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指定凶悪犯罪集団バサラ 幹部:クロジマ

前回までのあらすじ


あきる「はーい! るんるんるるんっ。あきるんるんチャンネルです☆」


あきる「愛知県技者警察と俺あきる☆が協力しているバサラとの戦闘能力。前回はバサラの幹部クロジマが謎の焼死で亡くなってしまいました。今回は幹部ダイガンと技者警察イエローとの勝負が始まるよっ!!」

 吹き荒れる爆風、とそれを止めるイエロー。手のひらから出る風圧が進みゆく爆風を返した。

 睨むダイガンと睨み返すイエロー。駆け引きが目線を強ばらせる。

 再び襲う爆発。現れる砂埃が目線を奪う。そして、砂埃はイエローを隙だらけにする。


 隠してた剣で襲いかかる。

 降りかかる剣の音は爆風によって凪と化し聴覚をすり抜ける。広がる砂埃が視覚をすり抜ける。

 剣がイエローを切り落としたかのように思えたが……


「耳や目や、感覚を奪いその裏に隠れるのは褒めるに値する。残念だけどさ、感覚だけじゃなく氣ってもんを感じれる俺には効かないけどな」


 咄嗟に降りかかる刃に手を当てる。いや実際は数ミリ単位で刃に触れていない。当たる直前で風圧による衝撃波を繰り出し攻撃を跳ね返したのだ。

 剣が腕から離れ飛んでいく。

 大きな巨漢は隙だらけで後ろへと倒れかけている。彼はそこを見逃さなかった。


 〘風爆衝撃〙


 彼は技を放った。手のひらから爆発が現れる。その衝撃は敵を吹き飛ばした。


 赤尾が私に補足してきた。

 技者はある程度まで強くなると、様々な種類の攻撃や奥深い技など高度化していく。技とはその技〃を区別し、さらにルーティーンの要素を加えたものである、と。決して厨二病とかそういう訳ではない、と加えられた。


 飛ばされる敵を追いかけていく。手のひらから風を出し飛び、すぐさま敵の頭上へ。

 敵も負けておらず身体から種を二つ繰り出し互いにぶつけた。強い爆発がイエローをも巻き込んでしまった。

 が、イエローは爆発を受ける前に手のひらから放たれる爆風を利用して敵の後ろ下へと入り込み爆風によるダメージを激減していたのだ。

 イエローから繰り出された衝撃波が敵を背中から貫通する。

 そして、敵は足から崩れ落ち倒れていった。


「……現行犯で逮捕。」とイエローは錠をかけた。


 そこはかとなく現れる安堵感が私を襲う。

 そこにイエローが水を差す。


「油断するなよ、ミドリ。まだ敵が残ってるかも知れないんだからな」


 そうだった、と反省してイエローを見た。

 窓から射し込む光がイエローを輝かしく照らしている。



 その時、ここへと近づく足音が聞こえた。

 若い男性と女性。女性の方はカメラを抱えていた。


「これはこれは素晴らしい。まさかあのダイガンを倒すなんて……」


 どこかで見たことがある。頭を巡らせてその容姿と記憶を照らし合わせた。そうだ。彼はあきる。名もなきユーチューバーだ。

 あきるは笑いながら私たちに種を見せる。倒した敵が持っていた種である。


「こんなものが落ちてました。不審物なのでお渡ししますね……」


 そう言って、あきるは種を投げる。投げられた種はダイガンの上に落ち大爆発。強い衝撃が肝を揺るがす。

 私たちは何とか被害を受けることがなかったが、直撃したダイガンは死んでいた。


「ビックリしましたね」

 あきるは話しかける。彼らは地元住民であると自称し、不審物を見つけたので届けにきたと説明しだした。

 だがそれは違う。彼の言い放った一言が確信させる。

「ああ、司令室の雑魚が予定通り死んだのですね。良かったですね、技者警察なのに技者じゃない奴が死んでくれて嬉しいんじゃないですか?」

 その言葉を聞くと怒りが込み上げてくる。何故バサラの目的を知っているのか? それはバサラと協力関係だからなのだろうと予測した。

 死んだ人を蔑ろにし愉しむ彼らを見ると力が込み上がっていく。


「まあ僕は無能力者で技者が嫌いだから君たちが雑魚を見殺しにしたと知って、技者に憎悪が湧きそうですよ……」

 そう言いながら、壊れた廊下の残骸、瓦礫を手に持つとそれを紅菜へと投げつけた。


 死人を冒涜する行為。

 耐えきれずに駆け出す私をイエローは何故か止めた。そして、どういう訳が私に向かって頷いた。


「君たちの本当の目的は何かな……?」

「挨拶ですよ……。悲しくも無様な死体にね!」


 紅菜の死体を蔑み見下す。

 私の代わりにイエローが駆け出す。


「カメラ、雑音……」

 あきるがカメラマンに命令を下している時にはもう間近。風圧があきるを飛ばしていった。

 壁に衝突し血を流す……

 それでもあきるは笑っていた。

「あーあー、警察が無能力者の、単なる住民に手を出していいのかなー?」

 あきるの戦闘能力は皆無に等しいことが分かった。受け身が取れてない。敵の攻撃に反応出来ていない。だけど、言葉で攻撃を躊躇わせているせいで手を下しにくい。

 警察の立場と市民の立場。それは守る側と守られる側の関係。

 あきるは無能力者であり非力だ。彼は守られるべき存在。その関係を利用して調子に乗る。必然的な関係という壁は私の目の前で高く高く聳え立っていく。

 心に決めた警察としての因果が足を掴んで離さない。


 あきるがバサラと関係があると決め付けられない。そして、攻撃してきた訳でもない。単に言葉で挑発しているだけだ。

 私は足が止まった。

 一方でイエローは足が進んでいく。

 イエローは能力を使わず簡単に殴る。彼は攻撃を受ける。大袈裟な反応で床に倒れた。

 ふらふらしながら立ち上がる。その勢いで必然的に紅菜を蹴り飛ばす。いや、必然ではなく故意的であった。私たちに見せる顔はとても悪意に充ちていたのだ。


 イエローは我慢の限界をとっくに越えている。あきるへの攻撃が止まない。

 ただ、手加減はしていたようで彼が立ち上がれなくなると手を弛めた。殺してはいない。


「覚え、てろよ……。お前の、した事、が……いか、に、悪なのか。その審判を、下すのは、警察じゃない。()()だ!!」


 カメラマンがあきるの肩を持ってその場から離れていく。

 私たちは疲労からか、紅菜が死んだ現実が再び入り込んだからか、その場から動けなくなっていた。



 死者五名────

 内バサラ幹部二名、下っぱ二名。技者警察一名。


 突然指定凶悪犯罪集団バサラが襲撃したことは忽ち話題となった。特に、恐れられていた最強と言わしめる幹部が()名死んでいたことが話題となる。一人殉職者が出たものの、その死は無駄にならなかったと、強く願うように持て囃された。

 そして────技者警察にもう一つ。

 イエローの市民に向けた暴力事件が地元に共有された。あきるの配信したユーチューブは伸び率は良くないとは言え、地元に周知される程には有名になっていた。彼のプロパガンダと技者への貶めが本格的に始まっていくのであった。



*



 イエロー死す────

 イエローは自殺した。彼は正義のため、そして地元のために警察をやってきた。だがしかし、あきるの策略によって地元の人は誰しもイエローを悪と捉え始め態度を改めた。彼の弁解など無意味に化す程プロパガンダは強く進んでおり、彼は地元から見放されたのだ。

 人は自分と似た存在か安心を提供する存在に手を渡す。

 強い者と弱い者。

 日本では、国が武力を独占し、国民には武力を禁じている。これによって国が強い者、私たち民は弱い者と関連する。国は警察や自衛隊に武力の権限を託し安心を与えている。

 それだけなら良かった。だが、安心を壊す者が警察であるとしたら、最早強い者であり安心を揺るがす敵対者と見なされてしまう。つまり、弱き者に敵対してしまうのだ。

 それは悪を示した。

 地元のため、その目的一本で奉仕してきたイエローにとって、その地元の敵対は心苦しい者であった。悪いことをしたことも自覚していることがさらに心を苦しめる。

 優しく接したい人達が皆、恐怖と敵意の視線を寄せる。一瞬にして天地がひっくり返る。挽回のチャンスは見えない。徐々に生きる渇望が無くなり、生きることへの存在意義が消えていく。


 あきるは肉体的な攻撃をした訳ではない。その点では、あきるは攻撃された方だ。

 だが目に見えない精神的な攻撃をしていた。罪にも問えないような狡猾な頭脳がイエローを地獄へ落とす。


 精神を病み、生きる意味を失ったイエローは首を吊って空の上へと旅立った。

 あの世への期待と、この世での後悔を唱えながら……



*



 愛知県の技者警察は新たなスタートを迎えようとしていた。

 好ましくないスタートだが、平和のためには進まなければならない。

 紅菜の代わりに入った二人の司令員と、三人のまだ見てない仲間、赤尾、シロナ、そして、私。

 バサラへの怒りを忘れないよう紅菜の死を思い。イエローの死を忘れないようあきるの手口を頭に入れる。


 今日は雲の少ない晴天だ────

 窓から侵入する心地よいそよ風が私たちの新たな一歩の追い風となるように、背中を優しく押していった。

Fin

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