は,さらに困難を極め,僕は有能な後輩や僕より後に入門した同い年の門下生たちにどんどん抜かされていった。
いつしか僕は同ランクの門下生から,
「深海魚」とあだ名をつけられ,けなされるようになった。
今では僕のことをちゃんとした名前で呼んでくれるのは今や僕より高ランクとなってしまった後輩ラード。
そして,最高位の“マスターランク”の中でも五本の指に入るほどの実力を持つ僕の幼馴染,天才女魔法剣士のアリシア・スカーレットの2人だけだ。
――ごめんなさい,父さん,期待に応えられなくて
入門してからのことをを思い返してみると,僕は父さんの期待したような魔法剣士にはなれないのだと再認識してしまったような気がして,悔しくなる。
僕が,そう自己嫌悪に陥っていると,突然談話室の扉が勢いよく開いた。
「おい! ルイス!!
ルイス・サルバドールはいるか!?」
そう声をかけてきたのは,
ランク「ビギナー」トップの成績を持つマーティー・マッケンリー,
自己中心的な性格な上,自分より実力が下だと思う人間は
徹底的に見下すことで有名だ。
――僕に何か話したいことでもあるのか?
こいつとはあんまり関わりたくないんだけどな。
こいつが僕を呼んだ理由が大したものではないということを祈りながら手を挙げて
「ああ,僕がルイスだよ,どうしたんだい? マーティー君」
「ああ,お前か,お前がルイスだな?」
マーティーはそう言いながら僕に近づき,体を眺めまわしては,にやにやと笑みを浮かべたかと思うと,僕の耳元に口を近づけて
「ふん,相変わらず貧弱な体だな。」
と囁いた。
「は?」
「おい! 自分より目上の人間を
侮辱する行為は罰則に値すると,師範に教わっただろう!?」
僕は全く予想だにしなかったこいつの罵言に思わず
怒りをあらわにしてしまった。
――普段は少し煽られたくらいじゃ怒らないけど……
今のは……許せない。
「ハハァン!そんな先輩面してられんのも
今のうちだぜ? ルイスさん」
「? どういうことだ?」
どうやら僕の祈りは届かなかったようだ。
こいつは明らかに何か良からぬことを企んでる。
僕はかなり嫌な予感がしたが,
思い切ってマーティーに真相を問うた。
「……何がしたい」
僕がそう言うと,マーティーは人差し指で自身と僕を交互に指した。
「決闘しようぜ,俺様と,お前で」
――ゲス野郎!! こいつ,僕を舐めているのか?
読んでくださった方,ありがとうございます。
ランク昇格試験の難易度は非常に高いという設定です。
ランクを1つ上げるには,少なくとも5か月はかかります。
ちなみに,それをたったの3か月で達成し,
さらに今回で“飛び級”を決めたラード君はガチモンの天才。
良ければ,評価,レビュー,感想などよろしくお願いします。