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アリス

前回の続き。

 



 朝である。



 はるかが1番に目覚めると、ツシンの姿はもうなかった。


 みつながやってきた。


「早くこの子達起こして〜!」


 リオンが目を覚まして、はるかを見てため息をついた。

 働くのが相当嫌なようで残りの2人を全員で起こす。


「そこはローキックやろがいっ!」


 リオンは2メートル吹っ飛んだ。


「あちゃー。」


 はるかは知っている。

 ららは総合格闘技が大好きで極真空手有段者であることを。


「うげぇ、なんて、威力だ。こりゃ…ツシンといい勝負できるんじゃ。いててててっ」


  ららは目を覚ましてリオンに謝る。


「さて、ラストは。おきてーみかちゃーん。」


 はるかはみかを揺らす。


「そこ!ヒール足らないんだよ!」


 まーたゲームやってる夢を見ているんだろうと呆れていると、みかのスマートフォンが光りだした。

 すると如何にも魔法使いが使うような杖に変化し、今にも何かを放ちそうである。


「まずい!全員でとりおさえろ!まずその杖をどかせろ!」


  間一髪のところで杖を奪うと杖はスマートフォンに戻った。

 しかしまだなにかを詠唱している。


「ウォタガ!」


 そう唱えると手から水を放ち、天井を吹き飛ばしてしまった。


 水のないところでこれほどの水遁を…


「うーん、スッキリしたぁー、あれ?夢じゃない?」


 やっと目が覚めたようで。


 魔具なしでこれだけの威力をだせることに驚いたリオンとみつなは、天井、床が水でビチャビチャなことなど気にしないほどの勢いでみかに魔法使いの素質があることを熱弁した。


「よし、みんな起きたな(なんて寝起きのわりぃ奴等だよまったく)今日の予定覚えてるよな?さっさといくぞ。」


「ちょっとまってね。」


 ららは心配そうにみかの使っていたふとんをめくってみる。


「お、オネショじゃないからね!」


  頰を赤らめながら股間を抑え込むみか。

 この癖を治さなければ魔法使いではなくただのションベン使いである。


「みんな準備出来たー?」


 はるかの声に全員が頷いた。



 ◇

 

 冒険者ギルドに着いた一行。

 リオンに手取り足取り教えてもらって冒険者登録を済ます3人。


 いい仕事がないかボードを見つめるリオンとみつな。


「これもーらいっ」


 そういうとみつなは張り紙を剥がして去っていった。

 リオンは戸惑っていると、自分を呼ぶ声がした。


「もし、あなたリオンくんではありませんか?」


「ゲッ…なんでここって知り合いに会っちゃうかなぁ。」


 そこに現れたのはリオンの知り合いで魔法使いアリスという名前で、ベテランオーラが半端無い。


「やっと真面目に働く気になったのね、ウフフ」


 彼女も少年時代、実家が近所でよく遊んだらしく、リオンのこともよく知ってる。

 仕方なくギルドに来る羽目になったことを言うがあまり信用されていない。

 久しぶりの再会に少し楽しそうに会話していた。

 元々一匹オオカミのようなリオンに連れがいることが珍しいらしい。


「登録終わったよー!」とはるか達がやってくるとアリスは驚いた。


「この子達…異世界から召喚されたわね?」

 なぜわかったのか不思議そうに見つめる3人。


「なんでこんな子達連れてるの!?ってさっきツシンくんがどうとか言ってたわね。」



「ああ、だけど言葉わかるの俺しかいなくて困ってんだよ」


「なるほどね。あなたの力だけではどうすることもできないわね。」


「そうなんだよなぁ〜なんかいい方法ないかぁってさ。」


 リオンは肩を落としながら3人にアリスを紹介する。

 頭を下げる召喚組。


「なにを気を落としているのかしら?リオンくん。」


「だって俺通訳だぜ?ツシンには借りがあるから仕方なく付き合ってやってん…」


「あなた"だけ"の力ではどうすることもできないと言っただけで方法ならあるわよ。そのコピーした魔具を出しなさい。」


 相変わらずまわりくどい言い方をするなぁとおもいながらリオンが通訳すると3人はスマートフォンを手にし、翻訳アプリを起動した。


「はい、今よ。コピー能力のスキルを使って。」


 もう能力を得ているのだから意味がないことを言ってもアリスは「いいから」といって聞かないので試しにやってみる。


 3つのスマートフォンからスキル魔方陣が浮かぶ。

 アリスは杖をちょんと魔方陣をつついていくと、もう一つ違う型の魔法陣が重なって浮かび、リオンに何か暗示をかけている。


「クレプトオール!」


  アリスの詠唱とともに2つの魔法陣が3人の脳を駆け巡る。


 3人ともリオンやアリスの走馬灯のような記憶や文字が一瞬で駆け巡った。


「すごい…わかる。」


 はるかの目がバッチリ開いた。

それはまるで自分がコンピューターでアップデートされいる感覚が一番近いと思う。

 3人はアリス様マジ天使〜、みたいな気持ちで感謝を伝えた。


「お?こっちの言葉わかるようになったのか?」


 帰ろうとするリオンにフードを掴むアリス。


「あなたはこの子達を手助けする使命があります。」


  上級魔導師アリスは人の定めや運命、オーラなんかも見えたりする超人である。

 とにかくはるか、みか、らら、のいずれかと共に行動しておかなければ災いが起きると予知する。

 それは困るので仕方なくうなづくリオンに3枚のクエスト張り紙を突き出す。


「今日は私も御一緒致します。宜しいでしょうか?」


  是非とも断る理由などありませんと3人は嬉しそうに答える。


 舌打ちをしながら渋々ついていくリオンであった。



 まずは魔具の使い方から、とアリスさんに色々と教えてもらう3人。

 道中覚えることが多すぎて頭がパンクしそうなララ。

 必死にメモを取るミカ。


 ◇


「さて、この辺のはずよ。」


 3人は来たことのない森の中で一気に緊張感が高まる。


 木陰から大きな狼が飛び出してきた。


 この森で行方不明になった情報が多いらしくおそらくはこの大狼のせいではないか、とクエスト紙に書いてある。


「リオン、あなたは手を出さないで。」


「女の子に危ない目をあわせるのは性に合わないんだがね、ピンチにはお助けさせてもらうぜ。」


「さぁ、さっき教えた通りにやってみなさい。」


「はるか、いくよ。」 「うん。」


 ららはスマホを振りかざした。

 するとまるでスーパーサイア人のように体の至る所が気のオーラに包まれた。


「オォラァあ!」


 狼に鋭い飛び蹴りがヒットし、ひるむ。


「はるか!」


「いっけぇー!雷剣!」


 雷を纏った刀が狼の側面を切り裂く。


「浅いわ。」


 アリスには敵へのダメージをも把握できる。


「ようやく私の出番ね!みてなさい〜っ!」


「我に秘められし混沌の力よ、古の鼓動をもって我が願いに応えよ!」


  「究極魔法アルテマ!」


 眩い光とともに球体の無属性の魔法の塊が辺りを覆い尽くしたと思ったら、全ての光の玉が色を変えて天へと消えていった。


「あれ?」


「教えた通りにやりなさいっていったのにこの子は…

 」

「ん?」


「あら、これはまずいわ!」


「プロテクト!」


 アリスは全員分を覆い被せられるようなバリアを張った。

 するとすざまじい魔法の塊が大量に空から大粒の雨のように空から降ってきた。


「なんて魔力量の塊なの!?この私でも防ぎきれるかどうか…くっ…まずい破れそうだわ。」


 間一髪のところでアルテマ(ドラクエで言うところのイオナズン)の雨は降り止んだ。


「魔物は?まさか私のアルテマに跡形も無く消え去ったかぁ!ざまぁwww見た?私、凄いでしょ!」


 全員がみかを冷たい眼差しで見つめる。


「てめぇ!俺たちを全滅させるつもりかよ!ふざけんなぁ!」



 その時、先程の狼と思しき遠吠えが響き渡った。

 まだ生きていることにショックを感じて手を開けた口にあてて驚くみか。


「なんか、すごーく嫌な予感がするんですけど。」


「はるか、わたしも。。。」

「ん?」

「なんか聞こえない?」

「なんてゆーか大量にケモノが吠えながら走って来るような…」


 ららは耳がいい。




 走って来たのは魔物の大群であった。

 先程の傷を負った狼や大きなゴリラの魔獣もいる。


「これはとってきたクエスト一気にコンプリートできそうね。」

「畑荒らしの魔物ちゃん達と、ミディストオオカミに、オークゴリラちゃん。」


「あなたたちは小さい魔物を相手しておきなさい。私達は中ボスちゃん達相手にするから。」


「冒険者も捨てたもんじゃねぇな。ワクワクしてきたぜ、アドレナリンってやつ?」


 ここまでやる気満々のレオンを観たものはかつていないだろう。


 ダガーナイフを両手にカッコよくクルクル回しながらナイフから空気砲を飛ばしまくる。


「俺はこっちの狼をやる。」

  「いけ!ガルーダ!」


「そのゴリラは俺にはまだレベルが足りねえ、

 頼んだぜアリス!」


「御意。」


「ららちゃ、気を抜いちゃダメ!もう一つ教えてもらったでしょ、スマホはこの世界で最強の魔具っぽいんだから、それを纏ってる今のららちゃなら大丈夫!」


「うん。やってみるね、」


  ららは雑魚モンスターを殴り蹴りに加えて扇風機のステッキで風魔法を繰り出す。

 すでにミカはスマホを杖に変えているしララは手足にオーラを纏っている。


 そこでふとはるかは思った。

 カラオケマイクが日本刀なら私のスマートフォンはどう変化するのだろうかと。


 そう考えているだけで手元の文明の利器が光りだす。


  むむっこれは…







「えっこれも日本刀かいっ!、まあええわ!」

  「宮本武蔵式二刀流じゃあああああい!!」


  少しヤケになっているが身体が軽く感じ回転しながら魔物をバッタバッタ切り殺していく。


 みかは股間を押さえたまま動けない。


「見てなさい、これが正しい魔法の使い方よ。」


「ミスティックランバード!」


 アリスの呪文は杖から鋭い魔光弾が飛び出してゴリラの首以外を粉々に消し去ってしまった。


 ミカは憧れの眼差しでアリスを見つめ、この時決心した。

 この人に一生ついていこうと。 (股間をぬらしながら)


「トドメッ!」


  脳天への一撃で大狼の動きは止まった。


「くっそ頬に爪跡もらっちまったぜ…えっとこれって首持っていくと報酬と交換してもらえるんだっけ?」


 リオンはクエスト初心者である。


「私はね。あなたもそうすれば?」

  「流石に雑魚は、リプレクト!多いし念写魔具で証拠映像や画像があれば大丈夫よ。」


  話しながら残りの雑魚をスキルや魔法で倒していくリオンとアリス。


「後50匹くらい?だったはずよね?」


「ええ、キリがないわね。」

  「ん?敵の数減ってない?」

  「 え、もうでかいの倒しちゃってるの?

  二人とも?!」


 はるかは2人の強さに脱帽した。


「遅いわよ〜もっとどんどん倒しなさい。手伝ってあげてるんだからペースあげて!」


  その時、ミカの目付きが変わった。

 杖を回しだしたのである。


「全体魔法、クエイガ!」


 すると地面の割れる音が遠くから聞こえる。

 いかにも大地震がきそうな魔法ですよね。


 アリスは急いで箒に乗りはるかとららを抱えた。


 大きな音とともに周りの木々は倒れ、地面はぐちゃぐちゃになり、魔物は全て討伐された。


 術者は股間からの染み込み以外無事であった。


「リオンは?!」


  アリスは必死にリオンの生命反応を感知し、近くへおりた。


「う、うぅう… こんなでっかい木の上なら安全かと思ってたのに…」

 リオンは木に挟まって動けない。


「まかせて。」


  ララの怪力で大木が持ち上がったので、そのすきにはるかとアリスがリオンを救出した。


 

 魔物の大量の死体の写真と大きな2つの首を持ってこの場を去る。


「あなたちょっと私のところに来なさい。鍛えてあげるわ。」


 みかにとっては願ったりかなったりなのだが、みんなの怒りに気づかない鈍感なミカちゃん。


 ◇


 冒険者ギルドに着くと、首や証拠を差し出して報酬をもらった。


 疲れた表情の4人。


「あれ?リオン氏は?」


 アリスは察した。


「私の分の報酬は半分分けてあげましょう。」


  3人は意味がわからなかったが、すぐにその優しさの意味にすぐ気が付いた。


「あれぇー?ない!ないないない!私が報酬持ってたはずよね?みかちゃ、ららちゃ、もってない?」


「これってまさか…あのクソ野郎め。」


「イケメンリオン氏、ぬかりねぇな。」


  彼が盗賊であることを忘れていた3人。

 見事に報酬を全部持っていかれてしまったのだ。


「そして貴方は今日から私のところに住み込みなさい。」


  アリスはどうしてもこのままのミカを野放しにはできないようだ。

 ミカは喜んでついて行った。


 これが地獄の始まりだということも知らずに…



「またね御二方には紹介したい人がいるから明日またここに来てちょうだい。」


「紹介したいひと?」


 ららは不思議そうに聞いた。


「魔具の扱いに長けた、というより魔具オタクね。色々教わることもあるかもしれないわ。」


「わかりました。アリスさん、今日は色々ありがとうございました。」


    はるかも同じく圧倒的感謝を伝えると2人は去っていった。


「ミカいないのちょっとさみしいねぇ」


「まぁね、みかちゃ、なんかこっち来てからなんか前と変わったっていうか 生き生きしてたからねー」


 アリスさんに元の世界への帰り方を聞くのを忘れて落胆しながらツシン宅へ向かう。



「あれぇー?早かったんですねえー。」


 みつなは簡単なクエストをさっとこなしてきたようで先に帰っていた。


「さて、ご飯にしますかぁー」


「それ、なんだけどぉ、私たちに任せてもらえないかな?」


「構いませんが…料理得意なんですか?」



 はるかは毎朝早起きして自分の弁当を作るほどの腕前でららはたまに手伝いをするくらい。


 ただ食材は似ているのだが、この世界はただ混ぜただけであったりそのままかじったり、調理の技術がほとんどなく調味料の使い方も適当である故、まともな飯を食らいたい一心であった。


 ◇


 料理が完成した頃、ツシンが帰ってくる。


「おかえりー」


「ただいま。あれ?話せるようになってる…」

  「ん?そんなことよりなんだこのいい匂いは?」


「へへーん、ちょっと頑張っちゃいましたぁ〜。」

  「どうぞ召し上がれ。」


  ツシンとミツナは一口食べた瞬間大声でうまい!と大声で叫んでしまった。

 これ以上ないがっつきようでおかわりが止まらなくなりなくなった。

 こんなうまいもんはじめて食べたのだろう。

 今日の出来事やリオンのことを話しているうちに2人はすぐに寝てしまった。


「私たちも寝よっか!」


「そうだね、ただし、寝起きローキックだけは勘弁してよねw」


「わかってるっていくら寝ぼけててもはるかにはそんなことしないよぉ〜。」

「 レオンの奴次に会ったら本気で殺してやる。」


 ららちゃはおこらすとこわいんだよなー

 とか思っているうちに2人とも寝てしまっていた。



 ※4話へつづく

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