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異世界生活

 ◇


 そのまま酒場に連れられる3人。

 その佇まいはまるでヨーロッパ風のファンタジーあふれるようなな街並みの中にあった。

「よくやったなぁ褒美だ、食え。」と、言われても彼が何を言ってるか全くわからない。

 さらに何が入ってるかわからないようなものばかりの料理のようなものに手を出すはずもなく、ららは思い立ったようにスマートフォンで翻訳アプリを起動した。


 彼が言葉を発するたびに近くにあてては言語変換を繰り返す。


「ダメだ。どの言語も違う…ってことは私たちどこにいるの?」

 間違いなく日本でも外国でもないようだし、見たことも聞いたこともない世界が広がっていたので状況が全く飲み込めない。

 鼻を大きく膨らませながら発言する者がいた。

「まさか、この展開は最近のアニメでよくある異世界転生?!」

 この状況で少しテンションが上がって興奮気味のみか。


「でもこの人まるで言葉も通じないしまるで私たちを奴隷のような扱いしてるし、どうしよう私たちこれから帰れないんじゃ…」


 心配し始めるはるかをよそに身振り手振りで意思疎通を図るらら。


「なんだ何か伝えたいのか?」

「さっきからこいつらにはこいつらの"言葉"みたいなのがあるようだな。」

「つまりそれなりの知能があるかもしれない…よし。」

 今まで人としての扱いをしていなかったがここで彼はやっと人として認識した様子だった。

 急いで紙とペンを取り出して3人を召喚した経緯などを絵に描いてみせた。

 この世界には魔物がはびこっていること、召喚士という職業、仕組みなどをこと細かく伝えようと試みる。

 その絵を見るや否や「やっぱり異世界転生だよ!来ったーこの展開」

 転移と呼ぶべきべはないかと言うツッコミは誰もしなかった。(でも確かに死んだ感覚はあったかなぁと思えばそれはあながち間違いではない)

「みかちゃんってこんなキャラじゃなかったような…」


 しかしこうしていても状況は変わらない。


 ふと思い出したようにみかの特技を思い出した。

「みかちゃんってさ、漫画とか描いてたから絵上手いよね?ちょっとこいつに簡単に伝えてみてよ。」

 ララはミカを綺麗な目でうったえる。


「わかったなりぃ」と、目を光らせながら上機嫌で燃えるようにペンをすべらせた。


「私、ちょっと…疲れたみたい。」


 急にはるかが倒れるように机に眠りかかった。


「大丈夫?」と目をつぶるはるかの背中をさすりながら心配そうな表情で見つめるらら。


「あれだけの魔法エネルギー使ったんだからそりゃそうなるよな。」


 当たり前そうに寝込むはるかをよそに、みかの絵の上手さにビックリしていたツシンであった。

 

 そして1時間程夢中で描いたみかの漫画はツシンに衝撃を走らせて見せた。


「こんな…世界が、こんな世界からきたのか?」


 驚きを隠せないツシン。

 それよりもツシンはこの漫画という伝わりやすさのデカイ代物に一番驚いたのだ。


  日本の技術やテクノロジー、スマートフォンがもし繋がっていたらなどを鑑みると、ツシンにはとても想像を絶するものであった。


「言葉は通じないかもしれないけど聞いてくれ。」

「ってか描きながら説明するわ。」


「俺は召喚士としては落ちこぼれでな。みんなに馬鹿にされてきた。だからよく揉め事が多くて素手の喧嘩なら強いんだけど…」だから他の職業も習得寸前なのである。


 ツシンのことを信用したのか出された飯を食べ出すららにみか。

 相当腹が減ってら様子だ。

「だから友達は1人しかいなくてさ、また紹介するよ!

「ってそんなことはどうでもいいよな。」

「しかしよく寝るなぁ、おい!起きて飯食わねーと魔法エネルギーも回復しないぞ!」



 ツシンははるかを優しく揺らし起こす。

 しばらく揺すられたのちに目の冷めたはるかは親友2人を見ながらおもむろに食事を取り出す。


(なんでここにいるんだっけ…)


 はるかはかなりボーッとしている。


 ご飯を食べて水を飲み干すと、はるかが急に立ち上がった。


「早くお家に帰らなくっちゃ!お母さん心配してるよ!」


「どうどう。おはよーはるかー、落ち着いて考えようか。」

「まずここがどこかもわからないんだよ?」

「とりあえずコイツに帰りたい意思を伝えみてくれない?みか。」


「ほいほいっとな」


「帰りたい…?のか?…とは言っても召喚して元の場所に返すことなんかできないぞ?」


 という意思を紙に描いて表す。


「どうやら私たち…」


「帰れないっぽいね↑」


「ええええええっ!?もう寝る時間だよぉ」


 絵の描き合いであたりはもうすでに真っ暗であった。


「宿屋でもとってやるよ。ついてきな。」


 

 十分ではない宿屋に3人は泊められることになった。


「じゃあまた明日来るから、おれは自分家で寝るよ。逃げようとしても主従契約があるから逃げられないからな。」


 いつも授業中に窓の外を見つめながら充実はしているがどこか物足りない表情をしていたはるかであったが、ここまでの事が起きるとまでは予想もつかなかった。


 非現実的な出来事の多さに疲れていたのか、3人は少し会議をしてはすぐに寝ついてしまった。




  宿屋の帰りにツシンは石を投げられた。

「おいツシン、お前また召喚失敗したんだって?」

「今日の魔物を倒したのはたまたま弱かったかららしいぜ」


 近所の悪ガキどもだった。

 確かにレベルの低い魔物だったが、決して常人には倒せないものだったことは明らかだった。

 それに自信を持ったツシンは


「見てろ!これからが俺の物語だ!」


「何言ってんだコイツ。」

 

 悪ガキ達が群れてヘラヘラ笑いながらツシンを馬鹿にして言う。


「また俺のゴーレムにやられたいみたいだな!」


  悪ガキ達のボスである彼の名はドラン。同じ召喚士である。


「おっそうだな、今度召喚士同士バトルしようぜ。」


「いいぜ、絶対負けねえ!」


 この召喚士バトルというのは正々堂々戦うポケモンバトルみたいなものであり、召喚士本人の攻撃も可である。


「じゃあまた今度な。逃げんじゃねーぞ」


 こんなに強気なツシンは珍しく思えた悪ガキ達。


「そっちこそ!」と返したドラン達は帰って行った。


  実はツシンは以前にも召喚を試しており、小鳥のようなドラゴンがいる。

 しかし体も小さく大して大技も使い道もわからないので負けっぱなしであった。


(今度こそ…)


「おいで」


  というとどこからかそのドラゴンが肩に乗る。

 名前はキュラと言う。

 召喚獣の中ではペットと呼ばれる存在で、バトルには向かないが特殊能力を持つものもいるのだが、キュラの潜在能力はもちろんまだ使い方がわからない。



 さて、俺も寝るか。と思い自分の家に帰って行く。



 ※


 次の日。

 3人を起こしに来たツシン。


「なっかなか起きねーなぁ」


 最初に目を覚ましたのははるかであった。

 辺りを見回して家でないことにすぐに気がついて、昨日のことを思い出した。

「んん~!やっぱり夢じゃなかったかぁー、お母さ〜ん。」


 起こされた人物を見つめながら、またコイツかよと言いかけて残りのの2人をゆすり起こす。


「今何時〜?学校行かなきゃあ〜」


 ららは寝ぼけている。


「撃たなきゃ殺される!」


 こちらも寝ぼけている。


「さてと、今日は何されるのかなぁ」と不安そうにツシンを見つめるはるか。

 数秒見つめられると頬を赤らめながら少しドキッとしたツシンであったが我に返り神妙な面持ちで語りかけた。


「今度お前達に頼みたいことがあるんだ。」


 はるかは何を言ってるかわからないので、そのキラキラした目に対して首を傾げた。


 そうして宿屋を出て料金を払うツシン。

 それを見て少し申し訳なくなるはるか。


「しっかし昨日すごかったねーはるちゃん!」

「あの雷と一緒に刀振りかざすところ!」


「あの時は無我夢中であんまり覚えてないなぁ〜」

「って言うかこの刀かっこいいよね!」

「竹刀より軽くて振りやすいし、ほら、ほら!」と、得意げに日本刀を振り回す。


「ちょ、はる氏危ないって!しかも銃刀法違反だよそれ!こんな人のたくさんいるところで振り回したら危ないって!」


 みかが注意を促す。


 確かに周りの目は完全に不審者を見る目であったが腰に剣のようなものを備えている者は少なくなく、まるで通報する様子もない。

 この世界は警察という概念はなく、近しいのが王都軍であるが、この街に駐留している軍兵は少ない。

 犯罪が起きれば周りの人が犯人を取り押さえるといった方法でしか逮捕されることはほとんどない為、少しの犯罪が見逃されてしまうのが問題であった。


 そう言いながら街を歩いているとららが男とぶつかった。


「あいったー!」


「おっとごめんよ。」


 と男は言い放ち、素早く走り去って行った。

 ツシンはもしやと思い男を追いかけるがなかなか追いつかない。


「やっぱりか。」と目を凝らし逃さないように走り去っていってしまった。


「ちょ、ちょっとおー!」

 当然置いていかれる彼女たち。

「待ってよぉー!」と言わんばかりにらら達もツシンを追いかける。



 数分走った後にやっと足を止めた。

「はぁ、はぁ、やっと見つけたぜ…」


  裏道に先回りして待ち伏せをするツシンは息が上がっている。

 するとフードを被った怪しい男が近寄ってくる。


「この回り道を知ってるってことは…」


 さっと高いところからフードの男が降りてきた。


「このルートで盗みをするってことは…お前だよなぁ、リオン。」


 暑く被ったフードをあげると背の低い金髪の美少年が現れた。




「あーそうだよツシンくん。」


 2人はハイタッチをかわしツシンがリオンの首に腕を巻き付けた。とても仲が良さそうな雰囲気で二人は笑顔で戯れている。


「まーたお前はそうやってすぐ人のモノを盗む。」

「俺の召喚奴隷から何を盗み取ったのかなぁーリオンくん」と、スリーパーホールドしている力を徐々に強めていき、締め付ける。

「うぐぐぅ〜!ギブギブ!お前に力じゃ勝てねえよ。これだよこれ、珍しいもんだったからつい」


 するとリオンは苦しまぎれにポケットからララのスマートフォンを取り出したその時。


「あー!それ、あたしのスマートフォンじゃん!かえしてよ!」指をさしながらリオンを睨みつけて怒りを抑えられない。

 

 息のあがった3人が遅れてやっと追いついてきた。膝に手を当てて呼吸を整える。


「何を言ってるのかわかんねえなぁ、ちょっとだけ見せてくれよ。」


 ツシンはリオンのことを信用しているのか腕を少し緩めた。


「なんだこれ!光る魔具じゃねぇか!こんなお宝見たことねぇ、どれどれ…」


 ららが取り返そうと襲いかかるとツシンは


「おすわり」と言うだけでららは正座したまま動けない。



  スマートフォンの画面はたまたま翻訳アプリを起動したままだった。


「俺の能力は"ぬすむ"事なんだぜ。見てろ!」


 そう、リオンはすでにシーフとしての"職業"を会得している。

 職業を取得していると、それに相応した様々なスキルというのが使えるようになり、特殊能力を得ることができるのである。



 すると小さな魔方陣が翻訳という機能を盗み取った。

 リオンは日本語だけでなく地球語までを会得してしまったのであった。

 脳に世界中の文字が駆け巡るのを感じた。


 すると正座したまま動けないららはむすっとした表情で「ちょっと!この体勢辛いんですけどー!」と、リオンを見つめる。


 なにかを理解した様子でららを指さして「おい、ツシン、この奴隷のおすわりを解除してやれ。」


「お、おう…」一瞬なぜそんなことを急に言い出したかわからなかったツシンだか言う通りにした。


 解除されて少し解放された気分で肩を回しながらリオンを睨んで「はぁーきつかったぁ、早く返してよ!」


 文字が流れ込んできたことに感銘を受けた表情でリオンは問う。

「お前!この魔具をどこで手に入れた?」


 リオンはツシンからしたらわからない日本語を話して会話をやり取りできていることに驚いた。

 ららは急な日本語を話しだしたリオンに驚きながらも

 身ぶり手ぶりを交えて、この世界に来たことや昨日のことの顛末を全て話した。


「ツシンお前ってやつはいつかはやると思っていたがここまでやるとはな…恐れ入ったぞ、これ」


 呆れながも安心感を表したはるかが、「はぁ〜やっと日本語話せる人いたよー、よかったぁ、ねぇ、リオンは私たちの世界の人なの?帰り方教えてよ!」


 残念ながら自分の能力で今日本語を会得したばかりなので地球人ではないということを伝える。


 がっかりするはるか。


「帰る方法…か。」

「残念ながら今までのケースでは別の世界から召喚された魔物や人はいないんだ。」


 召喚術とはこっちの世界の魔物と契約し、使役する力のことであり、本来ならば遠くのものならともかく、異世界からこちらに呼び出されるというのはほぼ有り得ないのである。


「ねぇねぇ、イケメンレオン氏〜」

「なんではるかだけ魔法みたいなのんが使えるの〜? 私たちも魔法使いたいなり。」


 元の世界に帰るよりこの世界の仕組みについて知りたいみか。

 彼女はこのファンタジーな展開に興奮しており帰ることなどまるで考えてない。


「魔法ねぇ、コツさえつかめば念じるだけでいけるぜ、場所を変えよう。」と、言いながら両手にダガーを光らせて


「空波斬!」


 といって飛び跳ねる衝撃波を2つ放ち、

 建物の屋根を壊してしまった。


「と、こんな感じでな、急ぐぞ!」


「おい。レオンてめぇ。」


 ツシンは呆れながらみんなを連れて走った。




 道中はるか、らら、みかがどうしたいのかどこから来たのかという話を昨日より詳しくツシンに翻訳した。


「この辺でいいかな。」


 あたりは木が少し生えた程度の町外れの草原であった。

コンパクトにしたいなぁー

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