プロローグ2
「その『ダンジョンマスタ-』っていうのは、迷宮を作ったり、魔物を生み出すことが出来たり、ダンジョンにやってくる冒険者を撃退するみたいなのですか?」
「あら、理解が早いですね」
俺は、異世界系の小説はよく読んでいたから何となくわかる。実際に自分がこういう体験をするとは夢にも思ってなかったが……
「あなたが言ったことであっていますよ。しかし、あなたがこれから行ってもらう別の世界には、ダンジョンもなければ、魔物もいませんよ」
「ダンジョンもなければ、魔物もいない……? それって、俺が初めてのダンジョンマスターということですか?」
「ええ、その通りです。ふふっ、面白そうでしょ?あなたには世界で初めてのダンジョンマスターとして活動してもらいます。魔物はいないと言いましたが、あなたは魔物を生み出すことが出来ます。私があなたにやってもらいたいことは、世界に混沌を生み出すことです」
目の前の女神様は心底楽しそうに笑いながら俺にとんでもないことを言ってくる。
「こ、混沌を生み出すって……?その世界の人を魔物を使って殺せってことですか?」
「いいえ、違いますよ。そうですね……初めから説明をしましょう。あなたにダンジョンマスターとして活動してもらう世界には、魔物はいませんがあらゆる種族が生活しています。人種・獣人・森人・土人・魔族ですね。それぞれの種族が国を持っています。これだけの種族が生活していては当然、戦争が起こるわけです。どこが争っているかは、はっきり言ってどうでもいいのです。 私はね、戦争を見るのが飽きてしまったのですよ。」
「戦争を見るのを飽きた……?」
戦争を見るのを飽きるとはどういうことだろう?女神様が話す際の表情を見ていると、戦争をしているのが、悲しいとか思っているわけではなさそうだ。本当につまらないといった表情をしている。
「ええ、面白くないのです。あなたも同じようなことを見ているのは面白くないでしょう?最初は別の種族同士が争うのを見ていて面白かったのですが、それも長く続けば飽きてしまいます。そこで、あなたなのですよ!!私はね、つまらないことは好きではないの。だから、 あなたには私を楽しませるために、ダンジョンマスターとして活動してもらいます」
俺は女神様の暇つぶしで呼ばれたのだろうか……
「あなたにもいい事でしょう?私は楽しむことが出来て、あなたはダンジョンマスターとして、新たな生をおくれる。いいことではないですか」
またしても心を読まれてしまった。もう俺は喋らなくていいんじゃないか?
「いえ、出来る事なら喋ってくださいね。心を読むのもわずかとはいえ、力を使うので」
「あ、はい。すみません」
「ふふっ、いいのですよ」
「あの、もっとダンジョンマスターのこと詳しく教えてくれませんか?」
説明をしっかり聞いとかなければ困るのは俺だ。俺がダンジョンマスターになるのは、確定事項っぽいからな。
「安心してください。しっかり説明しますよ。あなたは世界で初めてのダンジョンマスターになってもらうわけですが、あなた以外のダンジョンマスターを増やすつもりはありません。あなたが死んでしまったら、考えますがあなたが活動する限り、他のダンジョンマスターは現れません。沢山のダンジョンマスターがいるのもそれはそれで面白いかもしれませんが、私は一人の方が面白そうなので、増やすつもりはありません。さて、あなたにしてもらうことですが、二つあります。一つ目はダンジョンを拡張して、大きくすることです。ただ、大きくするだけでなく、魔物や罠を設置してくださいね。財宝なども置いてください。旨味があれば多くの者がダンジョンに入っていきますからね。どのようなダンジョンにするかは、 あなたにお任せします。もう一つは、ダンジョンの外に魔物を出してほしいのです。ダンジョンで生み出された魔物は、あなたが許可すれば外に出ることが出来ます。外に出た魔物はそれぞれで生殖活動をして、増えていくでしょう。私がしてほしいことはこれくらいです。あと、ダンジョンという未知のものを創造し、魔物という今までいなかった敵を生み出すのですから。 あなたはすべての種族と敵対関係になることでしょう。恐らく出来ないと思いますが、どこかの種族と仲良くなったりしないでください。その種族の1人、2人くらいなら構いませんが、国と仲良くはしないでください。手を取り合うなんて、面白くありませんから」
「てことは、俺には仲間は出来ないということですか?ずっと一人で魔物と一緒に戦えと……?」
そんなの孤独で死んじゃうよ……?いや、魔物でも喋れたりするのか??
「ご安心を。ダンジョンマスターはダンジョンポイント――DPを使うことで、ダンジョンを拡張、魔物の創造、財宝や武器を生み出せます。それに加えて、魔物を生み出すのより多くのDP消費することであなたの配下を創造することだって可能です。そのもの達は人型であなたと共に生活することが出来ます。その者達の種族は魔人としておきましょう。ちなみに、他の種族と似ていたりしますが、別の種族ですがあなたは孤独ということはないでしょう。それに魔物も慣れれば可愛いく思えますよ。どうです?何か気になることはありますか?」
気になることばかりですが……
「魔物を外に出す必要性はあるのでしょうか?」
「魔物を外に出す意味ですか。そんなのそうした方が世界は混乱するでしょう?面白いからですよ。ふふっ。あなたが納得する理由としては、あなたは世界で最初で唯一のダンジョンマスターとして、ダンジョンを作るわけですからね。まだ、ほとんど成長していないのに国の軍などで攻め込まれてしまえば、すぐに死んでしまうでしょう?今まで魔物が世界に存在しなかったとは言え、あなたが行く世界には魔法も存在しますから、弱いままだとすぐやられてしまいます。それを防ぐために魔物を外に出して、ダンジョンから遠い場所で集落をつくらせることで、ちょっとしたカモフラージュみたいになるからですよ。ちなみに外に出る魔物にはある程度命令が出来ます」
やっぱり魔法が存在するのか、ちょっと興奮するな!やっぱり魔法は使ってみたい!しかし、俺は見つかれば殺される、殺されないとしても実験台とかになりそうだな。強くなる必要があるのか。そのための時間を稼ぐためにも魔物を外に出しておけば、目をそちらに向けることができると。納得はできるが、女神様が面白いっていうのが一番の理由だろうなー。この女神様、こんな美人なのに、いや、美人だからこそ余計やばく見えるんだけど……
「美人とは、ありがとうございます。ふふっ、でも、 やばいは失礼ですよ」
「はい、すみませんでしたー!」
怖いよ、笑顔が怖いよっ!
「さて、そろそろ異世界に行ってもらいたいのですが、最後にあなたに名前を与えましょう」
「ちょっと待ってください!もうちょっと聞きたいことがあるんですが!」
「ふふっ、何でも聞くのは良くないですよ。ちょっと説明するのがめんどくさくなったわけではありませんよ?」
あっ、めんどくさくなったんですね。もうそれ、めんどくさいって言っているのと同じですから。
「んんっ。さて、あなたの名前ですが、アラベス。アラベス・オリジンと名乗りなさい。少し安直ですがいいでしょう。あなたが頑張れば、また会えるかもしれません。あ、そうでした。あなたの行く世界にはステータスが存在します。私の提案を聞いてくれた、お礼に少し強力なスキルを差し上げていますので、後で確認してくださいねっ。ふふっ、では、あなたが世界に混沌を生むことを期待していますよ」
「ちょっと!結構大事な事じゃないですか!説明を!!」
いや、名前もそうだし、スキルなんてあるのかよ! 大事な事なんですが!
しかし、俺の意識はだんだんと薄れていった……
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