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魔法とお漏らし

分けてみた。

 

「もう通訳疲れたぜー、お前らこっちの言葉覚えろ!日常会話くらいなら教えてやるから。」

「それか何かこっちの言葉が日本語に聞こえるスキル、つまり俺の能力を与えることができるやつがあればなぁ」


 シーフの能力は盗むことだけであり

 その盗んだ能力を人に与えることはできない。


「で、魔法なんだが…」


 みかとららは息を飲み込んで楽しみそうにしている。

 特にみかは目がキラキラして憧れのまなざしでレオンを見つめる。


「俺、魔法苦手なんだよねぇーw」



「ふざけんな。」と言ってレオンの胸ぐらを掴むララ。


「こればかりはイメージと鍛錬しかないんだよ。」

「強く念じて出てきた呪文を唱える、とくらいしか教えてやれねぇ、離してくれ。」


「俺も肉弾戦が得意だから修行僧モンクになるために修行してるんだけど、やっぱ召喚士は冒険者なら誰でも通る道なんだよな。」

ツシンの道のりである。

「あぁ、そうだ、はるかだっけか?昨日のカミナリみたいなやつもう一回見せてくれよ。」

 レオンがはるかにツシンの言葉を通訳した。


「わかった。やってみる」


 そういうとはるかは心を落ち着かせて念じてみる…



 すると刀が光り始めた。



 が、



 肝心の呪文が出てこない。


「あれ?昨日、私なんて言ってあれやったんだっけ?」


 ららとみかはずっこけた。



「ちょっと拝借」


 レオンはららの通学カバンを漁りだした。


「ちょっとあんたねぇ。」


「ん?これも、これも魔具だ!」

「なんだこの袋は宝石箱じゃあないか!」


「おい、これつかって念じてみろ」


 レオンのシーフの能力は鑑定というスキルもあり

 遠くのものでもお宝を見つけ出すのが大得意なのだ。


 ぽいっと投げられたのは小さな扇風機だった。


「よっと。うん。」


 ららは授業に全く必要のないものがカバンに沢山入っている。


 小さな扇風機を片手に持ち念じてみるらら。

 スイッチも入れてないのに羽が回転を始め大きく光り、扇風機はバトンのようなステッキに変化しはじめる。

 頭の中に"風"という漢字が浮かぶ。

 これか、と思いららは叫んだ。

 

「ふうっ!」


 するとステッキの先から螺旋状の風が勢いよく回転しながら飛び出した。


「すっごーい!次、私!貸して貸して!」


 続いてみかがステッキを持って得意げに回転させながらポーズを決める。


 彼女はバトン経験者であった。

 そして念じる。

 光るステッキに頭の中に"風"の文字。


 …しかし彼女は耐えられずハマっているネットゲームの風魔法の呪文を唱えたくて仕方がなくなりつい叫んでしまった。


「エアロガ!」


 すると凄まじい勢いの風が辺りを覆い、放った先の木をまるごと吹き飛ばしてしまった。


 どうやら頭によぎった文字と違う言葉を発しても魔法は発動するようである。


「ほ、ほげぇええ。」


 ミカの目は黄金色に輝いてよだれを垂らしている。


 放った魔法に感激し、自分の能力で夢にまでもみた魔法を使えたことが嬉しくて嬉しくて気持ちよくなりすぎてしまったようでウレションしてしまったようである。


「俺のガルーダ並みの威力だぜ…すげぇよミカちゃん!」


 アヒル座りのままうしろに手をついた彼女は地面と仲良くなったようでそこから動くことすらできないほど興奮してしまっている。


「とりあえずこの状況どうにかしよっか。」とはるかは心配そうにみかを見つめる。


「お前んち広いしちょいと連れてってやれば?」


 リオンには家はないのでツシンに頼むことにした。

 口笛を鳴らすとリオンの召喚獣、ガルーダが風に包まれて現れた。


 その出で立ちは正にザ・召喚獣という感じだ。


「そこのイッちゃってるやつを乗せてってやってくれ」と、リオンは紳士的にみかをガルーダに乗せて

 ツシンの家にみんなで押し寄せた。



 ◇


「へーここがツシンの家かぁ、とりあえず洗濯は私たちがするから代わりのジャージとかある?」


 リオンは翻訳に戸惑ったがツシンは布を何枚か渡した。


「絶対みちゃダメだからね。」と、ららは怒った表情で2人に言いつける。


 恥ずかしくて何も言えないみかに、はるかがそっと布を巻き付ける。


「ちょっとだけなら…ちらっとな。」


 と下心を見せるリオンに対して、ららは膨れっ面でリオンをひっぱたいた。


  ついでに全員の服を慣れない手つきで洗濯板をこするはるかとららとみか。


「お風呂に入りたいんですけどー。」

「宿屋にシャワーあったのびっくりしたけど、そういうのあるの?」


 ららは限界そうに言う。


 3人の布切れ姿にさらに興奮しながらツシンは言った。


「大きな湯船もあるぜ」


 リオンが訳すと3人は感激した。

 どう言う仕組みなのか魔具というのを使えば、なんと風呂も沸かせるらしい。


  この世界では魔具が電化製品のように使われているようである。

 それならもっと技術が発展してもいいものだと思ったがそれなりに事情があるようだ。


 魔具の使い方や仕組みはこの世界の人間もちゃんと把握している者はあまりおらず、便利な反面、すぐ使えなくなったりする物もあり、謎が多い代物なので高額な取り引きに使われるものもあったりする。




 3人が楽しそうにキャッキャウフフしながら入浴しているのを聞いているとリオンは立ち上がった。


「もう我慢できねぇ。覗くぞ!」


 現場にダッシュするリオンを力さながら取り押さえるツシン。


「俺もその気持ちは負けない、だがダメだ!

 あいつらは俺の召喚奴隷なんだぞ!」


 少し我慢をした様子で怒りをあらわにしながらリオンの頭を押さえるツシン。


「そんなんだからお前は18になってまだ童貞なんだよ!」と、わけのわからない理屈を並べるリオン。

 聞こえてくる声に2人はにやけながら想像を膨らませていた。


 ガチャンと音がした。

 ツシンの妹が帰ってきたようだ。

 ツシンは事の根端を隅々まで彼女に説明した。

 そうしている間に風呂から出てくる3人。

 リオンの通訳を介し、一人一人自己紹介していった。


「私はツシンの妹のみつなよ、よろしくね。今日はゆっくりしていってね。」と、歓迎している様子だ。




 ここで家庭の事情を話すことに。

 彼の父親は国王軍の軍兵であり帰ってくるとしても半年に一度ほどで、あまり父に会えないことなど。


 現在いる場所はレガリア王国の城下町の南方であり、となりの帝国と絶賛戦争中なのであるが、それよりも魔物が急に街に現れたりする事件が最近多発しており、それも帝国軍の差し金なのでは?という噂も広がっている。

 なので冒険者や軍兵を目指すために召喚獣を使役する若者が多いのである。

 そのためモンクという過酷な職業の修行中に自分だけ弱い召喚獣しか扱えないツシンは修行に集中出来ず、禁忌とされる2度目の召喚をリスクまで抱えてやり遂げたのである。


「そこまでして私達を…」


 少し不安そうな表情のはるか。


「なるほど帝国か…ボク達でなんとかしようよ!」


 完全にすっかり主人公気分のミカちゃん。


「いろいろ事情あるのわかるけどさぁーなんで戦争なんて意味のないことするんだろうね。」と、歴史が苦手なららちゃんが申しております。


「帝国の奴らが悪いんだ!奴らは領土を拡大するためには手段を選ばない。」

「だから親父もずっと徴兵されている。」と怒鳴り気味のツシンにみつなが気を使いって

「しかし賑やかになったわね〜。みんな仲良くしてよね。」と場を和ませようとする。

 が、緊張した空気は軽くはならなかった。

 そしてみつなも曇り顔を見せる。

 肩に乗ったキュラが「キュー」と泣き出した。

 そう。家は大きいが最近の饑饉で生活が苦しいのである。


「正直言ってこれからお前らを養うお金はないので生活費は自分達で稼いできてくれ。」

「俺は明日老師のところにモンク修行に行ってくる。もう少しで新しい技を習得できそうなんだ。」

「お前達は明日冒険者ギルドに行って

 クエストを受けてこい。」と唐突にツシンは言う。


「えっ!?俺も?」


 リオンがいなければだれが通訳するというのだ、しかたがない。


「分け前は半分だ。」


「そこまで言うなら仕方ないなぁ…俺が真面目なクエストなんて何年振りだよ。…いいぜ。」と、気を落とした瞬間に何かを思いついたようにリオンは不適にニヤついた。

 今晩は全員ツシンの家に泊まる事となった。


 ※3部へつづく

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