日本国
内容を少しカットして編集しました。
学校の保健室で泣き崩れるはるか。
なんといっても1番の親友である2人の存在自体が地球から消えているのだ。無理もない。
◇
あんなに活発で友好的なはるかだったのだが、次第に不登校気味になり、休んだ日はほぼ自分の部屋のベッドで泣き、うずくまる日々。
ララとミカがいた世界が偽りであったようなこの世界に絶望しながら引きこもっては泣く。
そんなはるかを見兼ねた両親は、再び病院へ連れて行く事に。
ららとみかのことを説明するが、まるで信じてもらえない。医者は可哀想な者を見るような目で見つめる。
診断結果は重度の鬱病と統合失調症だった。現代の日本の医療ではこうした適当な判断で精神病扱いされてしまい、精神的な病の治療法は抗精神薬を処方するぐらいしか解決する方法がなく、完治するのが難しい。
海外の研究結果などを見習うべきだ。
薬のお陰もあり、次第に泣く回数も減り、2週間ほどで通学を再開することができた。
◇
授業のチャイムが鳴り、着席する。
教師が黒板に文字を書いて説明をはじめるが飛行機の様な音がうるさ過ぎて彼の声はほとんど聞こえない。
あまりにもヘリコプターのプロペラが回転しているような音が大きいので授業を中断せざるを得なかった。
全員が教室の窓に張り付いて外の様子を伺う。
すると男子達のテンションが上がり、口々に雑談をはじめる。
「あれってゼロ戦だよなぁ?」
その一言に更にテンションの上がるクラスメイト達。
そこにはエースパイロットが操縦しているような零式艦上機五二型甲が猛スピードで滑空している。
窓すれすれに通り過ぎると、その風圧で教室の机や椅子が倒れる。
機関銃の砲撃音まで聞こえてくる。
「ヤッベェ…」
生徒たちは完全に見とれていた。特に担任教師は重度の軍事オタクなので興奮が収まらないようだ。
はるかは何かを受信した。
嫌な予感がする…
しばらく学校の周りを飛行した後に、校庭を滑走路代わりに着陸した。
授業を放ったらかして一斉に校庭に向かって走る全校生徒と教員達。
初めて見る歴史の産物にギャラリーの視線は釘付けである。
パイロットが降りてきた。
そのパイロットの姿に全員の空いた口が塞がらない。
「ちょっとどいて!」
人混みをかき分けて先頭へたどり着いたはるかは感情の整理が追いつけない。
レシプロ機から降りてきた人物に見覚えがあったからである。
「ヤッホー!ハルちゃーん!来ちゃった!」テヘペロ
ゴーグル付きの風防に特攻服を着た少女が綺麗な敬礼しながら舌を出している。
「リ、リアナちゃん?!」
そう言うはるかに向かってダッシュで飛びついて来て、2人は深く抱き合った。
「会いたかったよぉ〜!」
「私も♡」
この時、はるかは異世界にいたことが虚偽ではないことを確信して安心した。
しかしなぜこんな登場の仕方をしたのかはるかは問い詰めた。
リアナは1944年に寄ってきて、この戦闘機を貰ってきたのだと言う。
にわかには信じられないが、コレを見ればあながち嘘でもないような気がしてきた。
ヒトラーやルーズベルト、昭和天皇や山本五十六などの有名人とも会話してきたらしい。
いったいリアナという子は何者なんだろうか。はるかのリアナに対する印象がこじれてゆく。
「しっかし日本ってすごい国なんだね〜!この時代に生まれてあなた達は幸せものよ!」
痛いほど両手で両肩を叩いて言う。
「もっと愛国心と大和魂を持ちなさい!」
長い間、大東亜戦争中に滞在していたらしく、かなり当時の雰囲気に影響されているようだ。
「いけないいけない、ステレスかけて置かないと。」
リアナは魔具を取り出して何度か呟く。
すると零戦は姿形がみえなくなり、ギャラリーは校舎へ帰って行った。
「どうして会いに来たか教えてあげるわ!最初言ってたでしょ?」
「魔具について知りたいって」
「ここは魔具の宝庫よ。それと、私、ここの学校の生徒になったの。今ね。」
素敵な笑顔を浮かべるリアナに意味がわからない様子のはるか。
すると担任教師が二人の苗字を大声で呼んで授業に戻るように促した。
はるかはリアナを驚いた表情で見つめた。
リアナは、満面の笑みで見つめ返し、「てへっ私の名前、榎本リアナよ。ドイツと日本のハーフって設定なの。さあ、行きましょう。」
そう言うと先ほどの出来事が何事もなかったかのように事が進む。
記憶操作の魔具を使ったらしい。
同じクラスに完全に馴染むリアナ。授業中にたまに笑顔で手を振ってくる。
しかし、歴史の授業では間違いを指摘しまくるわ
科学の授業では新薬を精製するわで目立って仕方がない。
そんな生活が、数日続いた。
◇
そうしたある日、リアナの住む家にお邪魔することになったはるか。不気味な雰囲気は向こうと変わらなかった。
中に入ると電化製品などが散乱していた。
どうしたのかと聞くと半分ほどは盗んできたらしい。
はるかは激怒した。
全部返してくるように伝えると嫌そうな顔をしている。
すでに大量に向こうに送ってしまったらしく、今あるものだけでも返すことになった。
「むぅ。」
膨れっ面の可愛いリアナだが、はるかは容赦しない。
この時代の日本の常識を根底から教える。
向こうの世界では盗まれた方が悪いという、海外の様な考え方であった。
「わかったわよ、仕方ないわねぇ!」
「べ、別にあんたの為に返しに行くんじゃないんだからねっ、勘違いしないでよねっ!」
テンプレのツンデレを炸裂するリアナ。
盗んだものを次々と元の場所にワープさせていく。
そこで疑問に思ったはるかは尋ねる。
「こっちでもそんな魔具の力使えるの?」
「え?試してないの?」
リアナは不思議そうに見つめる。
全て夢だと思っていたはるかはそんな精神状態ではなかったし、すっかり忘れていたらしく、それどころではなかったので試そうとも思わなかったようだ。
「そんなことよりさ、珍しいもの売ってるところ、ない?」
リアナの少年のような目で見つめる。
「お金持ってないでしょ?」
「お金ってこの紙切れのこと?」
そう言ってリアナはポケットから大量の聖徳太子をばら撒く。
「これ…多分使うより売った方がいいかも…」
はるかは写真を撮り、モロカリに全て出品した。
昔のものが売れることが判明すると、次々と戦時中の物を取り出した。
「これなんか一番お気に入り♡っパクッ」
緑色の瓶から粒を取り出し、口の中に大量に放り込むリアナ。
はるかにも口移しで三錠ほど放り込んできた。
口の中で溶けた瞬間に頭が冴え、脳に電気が走った。
身体は軽くなり、疲労がポンっと抜けた。
今なら何でも出来るような気がして、力がみなぎってくる。
視界がキラキラしていて2人とも瞳孔がガン開きになっていることを確認しあった。
瓶には"ヒ□ポン"と書いてあった。
現代で言うメタンフェタミン、アンフェタミン所謂覚醒剤である。
当時の労働者や兵隊には欠かせないアイテムであったが、次第に乱用したり中毒になるものが多くなり、現在では取り締まる法律があるのはご存知の通りだ。
そんなことも知らない2人はそのテンションのまま遊びに行ってしまった。
後にその事実を知り、数日するとはるかは身体全身が究極な脱力感に襲われたので二度と飲むまいと誓ったのであった。
◇
はるかはモクソナルドでバイトをしている。
今日は待ちに待った給料日だ。
給料を持ってリオナの家に行く。
インターホンを鳴らすが反応がない。
デジャヴを感じたはるかは中へ踏み込む。
案の定、目をバッチリ開けたまま倒れている。
あれから1週間不眠不休でアニメを見ていたらしい。目の下は真っ黒で、もちろん食事もほとんどとらず、水分のみで生きていたようだ。
効果が切れては飲み切れては飲み、を繰り返していたらしく、辺りに瓶が数本転がっている。
今日は2人で家電量販店などにいく約束をしていたのだが、会話が全く噛み合わない。
宇宙人がさらにランクアップした感じだ。
やっと少しずつ会話の辻褄が合ってきたのだが、彼女はヒロポンがどこに売っているのかしか聞いてこない。
「これがポン中ってやつか…」
はるかは諦めて病院へ連れて行くことにした。
点滴を打ってもらい、少しましになったようだが、元気がない。
過剰な寝不足と栄養失調で不眠症と診断され、3種類の強めの睡眠薬を1ヶ月分もらって帰った。
「今日はやめとこ?今すぐ寝たほうがいいよぉ。」
心配そうなはるかを振り切ってリアナは暗い声で「どうしても欲しいものがあるの。」
ボソッと言う言葉にそれは何なのかを尋ねる。
「スマートフォン」
契約くらいなら…大丈夫かな。いや、もしかして新古品でも良いのではないかと思ったはるかは携帯ショップやらへリアナを担いでいった。
店員さんは必死に説明してくれているが、目は下を向いていて全て右から左に流れているようにみえる。
理解しているのかしていないのかはるかのサポートのおかげでようやくスマートフォンを手に入れることができた。
リアナは家に帰り睡眠薬を用法用量通りに飲んでみたが夜になっても寝れなかったので、3倍の量を飲むことによってやっと寝付くことができた。
◇
次の日、秋葉原を徘徊する2人、なんとモロカリの商品が全て売れ、2人は結構なお金持ちになっていた。
「これはすごいわ!すごく欲しかったの!」
リアナは理解力が凄まじく、もうすでにスマートフォンを完璧に使いこなしていて、下調べは完璧なようである。
一気に購入しては携帯魔具に変化させていくリアナ。
荷物持ちがいなくても問題なさそうだなあと安心する。
ひと通り巡ると、アニメやゲームに興味深々で次々とグッツや漫画などを購入していく。
はるかにも色々勧めては購入の繰り返しで、もうクタクタである。
殆どのお店が閉まる時間になり、はるかは先に帰るように言われた。
なにやらやることがまだまだあるらしい。
言われるがまますんなり帰ることにした。
1人になったリアナはナイトクラブへと向かう。
一人一人に声をかけていき、やっと見つけたのは売人であった。
その売人を脅し、一番トップの元へと足を運ぶが、そこは暴力団の事務所で、リアナは不思議に思う。
日本で精製されている薬はほとんどないらしく、次の日には病院や科学研究所へ向かい、持ち前の頭脳で医師免許や色々な研究ライセンスをいとも簡単に習得して材料を手に入れた。
後日、放課後にはるかがリアナの家に遊びに来る。
「これくらいあればちゃんと精製できるわね。」
もうリアナの部屋はレガリア王国にある研究所と変わらないくらいの実験器具などが揃っていた。
一体なにを精製するのか尋ねる。
「何言ってんのよ、あっちに帰るのよ?」
試験管を片手に振りながらリアナは答える。
タイムトラベルは魔具を使うだけで可能らしいのだが、こっちの世界と向こうの世界をつなぐには一度ニエリカを通る必要があり、そのための物質を作る必要があるようだ。
そういえば、はるかは聞きそびれていたことがある。
残りの2人の行方である。
ララとミカの存在を知らないリアナであったが、2人が消えていることについては、難しい話ではるかにはなんとなくでしか理解することができなかった。
日本で2人の存在が消えていることについては、彼女達が向こうに魂と肉体があるために、一時的にこの世界から忘れられているだけであるとのこと。
はるかは心から安心したのだが「早く2人に会いたい!」と告げるが、リアナはもっと日本を楽しみたいらしくなかなか意見が合わない。
しつこく意思を伝えるが話を聞いてない。
「やっとここまでできた!これでいつでもかえれるようになるかもしれないわよ。」
「苦労したわよーほんと。」と、今完成した物質とは別の液体を取り出して「この世界ではアヤワスカとか言う飲み物に少し似ているみたいなんだね、これ。」
その液体も自分で精製したらしい。
そんなことよりも、もっと早く完成させることができないのか?と言う問いに対してはもう少し時間がかかるようで、ガッカリするはるかをよそに「さてさて〜、いいものがそろったところで今度パーティに行くわよ!今日はここで少し楽しみましょう。」
そう言うとリアナは少しサイズの大きな錠剤を取り出した。
それはピンク色で真ん中にハートマークの模様が2つ書いてある。
全力で拒否するはるかの顎を掴んでまたもや口移しでそれをはるかの口内に溶け終わるまで口を離さない。
「苦いっ!なんなのこれ?前と同じやつじゃないの?」
「んー似て非なるものかな。前のやつみたいに毒性はほとんど無いらしいから安心して。あっ錠剤はなにが入ってるかわかんないから一概に無毒とも言えないかもね、はははっ」
30分程経過するとドキドキしてきて、心の奥底から愛が溢れてくるのを感じた。
「はじめよ♡」
そう言うとリアナははるかを押し倒して、軽い口づけを交わす。
はるかは不思議と抵抗する気にならず、まるで感情が繋がっているような感覚に包まれて、トロンとした表情で思わず言ってしまった。
「もっと…ちょうだい。」
自分でも不思議な言葉がでてしまう。
感覚に身を任せ、自分からリアナを抱き寄せ、深いキスを交わし、唾液の橋が架かる。
なぜこんなことをしているのかはるか自身にもわからない。
気づいた時には2人はなぜか夢中になっており、イチャつきが止まらない。
「調べた通りだわ、最高ねこれ」
「なんなのこれ?すごく変な気分…」
「触尻エリカでお馴染みのXってやつらしいわ。」
はるかの首をさすりながらリアナは言う。はるかは声をあげることしかできず、気持ち良さの虜になり何度も顎が上に向く。
徐になにか2つ取り出したリアナがそれを魔具として使用した。
あなたは下、私は上ね。
2人とも気持ちよすぎて動く事すらままならない。
2時間ずっとこのままの状態を繰り返して二人とも大満足であった。
はだけた姿で愛を確かめ合う2人。
これ以上ないような快楽に安心し、抱き合ったまま2人は寝てしまった。
※6話へつづく
覚醒剤はダメ、ゼッタイです。
過去に捕まった使用者と面識があったのですが完全に縁を切りました。
その乱用者による数々の暴挙ぶりを目の当たりにした今だからこそ、日本で撲滅キャンペーンをしたいと思っているほどです。
合法な国で使用する場合はは用法容量を守りましょう。
まぁ、定められた用法容量なんかないんでしょうが。