挨拶すれば友達ですか?(1)
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「いやー!昨日の最終回は作画ヤバかったわ!今期は豊作だったなあ!」
昼休み。亮太が興奮気味に声を上げていた。三好もそれに同意し、あの監督はハズレが無いとか、夏アニメはこれが期待できるとか、二人のアニメ談話が始まった。和樹は、購買で買ってきた菓子パンを頬張りつつ耳を傾ける。自分は正直、あまりアニメを観ない為、二人の会話にはついていけず、時折、相槌を打つ程度で話を聞くばかりだった。
チラッと、教室の真ん中に陣取っている女子グループに目を向ける。
教室内に出来たいくつかのグループの中でも、特に声が大きく、派手な集団の中に天宮恵里はいた。
月曜の放課後、天宮と『友達』になった和樹だったが、それから特に何の変化もなく、もうすでに金曜の昼休みを迎えていた。
「友達になろう」なんて言ってくるものだから、何かしらアクションがあるものだと思い、一応、構えてはいたのだが、結局、いつもと変わらない日々を送ってた。なんだか少し肩透かしをくらった気分だ。
唯一の変わったことと言えば、朝の予鈴ギリギリに登校してきた天宮が、席に着く前に一言「一ノ瀬、おはよう」と挨拶をしてくるようになったくらいだ。
自分もそれにおはようと挨拶を返すも、それ以外に会話は一切ない。まあ、今まではそんな挨拶もしたことがなかったわけだから、これはこれで大きな一歩と言えなくもない、のかな?
天宮の考えていることは、よくわからない。
――友達とはいったいなんだろう、なんて哲学的な疑問に差し迫りそうになった頃、亮太と三好が元の自分たちの席に戻っていく。教室内でまばらにグループを作り談笑していた人たちも次の授業の準備を始めていた。
和樹も菓子パンをお茶で流し込んで片付け、授業の準備を始めた。