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技者警察メンバー:アカナ

前回までのあらすじ


ミドリ「変人(黒羽)に出会いました……。本当になんだったのかな(汗)」


イエロー「あの人は……うん。いわゆる、ヤバイ人だと思っていればいいと思うぜ」


ミドリ「それと、イエローさんの夢を聞きました。素敵ですね、地域の人のヒーローになって地元に恩返ししたいとは……」


イエロー「だろ?」


ミドリ「ですけど、大丈夫ですか? 何か不吉な旗を置いてってますけど……」


イエロー「大丈夫だって、多分。それより今日は巨大な悪が動くし、紅菜が活躍(?)するようだぜっ!!」

 能力を持つ技者。何故彼らが能力を得たのか。

 歴史上では突然変異、突如起きた不可解な現象と記されているが、実際は転生によって得た可能性が高い。

 ある日、世界に同時に起きた様々な災害。日本では四国、中国地方を襲った南海トラフ大地震、九州では阿曽山超噴火、中部には四日市大台風。他にも雪崩、落石、波浪、等の災害が起きていた。そこでの死者は数えきれない程だった。

 その災害に見舞われ、直接死に起因する被害を受けたのにも関わらず無事生き残った者たちがいた。世界の人口の二割から三割の人々だ。彼らの奇跡は生存だけでなかった。摩訶不思議、特殊な力を手に入れていたのだ。

 そして、その能力は森羅万象、死に起因した災害を強くまにうけている。

 地震なら地面、噴火なら炎、台風なら風、というように各々見舞われた災害の種類による能力を持っている。


 不幸中の幸い────

 彼らの不幸は世間では気づかれていない。メディアを初め技者が能力を持ちうる理由を突然変異としたせいだ。

 当然技者に降りかかった幸いを妬む者もいる。

 技者であるだけで活躍していく彼らを、無能力者は眺めることしか出来なかった。羨望、嫉妬、悲怒、憎悪、様々な感情を技者に向けていた。


 技者に対して牙を剥き出しにした存在……その代表格が


 あきるんるんチャンネル★


 その主演であるアキルは負の感情を技者に向けていた。無能力者たちの逆転劇を目指して。彼は目的のために、ミドリたちの所属する愛知県警技者警察を滅ぼそうと構想していた。闇の中で頬を上げていた。


 あきる────

 その名はこの世界を轟かすこととなるさらに未来で現れる悪の王。ミドリたちの前に立ちはだかる最凶の敵であるのだ。



 そんなことをまだ私たちは知らない。単に興味本位で見つけたあきるの動画を見てくだらないと見下していただけだった。


「キャッチコピーは凄いんですけどね。何と言うか、警戒する必要ないですね。単に人気になりたいだけの人そうです。そもそも見てる人も極端に少ないですし、何故私は見てしまったのでしょう……」


 紅菜はそういうこともありますよ、と同調する。私もその同調に同調した。

 見ていた動画は下に追いやられ、ガラクタの動画の下に埋もれていったのであった。



*



 事件発生。慌ただしい中、パトカーに乗り込み解決に向かう。

 対象は三十代の男性で無差別殺人を繰り返しているようだ。緑とオフホワイトのフードで身を隠す。彼らは指定凶悪犯罪集団の下っぱだと推測された。

 油断は禁物。私は紅菜の作戦を一つ一つ丁寧に聞いた。


「ドローンで見た感じ、対象は触れたものを鉄のように固めて武器にするようです。近接戦は避けて下さい。伊藤警技補は壁で対象を封じ込め、イエロー技長は中距離攻撃で牽制、ミドリ技查は隙をついて妖精で捕縛、日下部警技は対象が逃亡、及び想定外の行為に対応のため後ろで待機……」


 私は単純に風妖精(シルフ)を操って敵を捕まえればいい。

 二回目の任務。まだ慣れておらず緊張が心臓を軽く圧迫する。溢れ出る緊張を外に出すように息を吐いた。

「緊張する必要はない。手馴れの俺らがいるんだからさっ!」

 イエローの励ましも相まってか、緊張が収まっていく。

 そしてその間にも目的地へと着々と距離を縮められていくのであった。




「オレはボスに認められて幹部へと上がるんだ!! そのためにここで大量殺戮をし、技者警察を返り討ちにする!」


 彼の頭の中に浮かぶ四人の仮面を被った存在と、優しそうな華奢な様相の少女。彼らの前に跪き忠誠を誓って早半年。彼らに認められ、肩を並べるためには一儲けの賭け事に勝たなければならない。それが今日であるのだ。

 鼠色の道を無防備で歩く雑魚を力で落としていく。能力は大地の皮。触れたものに大地の皮を与え強固なものにする。その強度まさに鉄以上。この力で如何なる敵であろうと殺戮する。


「やめなさい! 大人しく捕まるのであれば手荒な真似はしない」


 低い声が拡張機によって大きな音へと変わる。ついに技者警察が現れたのである。

 男性二人、女性二人。今日の一勝負は彼らかと拳を強く握りしめる。

 幹部たちの目の前で感じる圧迫感。彼らは想像を越える程に強い。果てしない恐怖は心酔した忠誠心へと移りゆく。あの恐怖に比べれば眼前の技者警察など何とも感じない。オレなら簡単にねじ伏せられる、という欺瞞が胸の内から湧き上がっていた。

 技者警察に襲う。

 が、突如現れた壁が攻撃を防ぐ。後ろに下がって距離を置こうとするが壁が行く手を阻む。もちろん、左右も防がれた。

「大人しく捕まる気はないようだな」

 冷たく言い放たれた一言。身体が怯みかけるが、奥底で眠る本能が怯えを消した。

 逃げ道は上しかなさそうだ。そう思って上を見ると一人の少年が手のひらから風を出して器用に飛んでいる。


 衝撃波────


 手のひらから放たれる強烈な風の衝撃波が体を痛めつける。だが、ここでも本能が働いた。痛みを忘れた感じがする。流れ出すアドレナリンが腕を動かす。落ちてきたところを懇親の一撃で。

 殺意を効かせた睨みを上に向けていると左右から人間ではない声がする。


《油断禁物だぜっ》《神の慈悲を。ごめんなさい、ブチます》


 風の精霊が左頬を、右頬を同時に殴りつける。脳内を強く揺らす。頼りにしていた本能もここで消え、意識が遠ざかっていった。




「……で逮捕」

 気絶した敵に手錠をかける。

 イエローが彼を肩に担ぎパトカーに向かう。私もついて行くと消し忘れた妖精が横でぶつぶつ言っている。

《おい、ミドリー。なんで今まで完全体にしなかったんだよ!!》

 妖精を召喚するためには時間とエネルギーが必要となる。完全体とは召喚に必要な時間とエネルギーを最大限に使って召喚された妖精。最低限の召喚と比べるとパワーやスピードが高く、意志を持ち喋ったり自発的行動が出来る。

 最低限の妖精は私の笛で自由自在に操れるが、完全体は己の意志で私の命令を聞いて行動するため、自由自在には動かせない。

 メリットとデメリットで場面場面使い分けていて、最近では自由自在に動かせる比率が多かったのだ。

《ひ、酷いよ。そんなにウチらが嫌いなの? う……うぇ~ん》

《そうだぞ! 酷いぞ!!》

 さらにデメリットがある。

 とてもうるさい────

 私は耐えきれず笛を吹く。

《おい、戻す……》

 その合図は反召喚の音色であった。何故か穏和な気持ちになっていった。


「まさか、お前の召喚した妖精が喋るなんて知らなかったぜ」

「……。まあ、喋りますけど気にしないで下さい。ほとんど喋れる状態で召喚しない予定なので……」


 妖精によって苛立ちを持っている私のことをいざ知らず、イエローは無邪気に口を開く。


「殺生だな。俺はあの状態の妖精、好きだぜ! また一緒に任務する時はさ、もう一度使ってくれよ」


 イエローの無茶ぶりに「えぇ~」と言い放つことしか出来なかった。

 肩を落とした私たちを照らす光が、優しく背後を押していた。



*



「流石紅菜さんです。あんな完璧な指示が出せるなんて……」

「いえいえ。当然ですよ。私はその場で戦わずに遠くからの指示や状況提示ぐらいしか出来ません。あなたたちのように怪我をするリスクもないし、()()可能性もありませんし。だから、私が全力で支えないといけないですし、そう考えると私はまだまだです」


 大量の書類に覆われた机に座る赤尾、軽々と書類を捌いていくシロナ、自由に座るイエロー、椅子に対面して座って喋る私と紅菜。平穏な日々が流れていく。


「そう言えば、あなたたちが捕らえた人はあのバサラですよね?」


 バサラ……

 指定凶悪犯罪集団。ボスと四人の幹部は植物を操る技者。珍しい能力から放たれる能力と、技者による天下を掲げそれに賛同した仲間や力に屈服させられた者によって僅か数日で東京は陥落。さらに、日本全体をバサラで統一するために東京を拠点に西へ東へと勢力を伸ばしている。


「ええ、そうです」

「もうバサラの手が愛知にも届いているなら、厳戒態勢をひいた方が良さそうですね。油断しているとすぐにここも陥落しかねないですし」


 赤尾が横から割り込んできた。


「そうだな。元首都を陥落させる程の実力者だ。それにいつ襲ってくるかも分からないしな」


 外には不穏な風が流れていた────




 闇に隠れしアジトの中で、暗黒に包まれし存在が蠢いていた。

 広げられる地図と敵地の内部地図。緑とオフホワイトのフードを被った集団がその地図を囲んでいた。

 フードの下でダイヤ型の仮面を被る大柄な男が、フードを被っていない人物に声をかけた。

「全滅させればいいんじゃないか?」

「一筋縄ではいかないと思うからね。あくまで目的はポストを空けること。もし退出することになっても目的を達成していればなんの敗北感も感じずに逃げられる」

 今度はクローバーの仮面をした人物が問いかける。

「何故ポストを空けるのです?」

「スパイを送るために必要なんだ。僕たちは無能力者集団、だからこそその役割に気付いた。その役割は重要なポストだ。死ねば必ず補充される。そこを狙うためさ」


「取り敢えず、今回はよろしく頼みますよ……()()()さん」


 暗黒に包まれた不穏が外へと漏れだしていた。

 その日の月夜は上弦の月。闇と闇が手を握り、最悪の展開を目論んでいたのであった────

イエローの主語が変わっているかも知れません。それは理由なく単純なる作者のミスです、

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